マガジンのカバー画像

閑文字

207
詩をまとめています。楽しんでいただけたらうれしいです。
運営しているクリエイター

2022年10月の記事一覧

【詩】夕陽の赤

愛ということばでまとまっている感情群があることを知った。信頼とか尊敬とか性欲とか、感情に
なまえを付けると崩れおちてしまうはしっこの部分を、受け入れるためにある、海みたいに大きくて空みたいにからっぽなことばが愛なんだって
理解った。
愛しています、って、
愛していますの中身を考えないまま言っちゃうから、愛していますがわからなくなって、自分への愛していますもわからなくなって、
そうなったとき、ひとは

もっとみる

【詩】解放

うたはかがやくために置かれた。岩に刺さったでんせつのつるぎみたいにかがやいていた。
月の上から地球をながめるみたいにゆぶねにつかっていたとき、蒸気のなかにうたがあった。羽毛布団が覆い被さっていたとき、涙のなかにうたがあった。都会に咀嚼されるとき、喧噪のなかにもうたがあった。崩れた壁の下敷きになっていると、らいめいみたいに助けてくれた。
だからつるぎを握った。すくわれたからすくいたいと思った、は褒め

もっとみる

【詩】mujun

みんなの「好き」って言葉が最優秀賞受賞者におくられる花束に見えて、
じぶんの「好き」って言葉がいちりんのシロツメクサに見える。しゃがみこんでしあわせを探していいのは何歳までなんだろう。しゃべらない花に恋とか愛とかかたらせるってことは、
自分とおなじ脳みそをもつ人がほしいんだろうな。
花はぜんぶみどりにささえられてる。みどりは生命力をかんじてしまうあおい匂いがする。
勝手にかんじられたらきいろい根っ

もっとみる

【詩】ヒガンバナ

ヒガンバナ程の自己主張ができれば、きみは幸せになれる。くさり落ちる前のみどりに、ばくはつを控えたみどりに、あおときいろのみどりに、空とレモンのみどりに、とすんと落ちてきた、鬼が女の子投げでほうり込んだじごくの種火。燻りはじめた斜陽。
 
自然から幸せをかんじている人へ。自然はいやそうとも、たのしませようともしていません。自然のきょうふを忘れない、というのも自分勝手。あこがれの芸人やミュージシャンや

もっとみる

【詩】全ての道はろうかに通ず

足の甲のうすよごれたゴムの感触より、光の上にプラスチックの層がある
ろうかにひびく音のほうがきもちわるい。
くらいのに潔癖感があって、
丘みたいにぼこっぼこっとしてるのにまばゆくて、だれでも受け入れるのに、みんなを拒絶しているみたいだった。
嘘をつきながら生きるのを強制される時代みたいに、消火栓の表示灯をたよりにすすむ箱。
二階の公は雑巾がけをしている。端から丁寧に。なぜか綿になる塵を、おしりを高

もっとみる

【詩】ごめんね、地球

一日の中でこの時間だけ正面からきみの顔を見ないといけない。顔の半分はあかくなってもう半分の陰が濃くなって、普段内側に押し込めている、スーパーでいきなり叫んで撒き散らしてしまいたくなる感情がとろけ出ているようで、ただうつくしかった。
時間が溶ける夢に酔う前のような、
風に吹かれる金木犀に呑まれるような
心地がした。
きみは僕の方を見てるけど、僕の光と結び合わせることはしない目をしながら、夕焼のあかに

もっとみる

【詩】かみのけ

ラジオに合わせて落ちる髪の毛。山下達郎に合わせて降る雪みたいだった。美容室はいつもふゆ。
窓の外には夏の光。こおりが溶けるようにしずかだった。
耳元でちゃきちゃき動くうすいさつい。耳が切り落とされないか不安になる。
でも宇宙電波を拾うためのアンテナくらいでかくなった耳は、もっとちいさくていい。けどいたいのヤだな。
足元に過去が溜まって、くろいみずたまりができた。じぶんだったものが落ちているというよ

もっとみる

【詩】苦いあじ

ようやく豆を見つけた
ポン酢とめんつゆの陰にかくれてた
ミルの感触と香りは好きだけど
粉々に砕く音は好きじゃない
へんなタイミングで途切れる鼻歌もないし
ライムイエローのケトル
モノトーンな人生への挿し色
ふくれた粉はマフィンみたいだな
とってもあまいやつ
朝のコーヒー
臆病なぼくじゃ、ちょっと苦いや

【詩】ぜんせん

涙に意味をあたえるのはやめませんか。くずれおちる世界も、大ホールのクラッシュ・シンバルも、サークルの姫も、涙には溶けません。夜を搾りだすみたいに、目から流れる水にすぎません。
勃起に意味をあたえるのはやめませんか。建国の英雄の像みたいなものじゃなくて、熱の風が吹き溜まっているだけです。
人間に意味をあたえるのはやめませんか。夜に起きていたり肺呼吸で海にでたりするってことは、そんなにすごい生物ではあ

もっとみる

【詩】りこーだー

「私には、人を好きになる内臓がついてないって、言われたことがあるんだ。」
あんしんした。欠落ではなく、空虚だといっていたから。秋の空みたいな水なき躰からは、
澄んだ高い音がするだろう。無垢で、現実感がなくて、現実的でないからばかにされる音。
げんじつみろよってね。
何日か誰ともしゃべっていないことに気づいたら、リコーダーを思いッきり吹くといい。
ほヒィーッ、て音が心の調子とよくあうだろう。心配しな

もっとみる