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閑文字

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詩をまとめています。楽しんでいただけたらうれしいです。
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#私の作品紹介

【詩】二杯目の水

ラーメンの海苔はスープに半身浴させて
パリパリ感を残したまま麺に巻いて食べる。
このとき、麺は少なめに取る。
口の中で海苔を楽しめるように。
追加でトッピングできない私の、贅沢な食べ方。
お冷がお持ちされた。
すでに私の手元にはあるのだが、お持ちされた。
カウンターの上にはピッチャーがあり、隣のおじさんにはきていないところを見ると、
たぶんミス。
ラーメン屋では珍しく、同じ人に配属になった二つ目の

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【詩】じごくの空気

人間は地球の空気でしか生きられないし、
火星人は火星の空気でしか生きられないし、
流星は宇宙の空気でしか生きられないから、
地獄の空気でしか生きられない生命もいる。地獄は、
筆画が多くて恐く見えるけど、
ほんとは、なんにもみえなくてなんでもあるとこなんだよ。精神を毀す為の檻みたいに。
あなたの部屋に似てるわね、って言われた。その言葉をのせて
吐き出された息が、一番きみだったような気がした。「寥」っ

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【詩】茶化す

あなたは 肌を茶色で描くけど 瞳はターコイズブルーで描いてくれる。
色の流れをコントロールできない 水彩下手なわたしを
良い色の配置って褒めてくれる。
あなたが描くわたしを見て あなたは才能が違うって思ってしまう わたしの残酷さ。
あなたが 窓っていうよりガラスの壁だよね 
って言った 窓から 射しこむ夕陽が あなたもわたしも
部屋も時間も ほほえみも夢も 言葉も現在も
マグカップも 茶化した。

【詩】さんづくり

線路が背骨のように行きわたったから、日本列島は立ち上がれるはずなんだけど、北海道の頸のところが、まだ座っていないのかな。四国と九州の脚と、沖縄諸島の尻尾じゃ、バランス取れないのかな。もしかしたら、寝ている事を選んだのかもしれない。石川県は何度も折れたし、鹿児島の先端を、大陸の角に打つけるから、諦めたのかもしれない。わたしは免許をもっていないのだけれど、運転する人は、自分のからだが車体まで広がるらし

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【詩】超高校級承認欲求

どれが意味あることだろう 
って思った所が 恋のおわりで 老いのはじまり。
この部屋は 秩序ある混沌というか 不快感のない不潔感
をテーマにしています。 騎兵の恋。
快感の海岸線。ケンタウロスの恋。
律動と理屈に 虜われている。

【詩】人生は旅すること

じんせいはたびすること柄のシャツの上に
ジャケットを羽織ってネクタイを締めて 電車に揺られるにんげんは 脂ぎった光をしている。鏡を見るのは嫌いになったから 宇宙空間の空気を燃やしながら進む流星みたいな 光をはなつ言葉 を見ている。 世界は美しい 自分のいるこの世界は美しい 美しくない自分でもいるこの世界は美しい。 だから アンシンして 電車に乗っていい らしい。連結部分のたびに しゃっくりする 怪

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【詩】ヴァレンタイン

冬が終わる時期になると 春の壱番隊がやってきて 研ぎ澄ました包丁で 夜空の表面の鱗を 魚市場みたいに剥がす音がきこえる 冬のあいだ 恋人たちの敵役だった 鱗が 飛び散る つめたくてよくきれる 皮膚が切れて 肉の断面が見えても 血は流れていなかった 自分の肉体じゃないのかもしれない 自分の肉体とスウェットの 境界線がなくなっているのかもしれない 夜よりも 自分は にんげんじゃないんじゃないかというこ

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【詩】人生は旅すること

じんせいはたびすること柄のシャツの上に ジャケットを羽織ってネクタイを締めて 電車に揺られるにんげんは 脂ぎった光をしている かがみを見るのは嫌いになったから 透明なにんげんを見て 空気のない宇宙空間の 空気を燃やしながら進む流星みたいな 光を 放つ言葉 を見ている 世界は美しい 自分のいる世界は美しい 美しくない自分でも いる世界は美しい から 安心して電車に乗っていい らしい 連結部分のたびに

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【詩】じごくの空気

いつもアスファルトの上に立っているから忘れちゃうけど、カタラーナみたいにアスファルトの下には土がある。雑草が割ったアスファルトからは土が見えて、掘っていくことができる。街に潜るように掘りすすんで、到達したところが詩だから、詩とはじごくの空気なのかもしれない。地獄は、画数が多くて恐いけど、ほんとうはじごくって感じ。ひとは地球の空気でしか生きられないし、火星人は火星の空気でしか生きられないし、流れ星は

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【詩】文字にならない声

文字にならない声は ゲンジボタルみたいなひかりになって にんげんを 星空に沈めるように漂っていた 耳から 髪から 指先から 必要としている だれかに向かって とびたっていった 瞳からでてきたひかりは 時には拒絶してしまうくらい やさしかった
ひかりを束ねると 電気になるとわかった 電気はひつようだから 年に一度 収穫祭をするようになった 六歳になったら 自分のひかりをささげる ふんばって 口からひ

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【詩】ヴァレンタイン

鋭角三角形みたいな冷気が二粒あわさってできた星が、オリオン座みたいに結び合わされて、結び目がどんどんふえていって、固くなって出来上がった包丁が、夜空の表面を撫でる。夜空を覆っていた鱗が飛び散る。それは必殺・降鱗流星斬になって僕に襲いかかる。それは一瞬の光の奔流だった。皮が裂け肉の断面が見えていても、僕から血は流れていなかった。夜よりも、自分は人間じゃないんじゃないか、ということの方がこわかった。

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【詩】純粋さは透明度で測るものじゃない

東京の真ん中から、神奈川の隅の六畳一間の隅まで、撃ちぬける歌をうたうアーティストを飾る、すごい照明器具があるから、光もすごいってことになっている。ゲームもカメラも最新作は、夢想的な美しさをしていて、どれだけの絶景を再現しても飽きたらず、透明まで美しくしようとしている。他人の為のメイクやファッションって、眼球とのあいだの、透明に施しているのかもしれない。えのぐと違って、夜は冬みたいに、空気を染めてい

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【詩】音楽詞

とんとんたーん、つかつかしゃーん
とんとんたーん、どぅぐどぅぐどぅん
でもでもだって、けどしたがァって
どぅどぅどぅ、どぅどぅどぅ、どぅどぅどーうせ
だから、だから、だからッたッたッ
とんとんたーん、つかつかしゃーん
きときとったい、ぴとぴっちゃん
なまら、なまら、なまらほんでのぉ
けどけれどBut、けったいなだって
ずんずんぱァん、ぱらッぱッぱぱァん
ずるずらあかん、ぱらッぱッぱやんす
しゃっこ

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【詩】いきるという愚かさをたのしみましょう

たとえばの話なんだけど
排泄するために食べるラーメンでもおいしい 老いのために鍛える筋肉もすごい
死ぬために塗られるマニキュアもぴかぴかする
キリンが電車の吊り革に頭をぶつけるから 屋外に住みはじめた パンダが
アイドルになるために 動物園に住みはじめた 鳥から
いんすぴれいしょんを受けて 飛べるようになるのがかちじゃない 脇を締めて肘を腰に付けて
跳びながら両手首をばたばたさせる
たとえばの話な

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