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#ハイファンタジー
復讐の女神ネフィアル 第1作目『ネフィアルの微笑』 第1話
マガジンにまとめてあります。
暗い灰色ばかりが視界に入る街がある。ジェナーシア共和国の中部に位置する、大きな河川沿いの街だ。
河川には様々な舟が行き交い、人々や物を流れに乗せて運ぶ。大抵は商用だが、単なる楽しみのために旅する者も少ないが全くいないわけではない。
街の名は《暗灰色の町ベイルン》。見た目そのままだ。街の建造物や河に掛かる橋、道の全ての石畳も、暗い灰色だけの街であった。
【復讐には代償が必要だ】復讐の女神ネフィアル 第7作目『聖なる神殿の闇の間の奥』第20話
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青い煙のような大男は黙って二人を見つめていた。 恐ろしげな顔立ちではあるが、怒りや危害を加える意図は見えない。 むしろ、静かで落ち着いた表情を見せている。外見の恐ろしさに囚われず、よくよく見てみれば、その静かな穏やかさが分かるのである。
アルトゥールはこの時、相手の静穏さをしっかりと見ることができた。彼はかまえていたメイスを下ろした。
武器を腰のベルトから
【復讐には代償が必要だ】復讐の女神ネフィアル 第7作目『聖なる神殿の闇の間の奥』第19話
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「それでどうするんだ? クレア子爵令嬢のところへ行くか? それともやっぱり、グランシアを頼るのか?」
と、リーシアン。ジェナーシア共和国における愚かな大衆よりも、そちらの方が気になるようだ。
「正直なところ、まだ決められないな。お前はどう思う? 魔術師ギルドよりも、クレア子爵令嬢の図書館へ行った方がいいと思うのか」
「俺はそうしてほしい。 グランシアに含むとこ
【復讐には代償が必要だ】復讐の女神ネフィアル 第7作目『聖なる神殿の闇の間の奥』第18話
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二階も一階と同じように、荒れた光景を見せている。蜘蛛の巣が天井から壁際に掛かり、足元には、踏むと足跡が残るほどのほこりが積もっている。
アルトゥールとリーシアンは、そろって廊下を進んだ。階段は屋敷の隅にある。廊下は真っ直ぐに伸びている。左右に三つずつの扉があった。
いずれも深い褐色の木目のきれいな扉で、ぶどうのつると葉と実を型どった彫刻が表面にほどこされて
復讐の女神ネフィアル【裁きには代償が必要だ】第7作目『聖なる神殿の闇の間の奥』第17話
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リーシアンは、それを聞いてにやりと笑ってみせた。 後ろから続いて階段を上がる。
「俺はハイランのことは気に入らん。かなり危険な奴だと思っている。しかし少なくともこの件に関する限り、お前は、いや俺たちはと言った方がいいな、救われた面もあるんだ」
ここで言葉を切って、紫水晶の色の瞳の青年神官の視線を正面から受けとめた。二人とも階段の途中で立ち止まる。
「お前の
復讐の女神ネフィアル【裁きには代償が必要だ】第7作目『聖なる神殿の闇の間の奥』第16話
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そこからアルトゥールはジュリアと別れて行動することにした。ジュリアは神殿にこの件を報告すると言った。
「せいぜい、もみ消されないようにしてくれ」
例によって皮肉な物言いになる。ジュリアは何も答えなかった。あきれたようにため息をついて、
「では失礼します、あなた方も気をつけて」
そう言い残してヘンダーランの屋敷の前から去っていった。
ラモーナ子爵令嬢
復讐の女神ネフィアル第7作目『聖なる神殿の闇の間の奥』第8話
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貴族の令嬢を乗せた馬車は、ヘンダーランの屋敷の前で停まった。彼女は子爵の位を持つ父親の娘である。 その父親は今はいない。
令嬢は若く美しかったが、どこかやつれた雰囲気を漂わせていた。その雰囲気だけは、まるで人生に疲れた中年の女のようでもある。
疲れた様子は明らかに子爵令嬢の若さも美も損なっていたが、不思議と保護欲をそそる魅力も醸し出されていた。
令嬢は
復讐の女神ネフィアル 第7作目『聖なる神殿の闇の間の奥』第5話
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足音は大きくはない。あたりの静けさを引き立てるように、微かに響く。
この広間は客間のようで、来客を迎えるための設えが整えられてるようだった。かつては。今はほこりが積り、花瓶に飾られていた花々も枯れて、貧相な様子を見せていた。
そんな中に、開け放たれた扉の向こうから彼は来た。
「これはこれは」
まるで道端で偶然に知り合いに出会ったかのように、その壮年
復讐の女神ネフィアル 第7作目『聖なる神殿の闇の間の奥』第4話
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「こりゃ大したもんだ」
リーシアンはにやりとした。ジュリアは二打目を与えようとしていた。巨大蛇はジュリアの方を向く。
アルトゥールは前に出た。ジュリアとは反対側の側面に行った。大蛇から見れば右側となる。
「女神の力を」
メイスが紅く光る。やや暗みのある、しかし澄んで透明な紅い光。
「ジュリア、避(よ)けろ」
言いながら打ち掛かる。蛇の頭部は完全に
復讐の女神ネフィアル 第7作目『聖なる神殿の闇の間の奥』第3話
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アルトゥールも、その場にいた二人も悲鳴を聞いた。ヘンダーランの屋敷から聞こえる悲鳴を。
「おいおい、何があったんだ?」
「嫌な予感がするな」
「行きましょう!」
ジュリアは、白く簡素な神官服の下に細身のメイスを下げていた。今はそれを手に、胸元に掲げてみせた。
細身のメイスは鉄製の柄の先に、三角形の金属板が四枚、四方に三角形の頂点の角が向くように取り付
【ハイファンタジー小説】復讐の女神ネフィアル 第6作目『ため息の響く丘』 第4話
天幕の向こう側に逃げた長の様子は、アルトゥールにもグランシアにも見えはしないが、長はその時《風の魔術師》を呼んでいた。グランシアの《銀光の矢》は長の背に刺さらずに消えた。長のマントにはそれだけの力がある。
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