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随筆・日記
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2024年9月の記事一覧

【朔 #202】シッダルタ、シッダルタ、シャンデリア・ラプソディー

【朔 #202】シッダルタ、シッダルタ、シャンデリア・ラプソディー

 いまだに羞じらう柿。
 はっ?
 今日ぢゅうに終わらせたい原稿がある。明日からは郵便料金が上がるから。
 北村太郎、三島由紀夫、中村和弘を同時に読んでいる。バラバラなようで、唐突にカチンと回路が繋がる時があり、それが私の粗末な集中力を支えてくれる。
 ただ、やはりそぞろに、
 大森静佳の歌集が読みたくなってきて、読んでしまう。特に『ヘクタール』(文藝春秋)。大森さんはどこまで行ってしまうのだろう

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【朔 #201】ルカの子

【朔 #201】ルカの子

 猿のような眼で、
 枝と枝の間から空を見つめる。ときどきは、
 単眼の巨人と目が合うだろう。
 榠樝とも柿とも仲良くなれない葡萄。
 鶏頭と槍鶏頭と葉鶏頭と、
 鶏冠はまったく別物だが、
 騒擾。
 どーしても、秋灯が要る(秋灯を明うせよ秋灯を明うせよ/星野立子)。
 イル、というのは爆散魔法だった気がする。海豚の子、ルカの子。

【朔 #200】二百回

【朔 #200】二百回

 二百回。
 だらだらと。
 昨日はひどく陰鬱で、
 珈琲を頼む気力もなく、
 もさもさとサラダを食べた。
 健康かもしれない。
 どんな海豚にもサラダを与えられない。
 それは条約違反。
 陰鬱だ。
 憂鬱で、いいか。
 憂鬱だ。
 (汗ばみてをり鶏頭の襞のなか/奥坂まや)
 サラダには大根と人参と萵苣と胡麻。そこに少しのマヨネーズ。恋の神ではないところのマヨネーズ。特別なマヨネーズ。
 大音量

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【朔 #199】九月はやはり変な月

【朔 #199】九月はやはり変な月

 引き続き、三島由紀夫『午後の曳航』(新潮文庫)を読み進めていて、この短編では初めて辞書を引くことがあった。

 この「倉卒に」の意味が、なんとなくわかるが一応調べておきたいと思って調べた。「卒」の字があるので大体わかると思う。その通りの意味だったが、倉卒、良い言葉だ。多分、他の三島作品にも出てきていただろうが、忘れたか、当時はあまりそそられなかったのだろう、覚えていない。
 初めて買った三島由紀

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【朔 #198】本当に梟か

【朔 #198】本当に梟か

 エントロピー。
 荷作り。
 無限鏡面。
 北村太郎『眠りの祈り』を読み終えて、
 一週間って、恐ろしい。
 ガラ、ガラッ、
 ガラガラガラッ、と、“ふわり”が回る。
 本当の音は知らない。
 Wheel of Fortune?
 一本、生糸が宙を漂う。焦土の上を。
 鷗の糞と鳩の糞はきっと違うのだが、
 赤い郵便ポスト、
 蓮の花、金亀子ひしめき、
 啄木鳥に鳥の脳(なづき、にくづき、つきづき

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【朔 #197】我が家の本棚には第二詩集だけ歯抜けの状態で榎本櫻湖詩集が並んでいる

【朔 #197】我が家の本棚には第二詩集だけ歯抜けの状態で榎本櫻湖詩集が並んでいる

 書こうかどうか迷っていたが、書いてみる。
     、、  。
   、        →
       ?   。
 ────────。
 二〇二三年四月下旬。私は意を決して榎本櫻湖さんに連絡した。櫻湖さんのTwitterプロフィールにあるリンクから『​archaeopteryx』のサイトにゆき、contactへ。目的は『増殖する眼球にまたがって』(思潮社)の在庫の有無を確認するためだった。

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【朔 #196】呪いが漏れる

【朔 #196】呪いが漏れる

 昨日も昨日で、未練がましく『現代詩文庫 北村太郎詩集』を探して古書店巡り。途中諦めて、『ユリイカ 1972年3月号』を買う。ここ二年、探していたもの。吉増剛造「王國ノート」という記事が載っている。赤裸々に詩篇「王國」の成立過程を書いている。因みに、この号に北村太郎が詩篇「死について」を寄せている。詩集には入れていないらしい。それも頷ける(失礼)。
 時間を潰すつもりで、今度は本屋に行った。とりあ

