こむら

青春を永遠に引ずる哀れな影法師

こむら

青春を永遠に引ずる哀れな影法師

最近の記事

さみしがり屋の旅

とある事情で私は新潟の実家から福島に引っ越すことになった。 決まったのはつい先月のことである。 一人暮らしをするのは専門学校以来のことだ。 隣の県とはいえ県外に住むのも初めてだし、電車で片道7〜8時間はゆうにかかる。 簡単には行き来できない距離だ。 引っ越すことそのものはポジティブな理由からだし、いつか家を出たいとは思っていた。 実家は好きだけれど、同時にそこに一生閉じ込められてしまうのを恐れてもいた。 福島行きは遅い自立のチャンスだった。 ただ私には気掛かりなことがあ

    • 消せない憎しみ

      ある人に「あなたが憎まれるのを恐れるのはあなた自身が誰かを憎んでいるからだ」というようなことを言われた。 私が過去の男性のことを記事に書くのは過去と向き合えていないからだと。 果たしてそうだろうか? 記事を読みもしないでそんなことを言われるのは正直心外だ。 私は自分の気持ちを整理して前に進むという決意表明のつもりで記事を書いている。 それが過去から逃げていることになるのだろうか? そして「誰かを憎んでいるから憎まれるのが怖い」というのは本当なのだろうか? だとしても

      • ある奴隷の話ーダメンズ放浪記その2ー

        「離れている相手より目の前の相手が大事」 その言葉だけ聞けばなるほどそうかもしれないと思う。 実際私は友人や恋人といるときはなるべくスマホを触らないようにしている。 相手がスマホをいじる人の場合はその限りではないが、一緒にいる相手との時間を私は大事にしたいからだ。 ただ問題はその言葉が発せられた場面である。 その頃私は遠距離恋愛中の元恋人にたびたび生活費や食料品を送っていた。 当時収入がなかった私は貯金を切り崩したりポイントサイトでコツコツ貯めたポイントや、親戚の手

        • 人の中を流れていく

          少し卑屈なことを書く。 仲がいいと思っていた人たちが立て続けに結婚していた。 また他の一人は遠い県に引っ越していた。 何も報告はなかった。 多分そういうことなのだ。 さすがの私でもわかる。 私は彼らにとって過去の存在なのだろう。 離れてまでも持続する関係ではなかったのだ。 私はそれをさみしいと思う。 同時にそれは当然のこととも思う。 彼らにとって一番大事なのは「今」の人間関係なのだ。 そしてそれは私にとっても同じことだ。 小学校、中学校、高校、専門学校と、それぞれ

          【BL小説】歯ブラシあります

           ホームの電光掲示板に表示された終電の終着駅を見て黒木は一瞬目を疑い、そして青くなった。表示されているのは黒木のアパートの最寄り駅である。隣りで白井が「あれ」と呟いた。  困惑顔で見上げる白井を、黒木はこれもまた困惑顔で見つめ返した。 「…すまん」  先刻居酒屋で時刻表を調べたのは黒木である。黒木は飲み会のときはいつも終電を利用しているのだが、迂闊にもその列車が白井の自宅の方面まで行かないことには気がつかなかった。  自宅が市外のためめったに飲み会に参加しない白井を誘う

          【BL小説】歯ブラシあります

          【BL小説】人の恋路を邪魔するやつは

           中山有馬(なかやまありま)はムシャクシャしていた。つい数時間前にバイトをクビになった。その数時間前には合コンで知り合ったちょっと可愛い女の子にこてんぱにフラれた。さらに数時間には姉に取っておいたプリンを食われた。  そして今、有馬は雨上がりの道をパンクした自転車を引きずって歩いている。  ――呪われている。  そもそもこのふざけた名前だ。競馬好きの父親が付けた名前を有馬は嫌いだった。まず誰も『ありま』なんて読んでくれないし、調べてみたら『有馬』はアリマナントカという人

          【BL小説】人の恋路を邪魔するやつは

          読めない本の話

          私には読めない本がある。 読めないというのは何も難しいからとか興味がないからとかそういうことではない。 なんとなく読むのが怖いのだ。 なにが怖いのか。 それはその小説によって私のちっぽけな自尊心が傷付くかもしれないからだ。 その作家には「忘れられない女性が」いるようで、どうやらその女性が作品に大きく関わってくるらしいのだ。 私はその作家を何年かTwitterで追っていて陰ながら応援したり共感したりしていた。 だがしかし、その「忘れられない女性」のことだけがどうしても引っ

          読めない本の話

          真夏のオリオン

          もう何年前になるだろう。あの子と最後の夏を過ごしたのは。暑い暑い夏だった。 犬を飼いたいと言い出したのは私だった。小学校3年生のときであろうか。家族みんなで里親募集のイベントに行き、そこで引き取ったのが彼女だった。 玄関に裂いてふわふわにした新聞紙を敷いた段ボール箱を置いてそれを仮の寝床にした。知らない場所にいきなり連れて来られた彼女は目が飛び出そうなくらい緊張してぷるぷるしていた。 柴犬にシェパードを少し混ぜたような脚の長さと耳の大きさと鼻先の長さは、今にして思えばオ

