空間レシピ

デジタル社会を空間や場所から考える論考メディアです。 空間や場所はいわば述語。空間から考えるとは、主語である人やモノを述語側から捉え直すこと。 素材や下ごしらえ、調理手順などの空間レシピや場所レポをお示しできればと思います。 情報社会研究を行う丸田が運営しています。

空間レシピ

デジタル社会を空間や場所から考える論考メディアです。 空間や場所はいわば述語。空間から考えるとは、主語である人やモノを述語側から捉え直すこと。 素材や下ごしらえ、調理手順などの空間レシピや場所レポをお示しできればと思います。 情報社会研究を行う丸田が運営しています。

マガジン

  • デジタルツインとメタバース

    我々は、現実空間に生を受けながらも、デジタル空間で多くの活動をしています。 デジタルツインは、現実空間の出来事をデジタル空間に再現する概念として登場しましたが、現在では我々が活動する二つの空間、という意味で使われることが多くなったように思えます。 その中で、メタバースが拓きつつある世界は、デジタル空間側の変化であり、デジタル空間の現実空間(身体)化といえるものです。その企みはSecondLifeで頓挫し、今回も成功しないかもしれませんが、いつか現実のものとなるはずです。 ここでは、デジタルツインの最新動向や、メタバースの可能性を探っていきたいと思います。

  • 位置情報/IoT技術

    位置情報サービスやIoT技術を紹介したり、関連する規制や制度の問題などの論考を紹介していきます。

  • 現代の空間論

    デジタル空間の登場で、空間論は見直しが必要になりました。現実空間と同期するデジタル空間は「生きられた空間」として我々の実存を支え、社会活動の主舞台になっています。20世紀の空間論とともに、デジタル空間を取り込んだ最新の空間論を紹介していきます。

  • 空間論のいろいろ

    ギリシャ以来、空間論は世界の秩序を表してきました。プラトンの「コーラ」や、ライプニッツの「モナド」の独創性には驚かされますが、空間論はカントで大きく展開し、それ以降、空間論は世界ではなく人間の内なる世界を語るようになります。 そして現在、空間論は2回目の展開を迎えていると考えられます。

  • オフィスを考える NoOffice, NoLife

    オフィスに行かなくても仕事が成立するのに、オフィスは本当に必要か? コロナ禍を経て働き方が変容するなか、オフィスに対する考え方や、最新オフィスの動向を紹介しながら、オフィスの新たな価値を考えます。

最近の記事

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空間レシピを始めるにあたって

編集長の丸田です。 このたび、空間レシピを立ち上げました。どうぞよろしくお願いします。 空間レシピは、空間や場所の観点からデジタル社会を考えるメディアです。 空間や場所は、いわば述語。空間や場所から考えるということは、主語である人や集団(そしてモノ)を、述語側から捉え直すことです。主語を直接理解するより、幅広い理解を得ることができます。 われわれは今、アフターデジタルといわれる世界、物理空間とデジタル空間が並存するデジタルツインを生きています。この未経験の世界へ、そこを

    • タイパから始まるデジタル社会の時間マネジメント

      「タイパ」とは、タイムパフォーマンス(時間対効果)の略語で、かけた時間に対する満足度や充実度のことです。そもそも自分のためにならない意味のない行動を避け、自ら時間をかける場面では、結末やネタを事前確認するネタバレを好み、動画は倍速視聴、スマホは縦スクロールを好むなど、Z世代のみならず、全世代似共通する時間省力化の方法です。 この「タイパ」は社会的な悪習と批判する向きもありますが、これは個人が行う自発的な「時間マネジメント」の始まりと捉えていくべきです。 その背景には、ホワイ

      • 【現代空間論9】ウェブ空間は同位空間である

        これまで写真機、録音機、コピー機をはじめ様々な複製技術が出現してきました。ウェブ空間(インターネット)も、デジタル技術を使った複製技術に違いありませんが、これまでの延長線上にある「複製技術」というより、複製容易化(コピーフリー)が大前提となった「複製環境」というべきものです。 オリジナルはコピーの一つ ベンヤミン(Walter Benjamin)が『複製技術の時代における芸術作品』で指摘したように、複製技術は「アウラ(aura)」を喪失させます。 アウラ(aura)は、”

