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秋・とんぼ・黄金の草原と王子さま
あれは幼稚園の頃。
みんなで工作をした。
秋だったから、たしかとんぼの紙飛行機、みたいなものだった気がする。
画用紙を切って、クレヨンで色を塗って、折り目を付けて完成。
先生が、お外に出て、みんなでとんぼを飛ばしてみましょう、と言った。
みんなは、わあっと歓声をあげて、我先にと外に飛び出していった。
男の子たちは早くもとんぼを飛ばしあって大騒ぎだった。
気が進まなかったわたしは、のろのろと靴を履き
ピンクのスパンコール
ピンク色のスパンコール…、なんて夢のような言葉の響きでしょう。
けれどわたしには、ほろ苦い、幼い日の思い出があるのです。
うすももいろのジョーゼット風の布地をたっぷり使った、フリルいっぱいのネグリジェ。それはかつて、母がわたしと妹に作ってくれたものでした。
母はわたしにワンピースのネグリジェを、幼い妹にはお揃いの生地でパジャマを、得意の裁縫でこしらえてくれました。
胸元にはこまかいピンタックの上
おばあちゃんのピンクのスカーフ
わたしのおばあちゃんのおはなしをしましょう。
おばあちゃんは、どんな人だった?と聞かれたら、わたしはよくよく考えあぐねた末に、こう答えます。「よくもわるくも、女性的な人であった」と。
小柄で背中の丸いおばあちゃんは体が弱くて、それが彼女の精神を蝕んでいたように思います。
狭いコミュニティの中での息詰まる付き合い、病弱で満足に畑仕事や家事ができなかったこと…。きっと人生のあらゆる場面で、他者から
潮風通り 〜その1〜メリーゴーラウンドお菓子店
海からの風が吹き抜ける丘の上に
ちいさな街の通りがあるんだけど
そこにはいくつかのお店が
ぽつ、ぽつと建っていてね
この辺のひとたちの
憩いの場所になっているの
今日はその中のひとつ
白い木造のコンフェクショナリー
いわゆるお菓子屋さんね
そこを紹介するわね
お店の名前はたしか
メリー・ゴー・ラウンドといったかしら
そう
その名前のとおり
まるで遊園地みたいなお店でね
狭い店内に
ぎっし
はるゆき電車 第二話
いつの間にか私は眠ってしまっていた。
そして、夢を見ていた。
夢の中で、私はやはり電車に乗っていた。
ごとごととのんびり走る、おもちゃみたいな真っ赤な電車だ。
私は窓の外にひろがる、見事な一面の菜の花畑をぼんやりと眺めていた。
ふと目の前のテーブルに目をやると、何かが置かれていることに気が付いた。
それは、ちいさな白い封筒だった。
封筒は和紙のような素材でできていて、古びて黄ばんで周囲がボロ
喫茶Endeものがたり
【あらすじ】
裏道にひっそりと佇むお店、『喫茶エデン』。
そこは魔女みたいなママと、小人みたいなおじいさんが腕を振るう素敵な隠れ家。
今日はどんなお客様がくるのでしょうか?
カランコロン…
「いらっしゃいませ」
そう言って振り返ったママは、わたしを見るとふわっと花が開いた様にわらった。
「あら、かのんちゃん」
「こんにちは、ママ」
わたしはいつもの席に向かう。
すみっこの、窓ぎわのちいさなテー
赤毛のアンシリーズ読了。
去年より読み返していた、「赤毛のアン」シリーズ。
ついに最終巻の、「アンの娘リラ」を読み終わった。
創作とは言え、カナダの片田舎に住むひとりの名もなき女性の人生を、ごく近くで見守ってきたようなリアルな気持ちだった。
当時の生々しい、ありのままの生活が、そこにはあった。
19世紀のカナダがそれまで培ってきた、美しく洗練された文化。
男性は紳士であり、女性は淑女であった。
キリスト教文化が深く根を下ろ