          真夏のオリオン

          いまさらながら自己紹介

          こんちは。 はじめまして、こむらです。 昨年から精神疾患の療養をしながら水彩イラストレーターとして細々と活動しています。 Twitter上では81歳ということになっている独身メンヘラこじらせ女子です。 よくツイキャスをしながら作業をしています。 コメントすると喋ります。 https://twitter.com/komurasa/status/1304296361060261888?s=19 好きな食べ物は炭水化物ですが最近食が細くなってあまり食べられません。 歳でし

          いまさらながら自己紹介

          独りで立ちたい

          ダメンズ放浪記その1には「ダメンズに関わってしまうのはヒーロー願望があるから」というようなことを書いたが、どうもそれだけではないような気がする。 私は人を好きになると周りが見えなくなるタイプなのだ。周りが心配するくらいに。 メンヘラの性質と言ってしまえばそれまでなのだが好きになると本当にその人のことで頭がいっぱいになってしまいいちいちその人の行動や発言を気に病んでしまう。 嫌われ不安が酷いのだ。そのせいかどうなのか私は平和な恋愛というものをしたことがない。 これでも一

          独りで立ちたい

          想いは伝えられるときに

          想いは伝えられるときに伝えたい。気持ちを伝えることが苦手な私が強くそう思った出来事があった。 それは数年前にジョン・フォックスが書いた「潮騒の少年」という小説というアメリカの小説を読んだときのことだ。 主人公のビリーは高校生で、選挙事務所で出会った大学生のアルに恋をする。ひとことで言うとアメリカのゲイの若者の青春小説だ。 私はこの小説に深く感銘を受けた。この人の本をもっと読んでみたい、感想を伝えたい。そう思った。 しかし後書きによると彼は1990年の8月にエイズで若く

          想いは伝えられるときに

          黒歴史とハウルの動く城

          誰でも一つや二つ黒歴史を持っているだろう。私にも人にももちろん数多の黒歴史がある。今回はその中でももっとも黒い黒歴史について書きたいと思う。 あれは中学生のころだった。私はある漫画のキャラクターに憧れて黒いハイネックを着て黒いマニキュアで爪を黒くしていた時期があった。 そのくせ太り気味でぼってりした顔をして天パのロングヘアを後ろに一つ結びしただけ(ちなみに小4にして同学年の女子に無邪気におばさん呼ばわりされたことがある)下はGパン一択というどこからどう見てもお洒落とは程遠

          黒歴史とハウルの動く城

          恋っていいもの?素敵なもの?

          私はTwitter上では彼氏ができたの別れたのという話を一切しないようにしている。 アカウントを作って約8年、その間に恋愛がらみの事柄がなにもなかったわけではない。むしろ泥沼が展開されていたりもしたわけである。 なぜ隠すのか、それにはいつくか理由がある。一つは私自身が好きな作家さんと彼氏さんのラブラブな漫画を読んで嫉妬でしんどくなってしまったこと。 もう一つは別れた後にラブラブなツイートを消すのがめんどくさいからだ。未来にとって都合の悪い情報はできるだけ残したくない。

          恋っていいもの?素敵なもの?

          結婚したい、したくない。

          私はTwitter上では永遠の81歳と称している。これは相互フォロワーさんが決めてくれた年齢である。 だがリアル世界では一応生年月日に基づいた実年齢というものが当然別にある。世間では結婚適齢期、もしくは行き遅れと言われる年齢かもしれない。 なぜこの歳まで私は独身でいるのか。それにはいくつかの深い、または取るに足らない事情がある。 まず一番は自分が結婚したいのかしたくないのかわからないということだ。結婚したいと思った相手が過去にいなかったわけではない。ただその相手は今にし

          結婚したい、したくない。

          ヒーローになりたかった─ダメンズ放浪記その1─

          私にはどうもヒーロー願望というものがあるらしい。 ドナー登録をした話でも書いたが「生きる理由」を私は強く欲していたのだ(あるいは今も欲しているのかもしれない) ヒーローになりたいなんておこがましいことかもしれないが、人を助けることで過去の自分を救いたいという思いがどこかにあった。 もうだいぶ前の話だが秋葉原の無差別殺傷事件の被告の「こんなクソみたいな人生いらない」という言葉が深く胸に突き刺さっていた。 「こんな人生いらない」と、私もそう思っていた時期があった。この人

          ヒーローになりたかった─ダメンズ放浪記その1─

          ドナー登録を決意した夜

          私は骨髄バンクにドナー登録している。 今現在は残念ながら健康体ではないので適合してもドナーになることはできないのだが、20代前半のある夜、私はドナー登録することを決意したのだ。 そのころの私は専門学校を出たてで仕事も思うように行かず、生きていても意味がないと自分を責めてばかりいた。 社会に出てすぐに挫折した私はとにかく生きていていい理由が欲しかった。 そんなある夜、私はラジオで骨髄バンクのについての話を聞いた。 骨髄バンクというのはざっくり言うと白血病の患者さんに

          ドナー登録を決意した夜