リセル

ヴァンフォーレ甲府と手芸と音楽をこよなく愛する物書き。

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マガジン

  • 名も知らぬサポーター名鑑

    サッカーを応援する中で出会った、名前も知らないけど優しさにあふれたサポーター。 そんな方々との思い出をまとめました。

最近の記事

父が移籍した推しに声を張り上げた日

この記事は「父の推しが日の丸を背負う日まで」の続編です。 須貝英大選手がヴァンフォーレ甲府から鹿島アントラーズへ移籍してからの一年間、父は複雑な感情を抱えていた。 須貝選手は昨季夏に鹿島へ移籍したものの、日の丸を背負うどころか鹿島でスタメン出場する機会もあまりない。 私が時々父に須貝選手の情報を伝えると、決まって父は「どっちでもいいわ」と言う。 しかしそこで会話が終わるわけではなく、いつも父はボソッと「甲府にいた方が良かったのにな」と呟く。 もちろん須貝選手のこれからも人

    • 推し活で醜い気持ちを持つことの意義

      「推しの人生の中に私はいらない」 数年前、Xにそんな投稿をした記憶がある。 何人かのフォロワーさんから共感のリプライが送られてきて、いいねも一定数もらえた。 しかしそれは虚栄心から生まれた大嘘だった。 推しの人生の中に一瞬でも私があってほしい。 恋人とか友人など推しの人間関係に混ざろうとは思わないが、推しにとっての何者か、いや何物かになりたい。 先日、『人類にとって「推し」とは何なのか、イケメン俳優オタクの僕が本気出して考えてみた』(横川良明著)という本を読んだ。 そこ

      • 字書きが作った同人アクスタ

        アクスタ制作は絵描きの特権と思われがちだが、アイデア次第で字書きでもアクスタは作れる。美術の成績2でも作れた! 完全自己満足の世界にようこそ。 タイトルロゴアクスタ自分の作品のタイトルロゴを自分で作る。 これだけでわくわくすっぞ。 フリーフォントと、無料の画像編集アプリ「メディバンペイント」PC版でロゴと白版を作っただけのアクスタ。 「有名な作品のタイトルロゴアクスタならともかく、同人作品のタイトルロゴアクスタって何なの……」と思われるかもしれないが、自己満足の世界なの

        • 甲府の選手じゃないならどうでもいい

          甲府の青赤以外の色に染まった元甲府の選手を見たくない。 きちんと移籍先の試合を見られるようになるのは、どの選手であってもシーズン中盤以降になってしまう。 Instagramのフォローも、移籍リリースが出た直後に外してしまう。 契約満了や期限付き移籍ならともかく、自らの意志で甲府を去った選手が移籍先のクラブでいきいきしている姿を目に入れたくないからだ。 「甲府の選手じゃないならどうでもいい」 そんな言葉が口をついて出たこともある。 私自身、身勝手なサポーターであることは重々

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        • 名も知らぬサポーター名鑑
          2本

        記事

          赤の軍団とさくらんぼ

          いつも停めている小瀬の第3駐車場に車を停められない。 第4駐車場も満車で、臨時開放された第5駐車場にようやく停めることができた。 第5駐車場は小瀬のスタジアムから一番遠いが、今回ばかりは仕方ない。 「いつ以来だろう」 J2リーグもそろそろ前半戦が終わろうとしており、J2の雰囲気にもいくらか慣れてきた。 そのぶん駐車場がたびたび満車になっていたJ1時代は遠い昔のことのようだった。 ただし今日はJ1クラブとの試合だ。 駐車場にはそこかしこに真っ赤なユニフォームが見える。 燃

          赤の軍団とさくらんぼ

          旅の途中の常勝軍団

          ユアテックスタジアム仙台に向かうオフィシャルバスツアーは、栃木県の那須高原サービスエリアに寄った。 父のトイレを待っている間、私は手持ち無沙汰になってスマートフォンを手に取り、Jリーグ公式サイトの試合速報ページを開く。 J1は全試合が今日の同時刻にキックオフ。 昨シーズンからJ1は2ステージ制が採用され、前半戦と後半戦に分かれて王者が決まり、全試合終了後にチャンピオンシップが行われて年間王者が決まるらしい。 優勝争いをしている強豪クラブにとってはタイトル獲得の夢が広がるレギ

          旅の途中の常勝軍団

          今年私が推した人は推しではなかった

          今年一年、私はいったい何をしてきたんだろう。 何を見てきたんだろう。 誰を推してきたんだろう。 今年の推し活まとめなんて書けるわけがない。 私が今年推した人は推しではなかったのだから。 私が応援しているサッカーJ2クラブは去年、リーグ戦ではかなり苦戦し、J2リーグ下位に沈んだ。 しかし今年はJ1昇格という目標こそ果たせなかったものの、最終節まで昇格プレーオフ争いに絡んだ。 去年苦しんだ選手たちも今年は笑顔にあふれた。 私もサポーターとして、数多くの勝利を味わえたこと、選手た

          今年私が推した人は推しではなかった

          加害者の視点からいじめを考えたい

          まずはじめに。 私はいじめ被害者だ。 高校の入学式を終え、登校日初日からいじめに遭った。 お弁当の時間には私以外の女子クラスメイト全員で輪を作られ、私は一人でお弁当を食べた。 男子クラスメイトからは「〇〇(私)は死ね!」と大声で間接的に悪口を言われ続けた。 学園祭では何の役割も与えられず、クラスのステージショーの内容を知ったのは前日リハーサルの時。 そのうちに保健室登校になり、転校先の高校で完全に不登校になって2度の留年と転校を経験。 大学も休学し、25歳でようやく大学を卒業

