勝手にキャスティングとかプロフィールまとめてくれた読者がいて嬉しすぎて更新笑 東京カレンダーを意識した、関西カレンダー。 ただ、本家のようなハイエンドではなく、中流階級の男女のあれこれを書いています。 アラサーのあるある?な恋愛模様を、大阪・京都の飲食店での駆け引きやあれこれをベースに書いています。 読んでいただけると嬉しいです。 白子が一番美味しい。 第2弾(35話「Akami modern chops」~53話「ふうびとすうろ」まで) 舞台は2022年夏。コ
結局、2回目の三連休を優樹と過ごすことはやめにした。今更予約が取れるかもわからない旅行の提案にも心は踊らなかったし、先週のデートで、「やっぱり違う」という思いは決定的になった。 今週末は、今まで眺めているだけで何もアクションを起こさなかった、自分の将来について改めて考えてみることにする。もうそのための予約もした。優樹には、「両親が来ることになった」という見え透いた嘘を吐いた。じゃあ休み前の木曜は?と言われたので、仕事終わりにこうして会うことになったというわけだ。 夜7時、
この辺りに平安神宮と動物園があることはなんとなく知っていたが、美術館が立ち並ぶエリアだというのは今日初めて知った。そういえば、博物館ならば上野公園のところに何回か行ったことがあるが、美術館に足を踏み入れたことは人生で一度もない。愛佳さんがあまりにも自然に、「今は何の展示しているかなあ」などと言うので流されて来てみたが、やはり全く興味は湧かなかった。愛佳さんにとっては、デートでも一人ででもそういう場所に行くことは日常のことらしい。 「今日初日だし混んでるかなあ。まあ食べ終わっ
Instagramのストーリーズでレミさんが関西に来ていることを知り、連絡せずにはいられなかった。「夜しか時間取れないから大阪でなら」という誘いに私は迷わずOKし、平日の夜だと言うのに、京阪電車に乗って大阪に向かっている。仕事もプライベートも充実しているレミさんに、私のしょうもない話を聞いてもらうのは申し訳ない気がするが、どうしても前回アルバイト仲間で飲んだ時に彼女が「年下の子といい感じだった」と言っていたことが気にかかっていた。 プレゼントで貰ったネックレスは、つけるどこ
「京都駅で一旦降りたから。近いでしょ。すぐ来て」 星奈からの着信で目が覚めた。ふと横を見ると、夜中までそこにいたはずの愛佳さんの姿がない。iPhoneで時間を確かめるともう10時を過ぎている。眠気眼で電話に出ながらLINEをチェックすると、「用事あるから帰るね。ぐっすり寝てたから起こさないでおいた」と、彼女からメッセージが入っていた。寂しく思うが、星奈からの電話を聞かれなくて良かったと胸をなでおろす。 「ごめん。今起きたところ。急に何?あ、今日研修?そんないきなり言われても
「こないだ予約してた店は今日はもういっぱいみたい。何か食べたいものある?お誕生日なんだし、なんでも言ってね」 Surfaceの小ぶりなブラウザに表示される優樹からのLINEを見て、そんなの当たり前じゃないと独り言が出てしまう。今日は土曜日なのだ。いくら感染者数が増えて外出を控えるムードが強くなったとて、記念日用にしつらえられたこじゃれた店が埋まるのは決まっている。 「そうなんだ!全然気にしないで~。うーん。中華が食べたい」 私は、そうメッセージをキーボードに打ち込むと、さっ
今日の夕方の新幹線で戻ってくるという彼女に、「お祝いはまた今度になるけど、とりあえず一緒に晩御飯でも」と声を掛けたのは自然な流れだった。午後3時、これから東京駅を出ると言う彼女から、「うん。じゃあまた京都駅あたりで」と、すぐに返事が来た。 午後6時前、日曜日の八条口は、新型ウイルス(もう2年以上も経っているのに何が新型なのか)の感染者数も高止まりしているにも関わらず、京都観光帰りの人々で賑わっている。もうここまでくれば、罹った時は罹った時だし、政府すら促していない自粛なんて
2022年9月1日、いつものように朝6時半に目を覚ます。アラームを止めるためにiPhoneを開くと、優樹からのLINEが表示されていた。 「お誕生日おめでとう」 今日で私は30歳になった。付き合い始めたばかりの彼に祝ってもらうことは気が引けたが、今夜は一緒にご飯を食べに行く約束をしている。彼と過ごせる嬉しさよりも、30歳の誕生日を1人で過ごさずに済んだ安堵の方が強いかもしれない。 いつものように、烏丸線に乗って職場に向かう。その時だった。鞄の中でiPhoneが鳴った。表示
