氷堂出雲

プロフィールページをご覧ください。 ・ソニーミュージックのドラマ原案コンテストにてグランプリ受賞。ドラマ化。 ・第20回Yomeba!で優秀作 ・エブリスタ超・妄想コンテスト年間選出数11位(2021年)

氷堂出雲

プロフィールページをご覧ください。 ・ソニーミュージックのドラマ原案コンテストにてグランプリ受賞。ドラマ化。 ・第20回Yomeba!で優秀作 ・エブリスタ超・妄想コンテスト年間選出数11位(2021年)

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プロフィール

自己紹介 noteでは、毎週ショートショートnote、410字の物語を主に書いています。孫のことをよく書きますが、実はまだまだ若いのです。 執筆について 2020年から執筆活動を始めました。叙述トリック、コージーミステリー、どんでん返しが好きで物書きをしています。最後にあっ!と思わせる話を目指しています。 【出版物】 2024年4月発行 ピカソプロジェクト童話集 くつをはいてどこまでも 収録作品 「クマの靴屋のへんな靴」 発行: 合同会社エデュセンス 2024年1

    • 不眠症浮袋、毎週ショートショートnote、410字

      私と同じ研究棟で働く林を待っていた。 ドアのノックの音がして、不眠症で悩む林が入ってくる。 「これか?俺のために開発してくれたの」 「そうだ。ここに横になって、ヘルメットをかぶってくれ。脳波に直接作用させて眠らせる」 「浮袋は?」 「なんの話だ?」 「魚は深度を体の中の浮袋で調整する。眠りの深度は?」 「夢の話の重さで決まる」 「そっか。じゃあ、やってくれ」 俺はスイッチを入れた。 林は、すぐに寝息を立て始めた。 どんな夢を見ているのか気になり、モニターのスイッチを入れた

      • 無人島生活福袋、毎週ショートショートnote、410字

        会社の忘年会 幹事はビンゴゲームを始めた。 6番目に当たった。 「ビンゴ!」と叫んで、前に出る。商品の受け渡しを新入社員の木下若葉さんがやっている。人事部で採用か不採用かで揉めた子だ。 「これです」 満面の笑顔の木下さんから差し出されたものを受け取るために手を出す。 「うわ、バカ!他のに変えろ」 男性社員が割って入る。 「でも、先輩、6番はこれですよ」 間違っているのは先輩です、私は間違っていませんと言わんばかりに商品をさらに私の方へと差し出した。 その男性社員が司会

        • 霧の朝から始まる物語、シロクマ文芸部

          #シロクマ文芸部 #霧の朝 #霧の朝から始まる物語 ーーーー 霧の朝、私は、死んだ。 確かに死んでいるのに、意識は不思議なほど鮮明で、胸には後悔だけが残っている。思い返せば、あの霧の朝の選択が私の運命を決めたのだ。もしあの日、森で迷ったあの瞬間に正しい道を選んでいれば、いや、むしろ、霧が晴れるまでその場所に留まっていれば――。そう考えていたら、私は幽霊の姿で過去の自分が迷っていた時間へと舞い戻った。選択をやり直せるかもしれないと、私は歓喜に震えた。 前の自分が森の中で不

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        マガジン

        • 氷堂出雲傑作集 ショートショートnote杯
          21本
        • 91-100ショートショートnote杯まとめ
          3本
        • 81-90ショートショートnote杯まとめ
          10本
        • 1-10ショートショートnote杯まとめ
          10本
        • 11-20ショートショートnote杯まとめ
          10本
        • 21-30ショートショートnote杯まとめ
          10本

        記事

          長距離恋愛販売中、毎週ショートショートnote、410字

          あちこちのウェブサイトにある「長距離恋愛販売中」というバナーのリンク先は、流行りの長距離恋愛アプリのダウンロードページ。 リアルで会うことを想定した出会い系アプリではなく、会わないことを前提としたアプリ。 疑似恋愛で、相手は本物ではない。自称・女子高生がお爺さんなんて当たり前のこと。 それをアプリの紹介文に書いている。それでも、ハマってしまう奴がいる。 「そう割り切って始めたつもりだったのに、俺は本気になってしまった」 そう、俺に告白したのは、友人の山田だった。 「

