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もらいもの(仮)2

仕事の契約を打ち切られたのはその翌日のことだった。このご時世だ、業務用おしぼりの需要など減っているに決まっていて、会社の業績不振は末端の派遣社員の目にも明らかだった。

理不尽だとは思う。一切の猶予も与えずこれでは死ねというのと同じようなものだ。だが今更何を言ってもしょうがない。第一初めから何も言えた立場ではない。でもそうすると何か。私は死ねと言われたら諾々とそれに従うほかない人間だということになるのか。まあそんなものかもしれない。私は全財産である六万という金額が印字された通帳を見ながら笑った。高校を出てから大学にも行かず、遊びもせず、親の残した借金をひたすら返し続けてこのざまだ。自分のどこに非があったのかは知らない。生まれが悪かったのか。時代のせいか。それとも、そういうものを全部ひっくるめて自己責任というのか。

「積んだな」

久しぶりに声を出したので痰が絡んだ。咳込んだはずみでぼさぼさに伸びきった髪が揺れ、むせ返るような華やかな香りが鼻腔に届いた。その間抜けさと侘しさにカッとなり、私は思わず通帳を投げた。

その時、誰かが薄いドアを叩く音が聞こえた。元より尋ねてくるような知り合いはいない。どうせ怪しげな勧誘か何かだろう。普段ならこんなものをいちいち相手にしたりはしない。だがこんな時期こんなところに来てどうすると、この時ばかりは一言言ってやりたかった。私はおもむろに立ち上がると、勢い良くドアを開けた。

「こんちは」

そこに立っていたのはあの人だった。その人はあまり親しくなかった昔の同級生のような距離感で、私の目を見たまま軽く頭を下げた。そしてコンビニの袋を見せて言った。

「どうすか。買ってきたんで」

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