【詩】解放

うたはかがやくために置かれた。岩に刺さったでんせつのつるぎみたいにかがやいていた。
月の上から地球をながめるみたいにゆぶねにつかっていたとき、蒸気のなかにうたがあった。羽毛布団が覆い被さっていたとき、涙のなかにうたがあった。都会に咀嚼されるとき、喧噪のなかにもうたがあった。崩れた壁の下敷きになっていると、らいめいみたいに助けてくれた。
だからつるぎを握った。すくわれたからすくいたいと思った、は褒められるたびに真実になった。
つるぎをふるったら、地面とか川とか花畑とかがこわれた。菜の花がガタガタの前髪みたいになった。顔は見せた方がいいとか前を見やすい方がいいとかだと思ってたら、それは光から遠ざかるためのものだった。かがやきから離れることで、ずっとかがやきを見るためのものだった。
うたはかがやくために置かれた。でんせつのつるぎは、抜かれるために置かれたんじゃなくて、置かれただけだった。

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