【朔 #199】九月はやはり変な月
引き続き、三島由紀夫『午後の曳航』(新潮文庫)を読み進めていて、この短編では初めて辞書を引くことがあった。
この「倉卒に」の意味が、なんとなくわかるが一応調べておきたいと思って調べた。「卒」の字があるので大体わかると思う。その通りの意味だったが、倉卒、良い言葉だ。多分、他の三島作品にも出てきていただろうが、忘れたか、当時はあまりそそられなかったのだろう、覚えていない。
初めて買った三島由紀夫の文庫本は『仮面の告白』(新潮文庫)。高校生だった。頻繁に辞書を引き、スマホを駆使して読み進めていたのが懐かしい。『午後の曳航』は比較的易しいので、第二部に入って漸く、ということだったが、新しい or 美しい言葉と出逢いたい気もする。それを三島由紀夫任せにしていても、どうしようもないが。
九月はやはり変な月で、
残酷極まる月でないことが救いだが、
次々と連絡が来る。嬉しいことである。
しかし、理由がわからない。このひと月に集中する理由が。涼しくなって、皆余裕が出てきたのか。昨日も三年越しくらいの人間から電話がかかってきた。高校の先輩である。函館時代の話と東京の話をする。それだけ。
「なにか、用件があったんじゃ?」
と訊くと、
「いや、なんとなく」
なんとなく、は、案外強いのか。
なんとなく、人と喋りたい気持ちがわからないけれど、扇風機はそろそろしまいましょう。