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随筆・日記
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2024年10月の記事一覧

【朔 #222】偉大である

【朔 #222】偉大である

 締切ラッシュ。
 五句、五句、十句。
 木菟の、こと。
 梟の飢えについては解ってもらえたが、はたして、ペリットについてはどうか。北村太郎の不思議な死の世界、もとい詩の世界。遠くからスキャットが聞こえてきていて、高野素十は偉大である。

【朔 #221】労調法

【朔 #221】労調法

 虚、
 めまぐるしく、蝋燭の火は交換されてゆく、牛の涎の、そんなこと、鋏を逆様に持って、つ、月、立てて、道交法。
 暗い気分である。
 七五三よ、ごめんよ。結局は老人(風鈴の下に老人牛乳屋/岸本尚毅)なんだ。声は海牛。なだらかに、しぐれて、愚、ぐ、労調法。
 すっと取り出された短冊に私の没年が書かれていました──それは私の筆蹟……。

【朔 #220】わが褥

【朔 #220】わが褥

 小雨、一応、握手と拍手と挙手、本当か?
 自分の梟。
 無音でした。
 ともすれば、
 『腐九楼』が書ききれません。
 『九羅夏/腐九楼』なんて、夢のまた夢。
 初鴨か、鷺が悠々と頭上を過ぎて選挙カーはのろのろと川沿いを下る。
 自然詠……。
小魚:ずっと、眠っていたみたいよ。
柴漬:ずっと、眠っていたんだよ。
小魚:いまも?
柴漬:ずっと。
小魚:星の飢餓ね。
柴漬:わが褥。

【朔 #219】着脱式冠婚葬祭

【朔 #219】着脱式冠婚葬祭

 着脱式冠婚葬祭。
 着脱式冠婚葬祭。
 正面の、
 冠鶴の首ぐぐっと縮む現世の背の樹。
 着脱式冠婚葬祭。
 豆御飯。
 朝まだき、
 再び宰相を見に行く。双腕のない予言者の星の眼、梟は鬱を再発し、弟よ、正面の、冠鶴の首ぐぐっと縮む現世の背の樹。ティースプーンを振りながら、三年前の同じ地で吠えようか。
 一瞬にして湖上に立ったが、
 まだ唇は開かないし、纜も、家並を押し分けてゆく半島、半島、半島

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【朔 #218】予言者

【朔 #218】予言者

 予言者の星の眼の、
 中心に瞳を穿ったのが私だ。
 トリスタン、明日は霽れる。
 室内の波に乗って、根から抜けた草は流れてくる。それは窓を超えて漸く川に接続すると丸太橋を、古代のリズムで踏み鳴らし、真っ黒な斧を担いだ少年が渡った。玩具とは貝の一種だと信じて疑わなかった頃、すなわち、玩ぶ貝が欲しかった頃、平面的な地球儀がワイン瓶の縁を通過し、「やめて!」と叫んだ、叫んだ、私は一対の犬歯であったので

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【朔 #217】柴漬

【朔 #217】柴漬

 柴漬(ふしづけ)……、
 の準備が始まる村へ手紙を送る。消しゴムで書いた手紙だ。
 デイジー、デイジー、
 鞄の底に佇む三島由紀夫の亡霊は廻廊に行き着くだろう。咳き、しわしわの表紙と墓。録音済みの泥、
 ゑびす、
 水族館をひっくり返して、
 熊手を買い求める長蛇の列までメトロノームを運ぶ。
 リップクリーム。

【朔 #216】野葡萄

【朔 #216】野葡萄

 昨日(二〇二四年十月十九日)、近所の山を見ると霧が所々湧いていた。小雨が降っていたが、霧の山に登りたいと思って、自らの装備(本を詰め込んだ鞄、普通のスニーカー、壊れかけの傘)を気にせずに山へ向かった。たまに、こうして衝動的に山に登ることはあって、その山も最早馴染みの山であった。
 登山口に差し掛かる所に小さな神社がある。鳥居に神社と書いてあるから神社と呼ぶが、実態は管理の行き届いた祠といったとこ