「優樹がまさか京都に来るなんて驚いたよ。地元好きだったじゃん。てっきりあっちに残って研究所か何かで勤めるとばっかり思ってたよ」 カールスバークの生ビールで乾杯しながら、サトルさんが言う。サトルさんは、高校時代に通った個別指導塾の恩師で、一昨年の春から京都市内の病院で外科医として働いている。学部は違ったが、その後、彼の通っていた大学に入学して後輩となったこともあって、こうして縁が続いている。 「ごめん。子ども生まれたばっかで。声かけてもらってたのに今までずっと時間取れなくて」
「ドライブでも」という優樹の誘いに、正直心が躍った。私自身は、大学1回生の夏休みに地元で免許を取ってからろくに運転などしたことがなかったので、ペーパードライバーだ。俊介も、都会生活が長いせいもあり同じようで、ドライブデートなんて何年もしたことがなかった。 合わないかもしれない、という思いは日々強くなるが、閲覧用にしているTwitterで恋愛格言的なアカウントを覗くと、「ドライブデートはその男性の本性がわかります。運転の仕方だけでなく、会話や気遣い、かける音楽で彼 との相性を
19時着の新幹線で戻ってきた。地元とは違い、京都の街はこの時間になってもまだ空が明るい。本当は、着いてすぐにでも愛佳さんに声をかけたかったが、公務員の仕事は暦通りと聞いていたのでやめておいた。それでも何となく直帰する気になれなくて、スーツケースを抱えながら駅前の立ち飲みで一人飲んでいる。 ビールとアテを頼む。あん肝があるのが嬉しい。冬の食べ物だとばかり思っていたが、夏でもあんこうは水揚げされるんだということは、大学時代に県北出身の友人から聞いて知った。 「お兄さん、1人?」
わざわざ俊介の住んでいる福島に呼び出すなんて、千歳はやはり変わった子だなと思う。変わった子だなで済んでしまうのは、私が彼女に絶対の信頼を置いているからだ。独身仲間が減ってきたところで、メディア学科の同期だった千歳が昨年ロンドンのワーホリから帰ってきたことは朗報だった。今は、ひと月かふた月に一度は必ず飲みに行く仲だ。「最後はコロナで何もできなかったよ」と言うが、夢だったロンドン生活を経て、今は淀屋橋の外資系企業でバリキャリとして働く彼女は、以前よりもさらに輝いて見える。 そん
二週連続で誘うなんて、しつこいと思われるかもしれないと悩んだ。けれど、メーカーの夏休みは長く、来週は地元に帰る予定にしている。その前に、愛佳さんとの仲を少しでも縮めたかった。 大阪出身の翔太が、よく地元で食べていた人気のカレー屋が京都にも店を持っていると言っていたので、昨夜ダメ元で「もし明日の昼間空いてたら、スパイスカレーでも食べに行きませんか?」とLINEを送ったら、またOKをもらえた。向こうもこっちに気がなければ、こう毎週誘いに乗ってはくれないだろう。弟みたいと思われて
いい加減自分の中身のなさに嫌気が差してくる。俊介と別れてもう2か月近く経とうとしているのに、休日の過ごし方がわからない。結局昨日の夜も金曜だと言うのにどこへも出かけず、iPhoneで漫画を読むだけで終わってしまった。コロナの感染者数もまた増えてきているし、むやみに外出しないのは良いことかもしれない。ただ、こういう時に隣に誰もいないことが虚しい。しかも、特にこれと言った趣味も、勉強していることもない。もうすぐ30歳になるのに何をしているんだろうと思う。 まだぼやっとしたコンタ
この会社に入ることを決めた理由の一つに、球場を持っていることが関係なかったと言えば嘘になる。嬉しい予想が当たり、7月の暑い中ではあるが、日曜日のデーゲームのチケットを無料で手に入れることができた。 スポーツには疎いと言っていた愛佳さんが誘いに乗ってくれたのはラッキーだった。ギリギリまで悩んでダメもとだと思ってLINEをしたのが、この前の三連休の最終日。「空いてるよ~」という返信に小躍りした。 「私、野球って全然わからないけど、外で飲むビールは美味しいなあ」 普段より幼い表
「レミさん!お久しぶりです。さすが良いお店知ってますね!」 学生時代のアルバイト先の先輩であるレミさんは、3歳上ではあったが、同じ大学の同じ学科と言うことで随分と可愛がってもらっていた。彼女が大阪にいたころはよく飲みにいっていたものだが、昨年の春、東京へ行ってからは会う機会がなかった。出張でしばらく滞在すると言うので、今日はレミさんを囲む4人での女子会だ。 相変わらず、センスが良い。あからさまなブランド物などを身に着けるタイプではないが、ブラウスもパンツもアクセサリーも一目