【朔 #215】藤袴の限界に接着しようとするが
顳顬に血を集めて、藤袴の限界に接着しようとするが、どうしても土鳩の寝言を翻訳したがる、毬栗の、三点倒立の最中に視た木の匙の幽霊は、夕方になって違う透明度を得た、ありがたく冷まじき維管束と擬岩を這う絶対多数の近餓、とにかく黒猫を放ち、ここは猫町、猫が通過する穭田はもう無い、不磨の大典さえもう無い、けれど、相槌を打つ噴水の天使像の腋の黒黴の縁の縁の縁の赤黴、梟は、沖を見つめる青鷺の喉膨れ、全棟の扉が一斉にノックされる、そのうちの一つが開くだろう、B棟203室、冷たい闇の中から平家の菊人形が血みどろになって這い出てくる、遇いたい、欸乃、エウロパという麗しい名前はいつから無機質に、豊かに海月の漂着する浜に立ち、弟よ、レシートは不要です。