#185 「会社」の溶け方。
先日、「会社」が溶けてゆく時代、という投稿をしました。
今朝の日経新聞に投稿した内容とは別の「会社」の溶け方があったのでメモ。
1、どんな記事?
「電通、元社員230人とタッグ」という記事で、早期退職した約230人に業務を委託する仕組みを作った、という内容です。
仕組みは以下の通り。
☑️ 電通が新会社を設立
☑️ 退職者はその新会社と最長10年の業務委託契約を結び、業務を請け負う
☑️ 契約期間中は電通在職時の給与の約5割にあたる固定報酬のほか、受託した事業の収益に応じた成果報酬も得られる
☑️ 電通は退職者が独自に立ち上げた事業の協働も新会社を通じて行う
☑️ もちろん、退職者は独自の仕事もできる。
一言で言うと、電通を辞めても向こう10年間は給与の5割とある程度の仕事は保証します、という制度です。
記事の中には、この制度を使って退職したうち2人の話が出ていました。
☑️ 趣味のスポーツやワケーション関連など独立してやりたい仕事は10以上ある。電通が手が回らない領域で機動的に新規事業を立ち上げ連携して育てたい
☑️ 管理職年次に近づいていたが製作現場にとどまりたくて独立を決めた
電通以外の企業の話として、アメリカでは大手企業の98%が「元社員」(英語で卒業生を意味する「アルムナイ」と呼ばれる)向け制度を作っていること、その一例としてマッキンゼーではアルムナイ向けの専用サイトで3.4万人がつながっていること、三井物産の「元物産会」などが紹介されています。
2、「企業」は溶けようとしている!?
先日ご紹介したのは、現在の中間管理職の仕事を割り振る業務がAIに代替され、しかも、AIが仕事を割り振る先は、社内だけでなく、いわゆるギグワーカーと呼ばれる社外の個人事業主にも発注する世の中になるのでは、という論説記事でした。
今日の記事は、一歩進んで、現実の話です。
体重計で有名なタニタも2016年から今回の電通を似た仕組みを導入しています。
違いは、間に子会社が入るわけではないこと、向こう3年間はそれまでと同じ仕事、同じ給与(社会保障分を上乗せするので15%ほど上乗せ)が保証される、という点が異なりますが。
会社の財産は人だ、という話はありますが、逆に、人は会社にとって固定費用だ、とも言えます。
今の社員構成を見れば、5年後、10年後の人員構成はかなりの精度で予想がつきますし、今の年齢別の給与水準を掛ければ、5年後、10年後の総人件費もわかります。
40代、50代の社員が5年後、10年後会社に居続ければ、ポストや給与を用意しなければなりません。
一方で、多くの新技術や外部環境の急激な変化で仕事のやり方も変わっていくと、給与水準も高く、過去の慣例にどっぷり浸かった中高年層は、正直頭の痛い面もあるでしょう。
ところが、日本の雇用制度は一度正社員にしてしまうとなかなか辞めさせにくい制度です。
その一つの解として、このような制度ができたと言えるのではないでしょうか。
もちろん、公式にはそんな乱暴なことは言えませんから、記事には以下のように表現されています。
広告業界でもデジタル化が加速しスキルの陳腐化も進む。一方でベテランは経験と独自の人脈を持ち、手放すのは惜しい。新たなつながりを模索した結果、生まれたのが今回の仕組みだ。
3、まとめ
放っておけば、「ベテラン」という高コスト構造を抱え、貴重な若手のやる気と活躍の場を奪い、競争に負けていく…
危機感を持つ企業は多いのではないでしょうか?
その解の一つが、「会社」みずからが、積極的に、計画的に、溶けていく、ということでしょう。
でも、これまで、会社に務めるか、1人でやっていくか、の2つしかなかった選択肢に、会社からのある程度の仕事と給与を保証された独立、という「第三の選択肢」ができた、とも言えます。
独立の1番のハードル(個人の見解です)である、「受注」をある程度保証された形での独立、というのは、迷っている潜在的な独立組を決心させる、かなり強いインセンティブになるのではないでしょうか?
会社側も従業員側も、副業という中途半端な形では得られない、コラボレーションができるようにも感じます。
「第三の選択肢」を自分が務める会社が用意してくれたときに、待ってました!と手を上げるか、自問自答しております。
最後までお読みいただきありがとうございました。
「第三の選択肢」、皆さんは手を挙げますか?
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