【詩】りこーだー
「私には、人を好きになる内臓がついてないって、言われたことがあるんだ。」
あんしんした。欠落ではなく、空虚だといっていたから。秋の空みたいな水なき躰からは、
澄んだ高い音がするだろう。無垢で、現実感がなくて、現実的でないからばかにされる音。
げんじつみろよってね。
何日か誰ともしゃべっていないことに気づいたら、リコーダーを思いッきり吹くといい。
ほヒィーッ、て音が心の調子とよくあうだろう。心配しなくていいよ。隣のへやの人は
赤道直下の密林にいる、オレンジの翼とどデカイ嘴をもった鳥だと勘違いしてくれる。その鳥は夕陽のようにうつくしくて、まぬけで、たぶん凛々しい。
金木犀の香りみたいに天啓が下りる。つかいは屋根のアンテナの先にとまって、黒い風見鶏になる。
呵嗚という音。教会の鐘の音くらいかわいているのに、この世の終末を予言しているような顫えがあった。
私一人。奏上します。この時間になると冷えますね。