ヒーローになりたかった─ダメンズ放浪記その1─
私にはどうもヒーロー願望というものがあるらしい。
ドナー登録をした話でも書いたが「生きる理由」を私は強く欲していたのだ(あるいは今も欲しているのかもしれない)
ヒーローになりたいなんておこがましいことかもしれないが、人を助けることで過去の自分を救いたいという思いがどこかにあった。
もうだいぶ前の話だが秋葉原の無差別殺傷事件の被告の「こんなクソみたいな人生いらない」という言葉が深く胸に突き刺さっていた。
「こんな人生いらない」と、私もそう思っていた時期があった。この人と私のいったい何が違うんだろう。私は彼を、得体の知れない化け物のようにはとても思えなかった。彼は私だとそのとき思ったのだ。ただ矛先が外に向くか内に向かうかの違いでしかない。そう思った。
だからこそ「こんな人生いらない」とネガティブなことを言う男性を放っておけなかった。自己満足のために私は弱い男性を利用したのだ。
結果私は相手の言いなりになる都合のいい女になっていった。もともと自己肯定感の低い私は相手に嫌われたくない一心でお金を渡したりセックスの相手をしたりしていた。
1人だけではない。立て続けに何人もだ。その中には彼氏になった人もいたし、片思いのままの相手もいた。いずれにしろ深く傷付いた。ヒーローどころではない。
そんなやつとなんで付き合うのかと怒られると思ったからこの話はごく一部の人にしか話していない。もちろん家族にも。
傷付くたびに何度も死にたくなった。そうまでしてしがみつく理由は私がメンヘラだからとしか言いようがない。メンヘラだからこそヒーローになりたかった。必要とされたかった。
でもお金やセックスじゃない、私という人間を好きになって欲しかった。尽くしてもヒーローにはなれないのだと気付いた。
男性は思い出を美化しがちだとも聞くが私と関わってよかったと思う男性がその中に何人いるだろう。いい思い出にしろ悪い思い出にしろ、私のことを記憶から消して欲しいと今は思う。私も彼らを死んだものとして生きていくから。
そうでなければやりきれない。自業自得とはいえ貸したお金も、浴びせられた罵声も、傷付けられた心も、もとには戻らないのだから。
過去の亡霊に捕らわれてなるものか。私は今を生きてやる。へらへらしながら「3万貸して」なんて言うやつに遭遇したら今度こそ即切ってやるんだから。
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