JW624 愛し妻
【景行即位編】エピソード13 愛し妻
第十二代天皇、景行天皇の御世。
西暦81年、皇紀741年(景行天皇11)のある日。
ここは、纏向日代宮。
景行天皇こと、大足彦忍代別尊(以下、シロ)の元に、ある人物が参内していた。
その人物とは、屋主忍男雄心(以下、ヤヌシ)である。
シロ「木国(現在の和歌山県)から、戻って参ったのか?」
ヤヌシ「エピソード616以来の登場なり!」
シロ「して、連れ添うておる女は、何者じゃ?」
ヤヌシ「我の妻なり。木国造の妹、影媛なり。」
影媛「お初にお目にかかりまする。」
シロ「長い間、帰って来ぬゆえ、如何したのかと思うておったが、そういうことであったか・・・。」
ヤヌシ「そういうことなり。我の愛し妻なり。」
影媛「愛し妻などと・・・(〃▽〃)ポッ」
シロ「う・・・うむ。しからば、これよりのちは、国中にて住まうと申すか?」
ヤヌシ「そういうことなり!」
こうして「ヤヌシ」は、帰国したのであった。
さて、二人が去ったあと、「シロ」は、大后の播磨稲日大郎姫(以下、ハリン)の元に向かった。
シロ「ハリン? 今、参ったぞ。」
ハリン「大王・・・。お久しぶりにございます。此度は、何処の媛の元に通っておられたのですか?」
シロ「うっ・・・。そ・・・そう申すな。我は、大王ぞ? これも務めゆえ・・・。」
ハリン「されど、大后の私には、未だ、子が授からぬというのに、他の媛の処を、ほっつき歩いて・・・。」
シロ「また『やきもち』か? 何度、申せば・・・。」
ハリン「・・・と、これまでは、そのようなことを申しておりましたが、これからは、申しませぬ。」
シロ「ん?」
ハリン「なぜだか、お分かりになりますか?」
シロ「分かるわけが有るまい。」
ハリン「ついに・・・『やや』(赤ちゃんのこと)が出来たのです・・・(⋈◍>◡<◍)。✧♡。」
シロ「そうか・・・。ついに『やや』が・・・ん? 今、何と申した?」
ハリン「ですから『やや』が出来たのです・・・(⋈◍>◡<◍)。✧♡」
シロ「で・・・でかした! 『ハリン』! でかしたぞ! ついに・・・我と『ハリン』の・・・。長かった・・・。本当に、長かった・・・(´;ω;`)ウッ…。」
ハリン「あれ? 大王? 泣いているのですか?」
シロ「ば・・・馬鹿を申すでない。我は、大王ぞ。」
ハリン「左様にございましたね。」
シロ「し・・・して、産み月は、いつになるのじゃ?」
ハリン「年が明けて・・・。」
シロ「いや、皆まで申さずとも良い。ロマンにしておこうぞ。」
ハリン「えっ? よろしいのですか?」
そして、年が明けて、西暦82年、皇紀742年(景行天皇12)となり、「シロ」は、針間国(現在の兵庫県南部)へと向かっていた。
付き従うのは、告の首(以下、スズム)。
中臣の連の大鹿島(以下、オーカ)。
忌部の首の和謌富奴(以下、わかとん)である。
スズム「大王? 産み月に入ったとはいえ、まだ、産まれる兆しもないのですぞ? 少し気が早いのでは?」
シロ「そう申すな。我は、早う『ハリン』に会いたいのじゃ。『ハリン』にとっては、初めての身身(出産のこと)となる。心細かろうと思うてな・・・。」
スズム「左様にござりましたか・・・。」
シロ「ん? あれは、何じゃ?」
スズム「あれとは?」
シロ「あれじゃ。なんと、長い田であることよ・・・。」
スズム「たしかに、細長い田にござりまするな。」
オーカ「大王が、そう仰られたので、この地は、長田の里と呼ばれるようになったのであらしゃいます。」
わかとん「二千年後の加古川市尾上町長田と言われておりまする。エピソード607で紹介した、尾上神社が鎮座する地にござる。」
オーカ「ちょっと! 尾上神社の件は、我の台詞にあらしゃいますよ?」
わかとん「良いではないか。汝の喋りが遅いゆえ、代わりに言うてやったのじゃ。」
シロ「二人とも・・・。喧嘩するほど、仲が良いと申すが、此度は『ハリン』の初めての身身なのじゃ。しっかりしてもらわねば困るぞ。」
オーカ・わかとん「も・・・申し訳ありませぬ。」×2
スズム「されど、なにゆえ、御二方が、参っておるのです?」
わかとん「何を言うておるのじゃ。身身には、邪気払いと祈りが、要り様なのじゃ。」
オーカ「そうですぅ。そこで、中臣氏と忌部氏の出番というわけにあらしゃいます。」
スズム「な・・・なるほど・・・。」
わかとん「まあ、忌部氏だけで、事足りるのじゃがな。」
オーカ「またまた、そのようなことを・・・。」
「ハリン」は、無事に出産出来るのであろうか?
次回につづく
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