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書評

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2021年7月の記事一覧

最小の暴力——ジャック・デリダ「暴力と形而上学」について

最小の暴力——ジャック・デリダ「暴力と形而上学」について

 『評伝レヴィナス』(サルモン・マルカ 斎藤慶典・渡名喜庸哲・小手川正二郎訳)によると、後にソ連へ吸収されることになるリトアニアに生まれた哲学者エマニエル・レヴィナスは、ロシア革命による政治的動乱を機に一九三〇年にフランスに帰化する。その際、フランス国籍取得の条件として兵役を課され、実際に第二次世界大戦においてロシア語の通訳者として軍務につくことになる。一九四〇年六月五日、ドイツ軍との戦闘に敗北し

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他者をめぐって 柄谷行人『意識と自然——漱石試論』について

他者をめぐって 柄谷行人『意識と自然——漱石試論』について

世間の掟と自然 柄谷は『それから』において代助が友人のために譲った女性を奪いかえすときに口にした「世間の掟」と「自然」という言葉に着目し、次のように述べる。

 ここで漱石・柄谷は「自然」という言葉をきわめて多義的に用いており、この「自然」には存在や実存や精神や本能や自由といったさまざまな言葉が代入可能である。仮にここに倫理という言葉を代入して読むなら、社会の掟と倫理とは背立するものであり、人間は

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従順と非服従——太田靖久『ののの』について

従順と非服従——太田靖久『ののの』について

 フランスの小説家ジャン・ジュネに『シャティーラの四時間』という作品がある。イスラエルによる支配からパレスチナを解き放とうと奮闘したフェダイーンと呼ばれる若い兵士たちのキャンプを訪れたジョネと彼らとの交流の日々を綴った平和なパートと、イスラエル軍の後ろ盾があったとも言われるキリスト教系の武装集団にフィダイーンを含んだ難民キャンプが襲撃され、女性や子供を巻き添えに無差別な殺戮が行われた事件が起き、た

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