キンモクセイ盗賊団の池、毎週ショートショートnote、408字
「また盗まれた」
村人が騒いでいた。盗賊は、犯行後に必ずキンモクセイの香りを残し、その姿を見た者はいない。
若い刑事が匂いを追って古びた池に行き着いた。池の周りにはキンモクセイの花が咲き誇っていた。
目を凝らすと、池の底に、金貨や宝石など、村から盗まれたものがあった。
「見つけてしまったか」
池の中に淡い影が浮かんだ。
「私はこの池の精霊だ。ずっと孤独で、人と友達になりたかった。キンモクセイの精霊たちが村に出かける度に、後をついて行った。人間に愛されるもの、欲されるもの、執着されるものを集めることで、私は人間に近づけるんじゃないかと思ったんだ」
「盗みはいけない」
精霊は頷き、盗品を池の周りに並べ始めた。
「持ち主、一人ひとりが取りに来てくれないだろうか?そうすれば、人と近づける。友達になれるのかもしれない」
「盗賊と友達になりたいものはいない。私が休みの時に話しに来てやろう。人間と友達になるのは、もっと人間を知ってからだ」
(408字)
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