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プロ奢ラレヤーin新宿
先日、珍しい人物から着信があった。
電話の主はプロ奢ラレヤー。職業、奢られ屋である。
「紹介したい人がいるんだけど、今から歌舞伎町来れる?」
プロ奢が新宿に来るのは珍しい気がする。
そう思いながら僕は自転車を漕いで、歌舞伎町にあるバーに行った。
バーの扉を開けるとプロ奢は奥のソファー席にラスボスみたいに座っていて、となりでガタイの良い男の人が立っていた。
「はじめまして、Yと言います。」
歯が綺麗だと思った。
物腰が柔らかいが、凛とした目つきをしていた。
聞けばSNSのフォロワーが100万人いるインフルエンサーだと言う。
そんな人が無職の僕に一体なんの用だ…。
プロ奢は僕が席に座るなり、こう言った。
「彼の付き人やってみない?」
「はっ?」
「彼ね、暇なんだって。
お金もあるけど、時間もめちゃくちゃある。」
「はぁ」
「友達はいるけど皆働いていて毎日忙しいし、かといって時間のあるまわりの経営者達とは見栄の張り合いもあって弱音を吐けなくて疲れてしまう。
だから家でスマブラしたり、外に行っても一人行動するしかない。
つまり寂しいんだ。」
「はぇ」
「ほんでトリさん暇でしょ?
付き人やんなよ。正確にはごっこだけど。
彼が行きたいところに、一緒についていって、彼がやりたいことを一緒にやる。
することがなかったら仕事でも手伝えばいい。
どうせ暇なんだし。
なんか、いいじゃん演劇みたいで。」
そうやって、プロ奢はYさんの事情を全部ひとりで喋った。(たのしそうに)
条件的に「昼も夜もすぐに動ける人」というだけでかなり絞られるが、かと言って暇であれば誰でも良いという訳ではなかったようだ。
Yさんは見た目も良いし、明るくて気配りもできる。
学生時代もカーストの低いところにはいなかったそうだ。
かといって経営者のようなバチバチに競い合う群れの中では安寧は手に入らなかったらしい。
「経営者達と飲むと、その場ではまわりと一緒になって楽しく騒ぐんですけど別れたあとにどっと疲労感が込み上げるんですよね。」
少しわかる。
能力があって、心がついていかないかんじ。
僕はハイブランドが好きな権力主義だし、かと言って同じ服を着ているような荒っぽいノリの集団に馴染めるわけでもない。
繊細で傷つきやすく、強い雄の無神経なマウントやイジリには耐えられないが、かと言ってオタクというわけでもない。
どちらの群れにも表面上仲良くできるが、心を許せる人がいなくてずっと苦しんだ。
似ていると思った。
そういうところから、プロ奢の中で白羽の矢が立ったらしい。
本当に人をよく見ている。
僕も相性が良い人でなければ一緒にいて疲れてしまうし、気が合わなければそもそも興味を持てない。
なんでも面白がれる力というのは本当に尊いものだが、僕はまだ自分のことであっぷあっぷしている。
陰キャでも、陽キャでもない人というのはいそうでいない。
Yさんの話を聞いて、素直に面白そうだなと思ったので僕は「お願いします」と返事をした。
僕は社会復帰まで、今まで溜まりに溜まった「孤独」と「心と体の不健康」をゆっくりと癒していくと決めている。
中高と、ほとんど学校に行っていなかったあの頃の青春を取り戻すように、ゆっくりと。
全くもってストレスのない生活をしている今、ここにないものは社会性であり、刺激だ。
…まぁスマブラをやることが社会とは思えないが、「僕が動くことで人の為になる」という意味での社会なのかもしれない。
時間はある。
親友のおかげで、健康も溜まってきた。
ひとまず、やってみよう。
これからどう転ぶかが楽しみだ。
こういうことを思った時、僕はいま健康が満ちていることを実感する。
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プロ奢について書いた記事↓
余談だがプロ奢の言う「日常における演劇性」の重要さはこの記事で学んだ。
仮面を被って生きてきた僕にはあまりに良すぎてマガジンを作ったくらいなので是非読んで欲しい↓