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【朔 #200】二百回

 二百回。
 だらだらと。
 昨日はひどく陰鬱で、
 珈琲を頼む気力もなく、
 もさもさとサラダを食べた。
 健康かもしれない。
 どんな海豚にもサラダを与えられない。
 それは条約違反。
 陰鬱だ。
 憂鬱で、いいか。
 憂鬱だ。
 (汗ばみてをり鶏頭の襞のなか/奥坂まや)
 サラダには大根と人参と萵苣と胡麻。そこに少しのマヨネーズ。恋の神ではないところのマヨネーズ。特別なマヨネーズ。
 大音量のラジオがどの家からか聞こえてくる。松虫が聞こえない。綴刺蟋蟀が聞こえない。駆けてゆく樋洗童。トイレットペーパーをしゅるしゅると地に這わす。さようなら。渡されなかった言葉の数。渡さなかった言葉の数、おい。やけに今日はセンチメンタル?
 (鶏頭が立てり記憶の行止まり/藤田湘子)
 殆どマヨネーズの為に来ていると言っても過言ではない。未然形だ、未然形的うまさだ。ラジオが止む、テレビが止む、扇風機は海に棄てる。松虫が聞こえてくる。綴刺蟋蟀は絶滅した。馬追も今年は聞こえない。
 九月もそろそろ終わる。
 九月とは苦月であった。
 猿。

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