          長距離恋愛販売中、毎週ショートショートnote、410字

          「紅葉から」から始まる物語、シロクマ文芸部

          「紅葉からすな……あと、なんでしたっけ? お父さん」 庭の紅葉を見て、僕はふと幼い頃の記憶を呼び起こしていた。家訓として厳しく覚えさせられた言葉が、頭の片隅でこだましている。 「紅葉枯らすな、我が家の守り神がそこに眠る」 父の声が、今でも耳元で囁くように聞こえる。 それにもかかわらず、僕はこの家を遠く離れ、大学を出たあと、そのまま教鞭を執るようになった。考古学の教授となり、都会の喧騒の中で過ごす日々が続いた。実家に戻ることはほとんどなく、年老いた両親だけが住み続けていた

          「紅葉から」から始まる物語、シロクマ文芸部

          小説のいいところ(例えばこんな小説)

           マンションの玄関が開く音がして、人の気配がする。キッチンを抜け、こちらに近づく足音を聞き、リビングのソファーに座っていた俺は、その場に立ち上がった。  キッチンとリビングを隔てるドアが開き、見慣れた女が立っていた。俺を見つけた麻美は、その場でにこりと笑った。  麻美は、一目散に俺のところに飛んできて俺を抱きしめる。  歳は今年24。目鼻立ちが整い、テレビに出てくる芸能人にも引けを取らないほど美しい麻美。しかし、麻美は芸能人には向いていない。麻美は、無口なのだ。だから、

          小説のいいところ(例えばこんな小説)

          下剋上、ボケ学会

          #ボケ学会 #下剋上 ミッション 下剋上の話で笑いを取れ ーーーー 今日、私は、この家に買ってこられた。人間が一生懸命に私を組み立てる。 そして、私は完成した。部屋の隅に鎮座した私は天井にもつくほど豪華で背が高かった。 この部屋の中では、何者にも負けない豪華さと存在感を誇っていた。だというのに、あんなものに負けてしまうとは、夢にも思わなかった。 弱者が……たかが、私の付属品が……、私にとって使い捨てのしもべが、私のような絶対的強者に勝つことを下剋上というらしい。 これ

          下剋上、ボケ学会

          キンモクセイ盗賊団の池、毎週ショートショートnote、408字

          「また盗まれた」 村人が騒いでいた。盗賊は、犯行後に必ずキンモクセイの香りを残し、その姿を見た者はいない。 若い刑事が匂いを追って古びた池に行き着いた。池の周りにはキンモクセイの花が咲き誇っていた。 目を凝らすと、池の底に、金貨や宝石など、村から盗まれたものがあった。 「見つけてしまったか」 池の中に淡い影が浮かんだ。 「私はこの池の精霊だ。ずっと孤独で、人と友達になりたかった。キンモクセイの精霊たちが村に出かける度に、後をついて行った。人間に愛されるもの、欲される

          キンモクセイ盗賊団の池、毎週ショートショートnote、408字

          沈む寺、毎週ショートショートnote、410字

          雲の上に空中寺院があった。村人たちは、その寺院に向かって祈りを捧げた。 ある日のこと、若い僧侶が空中寺院に選ばれた。僧侶の体は宙に浮き、雲の切れ間に姿を消した。寺院の門にいた老人が手を挙げると、寺院は二つに分かれた。 「それはお前の寺だ」 そう言うと老人と老人の寺院は、風に漂いながら消えていった。 僧侶は、村人のために念仏を唱え続けた。 ある日、寺の奥の部屋に小さな池を見つけた。僧侶が覗き込むと、そこに映るのは遥か下の彼の故郷で、村人たちが雨乞いをする姿が映っていた。僧侶