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【朔 #195】蜘蛛には見えない

【朔 #195】蜘蛛には見えない

 ここに、ひとつだけメモを写す。

 桜ヶ丘銅鐸・銅戈は国宝に指定されている。今年で発掘から六十年らしい。
 去年だったか、神戸市立博物館のコレクション展に行き、最初に見たのが桜ヶ丘銅鐸だった。14号まであり、銅戈は七本。充実したコレクション。4号銅鐸に描かれている謎の動物(これは、私にとって判別不能というわけではなく、研究者たちもまだ確定できていない、という意味で)に非常に惹かれたのだった。一応

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【朔 #194】切ないではない、悲しい

【朔 #194】切ないではない、悲しい

 アメーバという言葉も随分ノスタルジーを帯びてきて、僕だの彼だのと夏の窓辺に向けて言い募ったとしても、縦しんばそれが私(帛門臣昂)だったとしても、髭を抜く悪癖について君は知らない。モーターが乾いた音を立てる扇風機。巨大な松虫の声を背後にコンビニエンスストアは煌々と灯る。カレーライスが食べたい。一人分のカレーライスを作るのは面倒くさい。二人分のカレーライスも面倒くさい。
 三島由紀夫『午後の曳航』(

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【朔 #193】その夢の中

【朔 #193】その夢の中

 蠍が踏んづけている私の日記。
 鯨の歯の代わりにぼろぼろの巻貝があるのか。外出せよ、満月の形質。嬉々として孔雀はずらりと着地する。つまりは複数。つまりは他者、多捨。奥歯色の雲だ。
 猿=涙の匂い。
 天使の名前を誦じて、口笛を禁じて。
 椅子に座って、本を読み、詩を書き、散文を書き、本を読み、葛の花の具合を案じているとふと、一瞬、身体にかかる重力が強まった気がして、殊に脳がぐらんと地に落ちようと

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【朔 #192】燐寸を擦って、玄関に向かう

【朔 #192】燐寸を擦って、玄関に向かう

 心情の具象化としての取り合わせではなく、葛の蔓延る野原に渓谷にひとり分け入っていたはずが、追従者に気づいて発した言葉と捉えたい。すなわち、景と台詞と。それは蠍の眼が曇るような一瞬であるに違いなく、はらら神を慰める音楽が一生(誰の?)響いているのだった。河口からわざわざ我が家まで歩いて来てくださった弥勒菩薩よ。その徒跣。玄関に積んである玉石を見つけて「此は何か」と問われたので、「母の物です。もっと

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【朔 #191】若菜摘んでてもさ

【朔 #191】若菜摘んでてもさ

 を読んで、笑ってしまうとともに「枝の雪」の巧みさに口を開けて星空を仰ぐような静けさが一瞬背後を占めた。以来、ずっと頭の中の枝という枝には雪が積もり、私もまめな方ではないからね、と枝豆を食べてビールを飲んで唐揚げを食べてコーラハイボールを飲んだ夜を振り返る。私の牛についてずっと怒っていた酔いどれ俳人は無事に帰宅できたらしく、水母を差し出してきた。時々はそういう人であって、良いと思う。何故か私はそう

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【朔 #190】はらら神

【朔 #190】はらら神

 昨日は酔って帰ってきて、蠍を撮って数人に自慢するなどして、黄緑色の空気、眠るまで数瞬。
 一日の区切りは珈琲にある。どこぞの瞬間湯沸かし器と主観湯沸かし器の聞き間違いが琵琶湖の底の倒立貴族をゆらゆらゆらゆらと謎、謎、謎!
 何ぞ!
 ぼろぼろの巻貝の……、
 或はべったりとした因果関係、破断!
 巻貝の日に日に軽くなってゆく、それは風化。それは、明日、消えてしまう露。はたはたはたはたはたはたはた

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【朔 #189】今日は日曜日

【朔 #189】今日は日曜日

 目が覚めれば千里中央に居るはずだが、昨日の朝の夢。
 千里中央の句会場に着いたのだが参加費を持参していないことに気付き、絶望していると関西支部長が「また来月でええよ」と優しく言ってもらえて、ペコペコと頭を下げつつ入室するといつもの指導者三人と小笠原鳥類さんが座っていた。驚きつつ着席すると、鳥類さんから全体へ挨拶があり「見学しにきました」と言う。妙な所に見学するものだと思いつつ投句を済ませ、さてど

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