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オフィスはデジタルツインになる(3/4)
1回 拡張したオフィス空間
デジタルツイン・オフィスとは
デジタルツインが持つ三つのルート
2回 PDCAに代わる業務フレームワーク
センシングが生命線
日常的管理でこそ生きるセンシング
3回 変わるオフィスデザイン
オフィスの「センシング」
デザイナーの役割が変わる
4回 「可視化」による貢献
ワーカーの「時間マネジメント」を支援
それでは、デジタルツインで先行する製造業の経験をもとに、オフィスでのシミュレーションのあり方を考えてみたいと思います。
デジタルツインの効用の一つは、「モデル化」→「シミュレーション」→「フィードバック」→「センシング」というPDCAに代わる業務フレームワークによって「開発設計」を高度化させることでした。
もう一つは、「センシング」によって取得したデータが、原価管理をはじめ日常的な管理業務に役立つことです。
そこでオフィスにおいても同様に、①「設計デザイン」への貢献と、②日常業務に対する貢献、についてそれぞれ検討してみたいと思います。
変わるオフィスデザイン
過去の記事で何回か紹介した「ABW(Activity Based Working)」はワーカーが働く時間と場所、そして相手を選択する新しい働き方ですが、それと同時に、新しいオフィス空間のあり方を示しています。
オフィス空間を仕事種類に応じて約10種類のエリアに区分し、各エリアにそれぞれの仕事に最適な環境を用意します。二人の仕事といっても「対話」と「二人作業」ではまったく用意する空間の質や広さが異なります。
働く時間と場所の選択権はあくまでワーカーにあります。会社は最初、用意したエリアが誰にどのくらい使われるか、まったくわからない。
それが使われるうちに、使われるエリアと使われないエリアが出てくる。また、あるエリアは使う人や部署が決まってくる。さらに、意図した交流が起こるエリアと起こらないエリアが生まれる。
このように、利用実態という過去の実績が、未来のオフィスデザインを決めていきます。単純にいえば、使われないエリアを排除して使われるエリアを増やすということです。
ただし、考慮すべき利用実態の変数は、使われる・使われない、つまり空間稼働率だけではありません。利用満足度や仕事効率といった定性的な変数も重要で、これらは一度、定量的な指標に回帰させれば十分モデルに組み込めます。
その上で現実のオフィスを「モデル化」します。空間稼働率を最大化する、あるいは利用満足度を最大化するといったゴールを設定し、エリア割合や配置などをシミュレーションしていきます。
オフィスの「センシング」
こうしたデザインにおけるフレームワークを回す上で、重要なのが利用実態データを収集する「センシング」です。
オフィスにおける「センシング」は、シンプルに位置情報を常時取得することです。位置情報とは「誰が(ワーカーID)」「いつ」「どこ(エリア・座席)」の3情報で構成されますが、これを加工していくことで情報が高次化し、実に多様な用途に利用することができます。
一般的に「どこ」情報は、緯度経度やX距離・Y距離といった「位置」として扱いますが、ABWにおいて「どこ」は、仕事種類別のエリアという「場所」として扱います。
場所を測定することで、すでに取得した情報は仕事種類という意味を付帯していて高次化しています。
情報の高度化については、別の機会で「データ・エンジニアリング」で扱いたいと思います。
デザイナーの役割が変わる
これまでオフィスのデザインは、設計条件や全方位的な要望を取り込んだ設計者やデザイナーが設計し、それに基づいて施工されていました。その点で設計者やデザイナーには高度な知識とスキルが求められていました。
しかし今後、利用実態という過去の実績が、未来のオフィスデザインを決めるようになると、デザイナーは「シュミレーション」結果を「フィードバック」する過程で集中して仕事をすることになると想定されます。
また、新たな時代のデザイナーは統計知識を実装し、「モデル化」を担う可能性もあります。
いずれにせよ、デザイナーの役割も大きく変容していくことが想定されます。
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少し、記事が長くなったので、「②日常業務に対する貢献」は次の記事に送りたいと思います。
(丸田一如)