        • 【現代空間論/空間論8】空間は実在せず虚数でしかない

          空間は共時的な拡がりを持つ。 つまり時計を止めれば、今そこにモノや人、道路や家、空や月、太陽や星が静止状態で広がっている、というのが我々が抱く空間の姿です。 しかし、そのような空間は実存せず、共通の今も存在しない。これこそ相対論が導き出すマクロ世界の実像で、我々が持つ空間や時間の通念を、物理学が覆しつつあります。 空間は存在しない! 相対論が示した時空は、ミンコフスキー空間(あるいはリーマン空間)で表現されます。 ミンコフスキー空間とは、時間と空間を対等の次元で扱った座

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        空間レシピを始めるにあたって

        マガジン

        • デジタルツインとメタバース
          13本
        • 位置情報/IoT技術
          7本
        • 現代の空間論
          9本
        • 空間論のいろいろ
          8本
        • オフィスを考える NoOffice, NoLife
          13本
        • ひとこと
          10本

        記事

          【空間論7】デモクリトスの原子論

          我々は空間を、均質で無限な拡がりをもつものと考ています。しかし、それは現代の一般的な空間観です。 古代ギリシアのアリステレスから約2千年の長きにわたり、反対に空間は間隙なく有限な物体で充たされているものと考えられていました。 ただし、アリストテレスより前、古代ギリシア初期にまで遡ると、現代の我々と同じように、空間を均質で無限と考える一派がいました。 それがデモクリトスらであり、レウキッポスが創始し、デモクリトスが完成させた古代原子論です。 「空虚」を巡る論争 古代ギリ

          【空間論7】デモクリトスの原子論

          映画『Winny』のメッセージ

          映画『Winny』は新聞のコラム欄で上映を知り、TOHOシネマ日比谷に行きました。休日だったこともあり、映画館はほぼ満席でした。 日本で起こった世界技術史的事件 風化したと思っていたWinny事件が今、映画として取り上げられたことに強い関心がありました。 この事件は、WinnyというP2P型のファイル通有ソフトが著作権侵害幇助に問われたもので、インターネットを巡る大事件でした。それも今では考えにくいのですが、開発者が日本人で、日本国内が舞台となっていたワールドワイドな事件

          映画『Winny』のメッセージ

          生物多様性がデジタル空間にも及ぶ ⁈

          記事 「サイバー空間に及ぶ生物多様性」 今日(23年2月24日)の日経新聞記事「サイバー空間に及ぶ生物多様性」は、衝撃的な内容でした。デジタルツイン社会について、別次元の議論が必要になってきたというのが正直な感想です。 記事の内容は、「遺伝資源」のデジタル化に伴い、途上国と先進国が対立しているというものでした。 医薬品や、食品、化粧品には、動植物や微生物が持つ成分を原料にしたものが多いのですが、この成分を作る遺伝子が「遺伝資源」で、その実態はデジタル配列情報です。 多く

          生物多様性がデジタル空間にも及ぶ ⁈

          アバターで人はどこまで自由になる?(2/2)

          アバターとは、デジタル空間で自分に行う「人決め」や「名づけ」で作られた自分の化身です。 しかし、デジタル空間が登場する前まで、自分が自分の名前をつけてはいけない「自己命名の禁止」という社会的忌避(タブー)がありました。命名には権力性や暴力性もみられましたが、デジタル空間にはそれがありません。 そのためデジタル空間では、本名に染みついた様々な束縛から解放されて自由に活動できるようになりました。このことが拓く可能性は計り知れないものがあります。 「プレーヤー」と「キャラクタ

          アバターで人はどこまで自由になる?(2/2)

          アバターで人はどこまで自由になる?(1/2)

          アバターによる「人決め」と「名づけ」 「アバター」は、仮想空間上で重要な役割を果たしています。メタバースの普及もアバターによるところが大きいといえます。 そこで、アバターの真価について考えてみたいと思います。 アバター(avatar)は、サンスクリット語 avatāra が語源で「化身」を意味します。言葉の通り、ユーザーは自身の化身であるアバターを使って仮想空間にアクセスし、自由に振る舞います。 アバターは、ユーザーに似せて作られる場合もあれば、名前、年齢、性別などの属

          アバターで人はどこまで自由になる?(1/2)

          VARシステム/三笘の1.8mmは正しい?(2/2)

