球技専用スタジアムが建つ気配がない今、陸上競技場の魅力を考えてみた
もう山梨県に球技専用スタジアムは建たないかもしれない。
2014年4月にヴァンフォーレ甲府をはじめとした県4団体が総合球技場(球技専用スタジアム)の建設を県に陳情し、もうすぐ8年が経つ。
署名活動では9万5627筆の署名が集まったものの、いまだ総合球技場は建つ気配がない。
その8年の間、色々なことがあった。
球技専用スタジアムの必要性を訴え続けていた城福浩監督(当時)は、甲府サポーターに惜しまれつつ退任し、その後FC東京やサンフレッチェ広島の監督を歴任。
甲府での期限付き移籍期間を終えてガンバ大阪に復帰し、ガンバ戦で行われた署名活動にて自主的に署名してくれた河田晃兵選手は、翌年甲府に完全移籍し、今や甲府在籍通算9年目のベテラン選手である。
甲府のレジェンドである石原克哉さんをはじめ、当時第一線で活躍していた多くの選手が引退。
甲府はJ2に降格し、今年5年目のシーズンを迎えた。
しかし総合球技場の建設計画は一向に進まない。
一時期、ヴァンフォーレ甲府では『夢みる総合球技場』と題し、総合球技場の建設計画を前進させるための活動を行っていた。
ただそれも2017年の話である。
最終更新日は2019年4月11日「総合球技場 県民説明会に参加しましょう」。
その後、新型コロナウイルスの感染拡大したことより、山梨県の財政は厳しい状況に置かれた。それはわかる。
しかし同じ状況下であろう他県の球技専用スタジアム建設計画は、着々と進んでいる。
甲府サポーターとしては、在籍20年目の大ベテラン、山本英臣選手を総合球技場のピッチに立たせたいという夢がある。
ただそれが夢で終わってしまいそうな気配すらあるのだ。
山梨県に言いたいことは山ほどある。
とはいえ一県民が何を言っても、建設計画が動くわけではない。
文句ばかり言っていても疲れるだけだ。
そこで陸上競技場でサッカーの試合を開催した時の魅力を考えてみることにした。
球技専用スタジアムにはない、陸上競技場ならではの魅力を考えてみることによって、遅々として進まない建設計画に対するイライラを緩和できるはずだ。
球技専用スタジアムの建設計画が進まず、自治体に対しストレスを溜め込んでいる全国のサポーターの皆さん。
一緒にストレス緩和に取り組んでみよう。
たくさんのピッチ看板が誇らしい
陸上トラックのない球技専用スタジアムがもしも完成したとして、甲府サポーターとして懸念しているのは、多数のピッチ看板の設置場所だ。
山梨県の総合球技場が完成した暁には、当然ピッチ看板の置き場所も考えるのだろう。
しかしクラブのために出資してくれた多数のスポンサーのピッチ看板が、陸上トラックの上に何列にも渡って並ぶ様は壮観で誇らしく、美しく見える。
多数のピッチ看板が並ぶ様子が美しいのは、何も甲府だけに限らない。
アウェイゲームでゴール裏に行くと、ピッチと観客席の間の陸上トラックにたくさんのピッチ看板が並んでいる。
名前も知らなかった地元企業のロゴを見ると、私は「このクラブもたくさんの地元企業に愛されているんだなあ」と思い、遠い地にある対戦クラブにも親近感を感じる。
ちなみに甲府はピッチ看板をはじめとしたスポンサー看板の多さで、テレビ朝日のバラエティ番組『マツコ&有吉 かりそめ天国』に取り上げられたことがある。
番組内ではヴァンフォーレ甲府の海野一幸会長が、かりそめ天国のピッチ看板を掲出することを番組側に提案。
マツコ・デラックスさんの「じゃあ一試合いきますか」の一声で、かりそめ天国のピッチ看板掲出が実現した。
そして最終的にはシーズン終了まで掲出期間が延長された。
これは甲府のスタジアムが陸上競技場でなければ実現しなかったことだ。
甲府の場合、ピッチ看板の単価が他のクラブよりも安く、より多くの看板を置けるようにしている。
J2に降格してピッチ看板はだいぶ数が減ったが、それでもたくさんのピッチ看板に見守られているスタジアムは、ホーム小瀬の名物となっている。
サッカー以外のものを楽しめるゆとりがある
球技専用スタジアムの魅力といえば、何と言っても臨場感だろう。
陸上トラックがない分、ピッチと観客席の距離が近く、戦っている選手の息遣いまでもがリアルに感じられる。
2017年のアウェイ柏レイソル戦。私はその試合で初めて日立台に行き、ピッチとゴール裏のあまりの近さに驚愕した。
選手がシュートを外せばボールがゴール裏に威力を持って飛んでくる。
大声を出せば、ピッチ上の選手に直接声が届く。
「サポーターは12番目の選手」という言葉を、あの時ほど感じたことはない。
そして試合終了間際、甲府のドゥドゥ選手の決勝ゴールが甲府ゴール裏の目の前で決まり、選手と甲府サポーターは一緒に歓喜を分かち合った。
この臨場感は球技専用スタジアムならではのものだ。
日立台の他に私が行った球技専用スタジアムは、浦和レッズの埼玉スタジアム2002、ガンバ大阪のパナソニックスタジアム吹田、ジュビロ磐田のヤマハスタジアムなどが挙げられる。
球技専用スタジアムではピッチと観客席が近いゆえに、戦場のようなビリビリとした緊張感が押し寄せてくる。両チームの選手、サポーター同士の闘争心がバチバチと火花を散らせ、その火の粉が私に降りかかってくるようだ。
この感覚はおそらく私が陸上競技場の距離感に慣れているために感じるものだ。
球技専用スタジアムでの試合観戦は、肌がヒリヒリするがごとく熱い。
では陸上競技場はどうだろうか。
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