後ろ向きな私がサッカーから学んだ3つの前向き術
「リセルさんはいっつも前向きだな」
私と同じく設営ボランティアに参加している男性からこう言われ、私は驚き、戸惑った。
私は何か嫌なことがあると、すぐ「何で自分はこんなに駄目な人間なんだろう」「人生に良いことなんて一つもない」などと考えてしまう、極めて後ろ向きで厭世的な人間だ。
甲府サポーターになってからも、しばらくは後ろ向きな考え方でサッカーを見ていた。
「今日も負けた。もうこのままずっと負けっぱなしなのでは……?」
「どんなに応援してもゲン担ぎをしても一向に勝てない。自分はなんて無力なんだ」
私がサポーターになった当時、甲府はJ1にいたため、なかなか勝てなかった。
その後、甲府はJ2に降格。カテゴリーを下げても甲府は決して常勝軍団ではなく、モヤモヤする試合が続くことも珍しくはない。
現時点ではJ2の下位をさまよっている。
甲府をどれほど応援しても勝つ保証はない。
もちろん精いっぱい応援はするのだが、それでも勝てなかった試合は数え切れないほどある。
物事を後ろ向きに考えていては、特に今シーズンは本当に身が持たない。それならば自分の考え方を無理やりにでも前向きにする必要が出てくる。
決して強くはないチームを応援するにあたって、私の後ろ向きなメンタルは半ば強引に方向転換を余儀なくされたのだ。
そこで、私がサッカーから学んだ前向きな考え方を3つ紹介する。
この考え方はサッカーに限らず、実生活でも役に立っていることなので、後ろ向きな考えに悩む方はぜひ参考にしてほしい。
この苦しみは永遠に続くわけではない
甲府は現在、J2の下位に甘んじている。
どれほど試合数を重ねても勝つことができず、このまま永遠に勝てないのではないかと絶望的なことを考えてしまう時もある。
しかしリーグ戦でまったく勝てないクラブはない。
長いリーグ戦、どこかで勝つこともあるし、逆を言えば今勝ち続けているクラブが、いずれどこかの試合で負けることもあるのだ。
J1で圧倒的な強さを誇る川崎フロンターレであっても負けることはある。
言い換えれば、2016年以前の川崎フロンターレはタイトルを獲ったことがない。
いつもあと一歩のところでタイトルを逃し、川崎サポーターの話によると精神的に相当辛かったそうだ。
喜びも苦しみも永遠に続くわけではない、とその話を聞いた時に実感した。
そして「苦しみは一過性」だということを特に強く感じたのが、京都サンガF.C.のサポーターを見た時だ。
2019年のJ2リーグ最終戦。柏レイソル対京都サンガF.C.の試合は、13対1という信じられないスコアで柏が勝利した。
試合終了後、ゴール裏でうなだれたり泣いたりしている京都サポーターがDAZNに映し出されていた。
京都にとってはJ1参入プレーオフの出場権がかかっており、絶対に落とせない試合だっただけに、余計にショックは大きかったはずだ。
しかしこの2年後、京都はJ1昇格を決める。
12年ぶりのJ1復帰とあって、昇格が決まった瞬間の京都サポーターの喜びはひとしおだっただろう。
13失点という絶望的でショッキングな試合があっても、2年後には昇格の歓喜に酔いしれることができたのだ。
もちろん報われることが少ないクラブもあるだろう。
京都のように悔しさを見事晴らして目標を達成するクラブより、長年目標を果たせず、悶々とした気持ちを抱えているクラブの方が多いのかもしれない。
ただどのクラブにも歓喜の瞬間は必ず訪れる。
その歓喜が直接目標の達成につながらなくても、目の前の試合に勝つことで苦しみからはいくらか解放される。
日々の暮らしも同じで、今抱えている苦しみはいずれ好転するかもしれないし、時間が解決してくれることもある。
「あの時は苦しかったけど、あの苦しみがあったからこそ今があるよね」と笑える日が来るかもしれない。
「今が苦しいから、これからもずっと苦しむのだろう」などと深刻に考えず、一過性のものだと思えば、少しでも気持ちが楽になる。
今、低迷する甲府を憂う私はこの考え方に救われている。
ただ、ここまで読んだ方の中には、このような考えを抱いた方もいるかもしれない。
「たった1勝してもクラブの目標(昇格・残留)が達成されるわけでもなく、毎年同じことの繰り返しだ。目標を達成できない苦しみはやっぱり永遠に続くんじゃないか」
次の項目で、そのような考えを方向転換させてみよう。
今ここにある幸せを噛みしめる
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