          FIFAワールドカップ・VARシステムの測位技術とサッカーの行方 FIFAワールドカップ・カタール大会の対スペイン戦で三笘選手のライン判定「1.8mm」に一役かったVARシステム。 技術的にみると、最初に導入された2018年には、映像判定システム「ホークアイ」が使われ、今回これに「IMU(慣性計測ユニット)」が加わりました。このIMUには位置情報技術「UWB」が使われています。 4.UWBの測位精度 UWB(Ultra Wide Band)とは、超広帯域の無線通信規格の

          VARシステム/三笘の1.8mmは正しい?(2/2)

          VARシステム/三笘の1.8mmは正しい?(1/2)

          FIFAワールドカップ・VARシステムの測位技術とサッカーの行方 FIFAワールドカップ・カタール大会の対スペイン戦で三笘選手のライン判定「1.8mm」に一役かったVARシステム。そこにはどのような測位技術が使われ、どのように高い精度が実現したのかを明らかにします。 そして、この仕組みにより「サッカー」というゲームは「デジタルツイン」に変容しました。人とデジタル技術、あるいは現実空間のサッカーと仮想空間のサッカーが同時並行してゲームが高度化する、新たなステージに突入してい

          VARシステム/三笘の1.8mmは正しい?(1/2)

          タイパは次世代の生き方(SMSFという行動サイクル)3/3

          タイパの行動サイクル(S→M→S→F) 「タイパ」の習慣は「経験のバッケージ」のあり方も変えていきます。個々人が行動サイクルを回しはじめることで、それぞれに独自の「経験のパッケージ」が育っていきます。 それこそが時間マネジメントの「自己モデル」というべきものであり、その人にとって「生きる様式」といってもよいと思います。 つまり「タイパ」とは、自分なりの時間マネジメントの「モデル」を作ることです。 このモデルを基づいて行動サイクルを回し、現実に得られた満足感や充実度を確認

          タイパは次世代の生き方(SMSFという行動サイクル)3/3

          タイパは次世代の生き方(時間マネジメントの行動サイクル)2/3

          タイパという時間マネジメント 大竹伸朗展で体験した大竹作品は、スクラップなどの仕掛によって、失われた時間を回復する事後的な試みでした。 それに対して「タイパ」は事前に時間マネジメントを行い、大胆にバッサリ時間を切り捨てたり、組み立てたりする新しい時間の使い方といえます。 マネジメントは経営管理を意味しますが、計画-実行-審査 ( PDS )、あるいは計画ー実行ー評価ー改善(PDCA)といった管理サイクルを伴っています。 ただ、企業経営のように、個人が自らの活動に対して

          タイパは次世代の生き方(時間マネジメントの行動サイクル)2/3

          オフィスはデジタルツインになる(4/4)

          オフィスのデジタルツインの影響は、「開発設計」段階だけでなく、「日常業務」の高度化にも現れます。前回は①「設計デザイン」への貢献をみてきましたが、今回は、②日常業務に対する貢献、について考えてみたいと思います。 「可視化」による貢献 「オフィスはデジタルツインになる(1/4)」で触れたように、デジタルツインの「②日常業務に対する貢献」は、収集データをフィードバックする「リアルタイムフィードバックルート」で実現しています。 ただし、「リアルタイムフィードバックルート」とは

          オフィスはデジタルツインになる(4/4)

          オフィスはデジタルツインになる(3/4)

          それでは、デジタルツインで先行する製造業の経験をもとに、オフィスでのシミュレーションのあり方を考えてみたいと思います。 デジタルツインの効用の一つは、「モデル化」→「シミュレーション」→「フィードバック」→「センシング」というPDCAに代わる業務フレームワークによって「開発設計」を高度化させることでした。 もう一つは、「センシング」によって取得したデータが、原価管理をはじめ日常的な管理業務に役立つことです。 そこでオフィスにおいても同様に、①「設計デザイン」への貢献と、②

          オフィスはデジタルツインになる(3/4)

          オフィスはデジタルツインになる(2/4)

          PDCAに代わる業務フレームワーク デジタルツインの最大の効用は「シミュレーション」といわれます。 デジタルツイン導入で先行する製造工場からは、シミュレーションの成功事例がいくつか報告されるようになりました。 そこに共通しているのは、実工場を仮想空間で「モデル化」し、モデル上で配置や増設などを計画し「シミュレーション」した結果を現実工場に「フィードバック」するというものです。 特に強調されるのは、開発段階の業務プロセスが、従来より速く、安く、何度でも繰り返しが可能になるな

          オフィスはデジタルツインになる(2/4)