ドナー登録を決意した夜
私は骨髄バンクにドナー登録している。
今現在は残念ながら健康体ではないので適合してもドナーになることはできないのだが、20代前半のある夜、私はドナー登録することを決意したのだ。
そのころの私は専門学校を出たてで仕事も思うように行かず、生きていても意味がないと自分を責めてばかりいた。
社会に出てすぐに挫折した私はとにかく生きていていい理由が欲しかった。
そんなある夜、私はラジオで骨髄バンクのについての話を聞いた。
骨髄バンクというのはざっくり言うと白血病の患者さんにを助けるためのシステムである。白血球には型があり、それが適合すれば患者さんは治療のための骨髄移植を受けることができる。家族間で適合する場合もあれば、赤の他人がドナー候補になることもある。
私は「これだ」と思った。ただ生きているだけで、もしかしたら誰かの命を救うことができるかもしれない。「これこそが私が生きていていい最低ラインだ」そう思った。涙が出た。
骨髄移植にはドナーになる側にもリスクがある。正直それは怖い。だけどとにかく私は藁にもすがる思いで献血センターに向かった。暑い夏の日だった。登録はあっさり終わった。
家族には事後報告した。ドナーになる際は家族の同意も必要らしいが私の家族は前々から骨髄バンクに寄付などをしていたので反対はされないだろうと踏んでいた。案の定特に何も言われなかった。
ドナー登録してからもうだいぶ経つがまだお呼びがかかったことはない。その間にいろいろなことや人との出会いがあり生きていてもいいと自分をある程度は肯定できるようになったが、あの頃の私にはドナーカードはお守りであり誇りだった。
いつか健康体になったらまた誇れる日が来るだろう。今もピンク色のドナーカードは財布の中にそっと忍ばせてある。
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