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手のひらの常在菌は食べたほうが良い?味噌を素手でかき混ぜる問題について考察してみました
手の常在菌を培養して食べる
メリットはあるのか?
味噌を作る際に
「手の常在菌を入れるために
素手で作りましょう」
「手の常在菌を減らさないように
石鹼で手を洗うのは避けましょう」
と案内しているのを見かけます。
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わたしは味噌を作る際に
調理用の手袋をはめて作ります。
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☑手の常在菌を
味噌という「湿度・栄養の整った培地」で
培養して食べるメリットはあるのか
調べてみました。
そもそも「常在菌」って、なに?
常在菌とは
わたしたちの皮膚や体内に
常に存在している微生物のことです。
皮膚、口腔、腸管、鼻腔などに生息しています。
住んでいる場所ごとに
☑役割がちがい
☑種類も異なります。
たとえば、
腸内には主にビフィズス菌、乳酸菌、大腸菌
鼻腔内には主にブドウ球菌、コリネバクテリウムなど
手のひらにはどんな常在菌がいるの?
常在菌が
体の場所によって異なるのは分かりました。
では、手のひらには
どんな常在菌がいるのでしょうか。
手のひらにいる常在菌は
主に以下の3つです。
表皮ブドウ球菌
アクネ桿菌
黄色ブドウ球菌
それぞれの役割を見てみましょう。
表皮ブドウ球菌
表皮ブドウ球菌は汗や皮脂を餌に
グリセリンや脂肪酸を作り出します。
表皮ブドウ球菌が出すグリセリンは、
皮膚のバリア機能を保ってくれます。
アクネ桿菌
☑毛穴や皮脂腺に存在し
☑皮脂を餌にプロピオン酸や脂肪酸を作り出すことで
☑皮膚表面を弱酸性に保ち
☑皮膚に付着する病原性の強い細菌の増殖を抑える役割を担っています。
増えすぎなければニキビの原因菌になりません。
黄色ブドウ球菌
☑病原性が高く
☑皮膚がアルカリ性に傾くと
☑増殖して皮膚炎などを引き起こします。
皮膚感染症: 膿疱、潰瘍、蜂巣炎など
鼻腔感染症: 鼻血管の炎症や鼻咽頭炎など
呼吸器感染症: 咽頭炎、肺炎、気道感染など
消化器感染症: 食中毒、腸炎など
深在性感染症: 骨髄炎、関節炎、心内膜炎など
体はアルカリ性に傾きます
今日は味噌についてのお話なので
消化器感染症: 食中毒
について見ていきましょう。
手のひらにいる黄色ブドウ球菌と食中毒
黄色ブドウ球菌そのものが
食中毒の原因になるのではなく
黄色ブドウ球菌が産生する毒素
「エンテロトキシン」が
食中毒の原因になります。
黄色ブドウ球菌が食品中で増殖するときに、
「エンテロトキシン」を産生します。
つまり
黄色ブドウ球菌が付着した食べ物で
毒素(エンテロトキシン)が生成されて
食中毒になる、ということです。
☑素手での調理は「黄色ブドウ球菌食中毒」の原因となりやすく
☑長期保存も「黄色ブドウ球菌食中毒」の原因となりやすいです。
また、
エンテロトキシンは
☑熱に強く
☑高塩分にも強い菌です。
ちょっと怖くなってきましたね。
では、
素手で作った味噌は
黄色ブドウ球菌が満載なんでしょうか?
じつは面白いデータがあります。
味噌と食中毒
最新の統計によると
日本の年間食中毒発生件数は約1,000件程度です。
令和5年(2023年)には
1,021件の食中毒が報告され、
そのうち11,803人が患者となりました。
厚生労働省の調査によると、
戦後起こった食中毒事件のうち
味噌が原因とされたものは1件もありません。
面白いことに
味噌の中に病原細菌を入れて経過を見る実験がありました。
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大腸菌では1週間以内、
ブドウ球菌でも約2週間で味噌の中の細菌はほぼ壊滅しています。
無塩味噌でも細菌が壊滅しました。
タケヤみそさんのHPによると
以下3点が考えられるとのことです。
①味噌のpHは、
各種細菌の生育に最適なpH域よりも低く
味噌中では各種の細菌は生育できない
②酵母が作り出すアルコール(1~2%)によって
細菌のアルコール耐性が弱まる
③味噌は水分活性度が低いため
細菌が生育するのに必要な水分が供給されない
水分活性度=自由に食品の外に移動できる水分の値。
細菌など微生物はその水分を利用して繁殖する。
長くても15日で病原細菌が壊滅するため
みそ自体は食中毒の原因とならないのです。
<2025.1.31追記>
大腸菌・ブドウ球菌以外に
腸炎ビブリオ菌
O157も
味噌の中では生息できず、
死滅した実験データがあります。
理学博士・医学博士 渡邊敦光著
「味噌力」より
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まとめ
味噌をつくるとき
素手でつくっても
手袋をはめても
安全面ではどちらでも良いことが分かりました。
手のひらにには
食中毒の原因となる
黄色ブドウ球菌がいますが
味噌の中では死滅します。
手のひらにいる
表皮ブドウ球菌を食べると
身体に良いかを調べましたが
推奨されていませんでした。
(安全ではないそうです)
手のひらに乳酸菌がいる、と記載されているものを
見ることがありますが
手のひらには乳酸菌はいません。
乳酸菌は、腸内にいる菌です。
衛生環境がよくなかった昔、
たとえば汲み取り式の便所などが一般だったころに、
便を触ってしまえば腸内細菌が付着したことはあったと思います。
しかし普段の生活の中で手に乳酸菌が付いているわけは、ありません。
味噌は、
☑放射能から体をまもり
☑がんの発生をおさえる
など
素晴らしい食品です。
味噌自体が細菌に汚染されない
強さがあります。
毎日の献立に味噌を取り入れて
健康に役立ててみてはいかがでしょうか。
今日は
味噌を素手で作った方が良いか?
についてのお話でした。
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