          加害者の視点からいじめを考えたい

          父の推しが日の丸を背負う日まで

          「ユニフォームぶん投げてぇわ」 父はそう吐き捨てた。 ヴァンフォーレ甲府の経営危機問題の前から甲府を応援している父は、サッカーに関して熱くなることはあまりない。 すべてのJ1昇格・J2降格を経験しているからか、シーズン中に連勝しても連敗しても、高揚することもなければ落ち込むこともない。 2016年まで父はユニフォームに背番号を入れなかったし、2017年以降に選手の背番号を入れるようになっても「なんとなく」という理由だった。 しかし2021年の新体制発表会見で、大卒ルーキー

          父の推しが日の丸を背負う日まで

          推しを信じる力は、きっと

          「小林岩魚に関してですが、おそらく大怪我を負ったと思います」 ホームFC琉球戦後、吉田達磨監督の記者会見の文面を読んで、私は自分の部屋で泣き崩れた。 3年かけてようやく掴んだスタメンの座。 リーグ戦出場ゼロのシーズンも、今季絶望の大怪我も、全部全部乗り越えて掴んだ定位置。 それが相手選手との一瞬の交錯で、何もかも壊れてしまったように感じた。 もちろん相手選手を責める気は一切ない。 その場面ではイエローカードが岩魚選手に出ていたため、落ち度があるとすれば岩魚選手の方なのだろ

          推しを信じる力は、きっと

          メタバースは無限大のフリースペース。リニューアルした「GAIA TOWN」に遊びに行ってみた

          「多くの人と集まってわいわい話したい」 たったこれだけの願いも叶わない、新型コロナウイルスが蔓延した世の中。 先がまったく見通せず、以前のような生活には戻れないのではないかという不安もある。 私はサッカーJ2ヴァンフォーレ甲府を応援しているが、大人数のサポーター仲間と会食する機会はなくなり、年末の飲み会も行われなくなった。 そこで私はメタバースの一つである「GAIA TOWN」で「甲府サポオンライン集会」を毎試合後に開催している。 メタバースとは、一言で言えば「インターネ

          メタバースは無限大のフリースペース。リニューアルした「GAIA TOWN」に遊びに行ってみた

          31歳、はじめての自力アウェイ旅。大宮を『すたすたぐるぐる』たどる旅

          31歳の私が、初めて自力でアウェイ遠征に行った。 今までアウェイ遠征はオフィシャルバスツアーで行っていた。 理由は、電車の乗り換えなど面倒がないこと。確実に現地にたどり着けること。旅費が安いこと。試合後は何も考えず一直線で帰れること。 観光はまったくできないが、上記のメリットを考えると「バスツアーでいいや」と思っていた。 しかしこのコロナ禍でオフィシャルバスツアーはすべて中止。 アウェイの地にたどり着くには、自分たちの力で行くしかなくなった。 それでも昨年のアウェイジュビ

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          後ろ向きな私がサッカーから学んだ3つの前向き術

          「リセルさんはいっつも前向きだな」  私と同じく設営ボランティアに参加している男性からこう言われ、私は驚き、戸惑った。  私は何か嫌なことがあると、すぐ「何で自分はこんなに駄目な人間なんだろう」「人生に良いことなんて一つもない」などと考えてしまう、極めて後ろ向きで厭世的な人間だ。  甲府サポーターになってからも、しばらくは後ろ向きな考え方でサッカーを見ていた。 「今日も負けた。もうこのままずっと負けっぱなしなのでは……?」 「どんなに応援してもゲン担ぎをしても一向に勝て

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          球技専用スタジアムが建つ気配がない今、陸上競技場の魅力を考えてみた

           もう山梨県に球技専用スタジアムは建たないかもしれない。  2014年4月にヴァンフォーレ甲府をはじめとした県4団体が総合球技場(球技専用スタジアム)の建設を県に陳情し、もうすぐ8年が経つ。  署名活動では9万5627筆の署名が集まったものの、いまだ総合球技場は建つ気配がない。  その8年の間、色々なことがあった。  球技専用スタジアムの必要性を訴え続けていた城福浩監督(当時)は、甲府サポーターに惜しまれつつ退任し、その後FC東京やサンフレッチェ広島の監督を歴任。  甲府

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          伊東純也の甲府時代~光る原石と甲府サポーターの罪滅ぼし~

           2016年ホーム柏レイソル戦。柏の選手紹介で伊東純也の名前が呼ばれた瞬間、ヴァンフォーレ甲府のゴール裏からは大ブーイングが響き渡った。  当時サポーター歴3年目だった私は、甲府から移籍した伊東純也選手にブーイングをする意味がよくわからなかった。メインスタンドで観戦していて「何で?」と思った。  そしてサポーター歴9年目を迎えた今でも、伊東選手へのブーイングに関しては、その意味がよくわかっていない。  大卒ルーキーとして甲府に加入し、抜群のスピードと決定力を武器に「甲府のス

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          スタジアムの隣人を愛しなさい~隣の座席から始まる物語~

           観客席はTwitterの世界だ。  近くに座った人の名前や職業、バックグラウンドはわからない。  匿名性が高いゆえに非常識な行動もできるし、罵詈雑言も吐ける。  善人を装ったとしても、時間の経過や咄嗟の行動で、その人の本来の姿がにじみ出てくる。  そのようなリアルTwitter世界で、私たちはサッカーを見ている。  正直な話、近くの人の攻撃的なリアルツイートに辟易することもある。  しかし毎試合憂鬱な気持ちになってはいない。試合結果に関係なく、心が温かくなることもあるのだ

          スタジアムの隣人を愛しなさい~隣の座席から始まる物語~