          沈む寺、毎週ショートショートnote、410字

          秋と本から始まる物語、シロクマ文芸部

          #シロクマ文芸部 #秋の本 #秋と本から始まる物語 秋と本……その言葉の響きに、深く冷えた空気と静寂の中に佇む図書館での光景が浮かぶ。 木々が枯れ葉の衣をまとった、赤や黄色、焦げ茶の色彩が、本棚の本の背表紙のように積み重なっている。 秋の午後、私は図書館で借りた一冊の本を手に、公園の木のベンチに腰掛けていた。時が止まったように、誰もいない園内には、風に舞う枯れ葉の音だけが微かに響いていた。私は本を開いたまま、その空間に溶け込むように微動だにせず、ただ活字を目で追い続けて

          秋と本から始まる物語、シロクマ文芸部

          パラレルワールド、ボケ学会

          #ボケ学会 #パラレルワールド 僕は引っ越した。 新しい部屋は、賃貸マンションの2DK。玄関を入るとダイニングキッチンがあり、その奥にドアが二つ。左をリビングに、右を寝室にすることにした。 この物件を不動産屋で提示されたとき、隣にはおっさんが一人、同じく検討していた。僕の担当が言った。「今、隣の男性も同じ物件で悩んでいます。早い者勝ちですよ」 決断できないまま、他にも良い部屋があるのではと考え込んでいた。ちらりと隣を見ると、おっさんも同じように悩んでいる。負けるわけには

          パラレルワールド、ボケ学会

          おいしいお店(島根県松江駅)

          #おいしいお店  昼間にランチを提供する居酒屋は数多い。しかし、昼のランチタイムに酒、それも地酒を出す店となると、ぐっと数が限られる。  今回、客人を島根に迎え、地酒を楽しむ会を設けるために、下調べを兼ねて昼の居酒屋巡りを決行した。名目は調査だが、正直なところ飲み歩きたいだけである(笑)。  まずは、ランチ営業をしている店に「昼間から地酒が飲めるか」電話で問い合わせた。結果は予想通り、ほとんどの店が「ランチタイムにアルコールは出さない」とのこと。ランチメニューはどこも千

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          お姫様らっこ、毎週ショートショートnote

          村の大通り 一人のお侍さんが小走りでやってきて、遊んでいた子どもに語り掛けた。 「そこの子ども、今から、さる高貴なお方が駕籠で通過される」 「誰なのら?」 「お前がそんなことを知らなくてもよい。くれぐれも粗相のないように頭を下げなさい」 「わかったのら。こうやって頭を下げるのら」 「誰が立ったまま頭を下げろといった。土下座をするのじゃ」 「土下座って知らないけど、どうやってするのら?」 お侍さんは、よく見ておけと言いながら道端で土下座をした。それを見た子どもが言った。 「うむ

          お姫様らっこ、毎週ショートショートnote

          この中にお殿様はいらっしゃいますか、毎週ショートショートnote、410字

          街道で、駕籠かきと護衛の武士に、俺は声を張り上げた。 「この中にお殿様がいるのか?」 「貴様、何者だ? 無礼であるぞ!」 俺は笠をゆっくりと持ち上げ、顔を晒した。家来たちは驚愕の表情を浮かべた。 「お、お殿様…」 今の俺の姿は、まさしくお殿様そのものだった。俺は商人として巨万の富を築き上げたが、どれだけ財を積んでも、所詮は商人。権力を持つには及ばない。そこで、南蛮人の呪術師に全財産をはたき、殿様の姿そのものに変えてもらったのだ。 「余が本物の殿様だ。その駕籠の中に

          この中にお殿様はいらっしゃいますか、毎週ショートショートnote、410字

          見えないお化け、ハロウィンノベルパーティー2024最終話

          #ハロウィンノベルパーティー2024 最終日のお題「ハロウィン」は、前作において「可愛いお化け+ハロウィン」で書きました。ですので、いよいよ、これがラストです!ラストなので、いつもより千文字多いです。よろしくお願いします。 #見えないお化け ーーーー 見えないお化けの名前はソウタ。 ずっと昔から人間の世界にいたが、誰にも気づかれずに過ごしてきた。 ソウタは小さな町の片隅、古い図書館の影の中に住んでいた。見えないということは、いつも孤独で、誰かに話しかけることもできなかっ

          見えないお化け、ハロウィンノベルパーティー2024最終話