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【朔 #215】藤袴の限界に接着しようとするが

【朔 #215】藤袴の限界に接着しようとするが

 顳顬に血を集めて、藤袴の限界に接着しようとするが、どうしても土鳩の寝言を翻訳したがる、毬栗の、三点倒立の最中に視た木の匙の幽霊は、夕方になって違う透明度を得た、ありがたく冷まじき維管束と擬岩を這う絶対多数の近餓、とにかく黒猫を放ち、ここは猫町、猫が通過する穭田はもう無い、不磨の大典さえもう無い、けれど、相槌を打つ噴水の天使像の腋の黒黴の縁の縁の縁の赤黴、梟は、沖を見つめる青鷺の喉膨れ、全棟の扉が

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【朔 #214】独和辞典を運河に投げ捨てるのはやめた方がいい

【朔 #214】独和辞典を運河に投げ捨てるのはやめた方がいい

 本当に茸は秋の季語だなあ、と思った。奈良は茸、神戸は茸、私たちは茸。茸の傷は黒くなる。
 砂糖は無し。真鯉。
 虎と漸化式。冷まじき仏教建築の青銅屋根を降りてくる耳朶の列に呼び掛けて、陰陽五行説の紋様は賢い。木星から運び出した金属バットよ、人類の靴が漂う成層圏(漂えない)へ警察手帳を提示して、雲の裏側が痒くなる、ゆゆゆ、芋虫って素敵、柚子坊を忘れてしまう三十二歳春、愛か、電話をかけてしまってテキ

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【朔 #213】関!

【朔 #213】関!

 千行詩篇を、ばらばらの媒体で公開していって、いつかなんらかの形でまとめるってどうですかね。
 と、相談してみると、
 猫かと思ったら狸だった。
 狸はクェーンと鳴く。左頬の骨が痛い。
 そうそう、それでやはり千行詩篇は百行詩篇の反復にはならなくて、但し未練、正しい未練? いまだ書き始めてもいない詩について、早くも書きたくないと言っている。
 無難な、さ。と、真鯉が秋水のど真ん中を行く。そこに煙草

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【朔 #212】新たに千行詩篇を完成させるとするならば

【朔 #212】新たに千行詩篇を完成させるとするならば

 ブラームスの交響曲第1番。
 では、その谷底から、
 藍染の手を翳したのは密猟者かもしれない。
 朝寒の舐めまわすような静けさ。
 明るい嘘だ。
 腹痛は星鴉に啄まれた松の種で、
 愛とは、
 やや進路を変えながら這う蛇であった。途中で、
 サロンパスの蓋知らない?(知らない)
 例えば、帛門臣昂「窪、夢の野の、の、の」の約束を反故にして、新たに千行詩篇を完成させるとするならば、おまへ、真鍮の鳳

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【朔 #211】椅子は壁と同化し、燭台は自らの影に影以上の形象を与えて、窓はどこだ、梔子と思しき花の行方も、窓を外から見た構図なんです、窓は外を見るだけじゃない、梔子はそもそも、燭台の金属光沢を異化する試み

【朔 #211】椅子は壁と同化し、燭台は自らの影に影以上の形象を与えて、窓はどこだ、梔子と思しき花の行方も、窓を外から見た構図なんです、窓は外を見るだけじゃない、梔子はそもそも、燭台の金属光沢を異化する試み

 鬱状態も段々と良くなってきた。
 土曜日(二〇二四年十月十二日)、ここ数ヶ月忙しく、行けていなかった県立美術館へ。八月に内容が変わったにもかかわらず、十月にいたるまで一度も観にいけていなかったコレクション展II『わたしのいる場所──コレクションから「女性」特集!』を。
 当日は鬱状態ど真ん中であって、読書もできないしとにかく「観る」と「聴く」に徹していたかった。また先般、重要文化財に指定された本

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【朔 #210】焚火

【朔 #210】焚火

 焚火。
 色々な疲れと歯痛と腰痛などなどで鬱状態。
 急に来るから厳しい。
 とりあえず、
 燐寸を一本点けておきます。

【朔 #209】舟が笑った

【朔 #209】舟が笑った

 私が鹿を得る為にさんざん歩き回ったというのに、舟はすらりと水に乗って、容易く鹿を呑み込んだ。座頭虫の脚について。諸君、と呼びかけてみたいが、誰もいないので椅子を見ただけだった。あとは水だ、ひたすら水だ。神さびて、鹿も逐われるがわになる。薄紅葉の後天的挙措。眠る直前にいつも幻聴が聞こえてくる。ぼんやりと照らし出された私の服……フロイト的不安? おにぎり五つとパン一つ。ボルゾイも口もダメでした。でも

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