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助手席の鬼(409字)ショートショートnote杯
太郎は車を運転していた。
助手席には、虎柄パンツ一枚の人間なら5、6歳くらいの大きさの小鬼が座っている。
自分がなぜ車を運転していて、なぜ、助手席に鬼がいるのか分からなかった。
あっ、検問だ。
「すみません。免許証おねが……あれ?助手席のお子さん、チャイルドシートしてませんね。何歳ですか?」
「オレ、168歳」
「冗談は困りますねー。違反です」
「いや、あの鬼なんですよ。みてください」
「あ
誰も知らない履歴書(桃太郎の履歴書ですね。自作「朝の鬼」の続編410文字)ショートショートnote杯
鬼ヶ島から一艘の船が見えた。
「おい、見てみろよ。俺たちの要塞にたった一人で近づいてくるバカがいる。かわいそうだが捻り潰してやろう。ペットの犬と猿と雉と一緒に。門を開けろ!お前ら手を出すなよ。俺一人で十分だ」
鬼ヶ島の鬼城の門が開け放たれ、屈強な鬼が仁王立ち。
上陸した子供は刀を持ち門の前で待ち構える鬼に向かって一直線。
待ち構えていた鬼は、その姿を見て驚いた。鬼が誰から教えられるわけでもな
朝の鬼(407文字)ショートショートnote杯
残念なことがありました。
詳細は最後に
ーーー!!
ある朝の鬼ヶ島。
鬼たちは、生まれて3か月の赤ん坊を取り囲み、話をしていた。
「そろそろ、本当に結論を出さないと」
「そうじゃのう。この子の幸せを第一に考えないといけないからのう」
鬼たちの目の前には、ツノのない鬼の赤ん坊が寝ていた。鬼は生まれながらに頭にツノがあるのが当たり前だった。
「人間に拾ってもらって人間として育ててもらうのはどう
夢のロボット(409字)ショートショートnote杯
夢のロボットが誕生した。自己学習する能力があり、感情と意識を持ったロボット。
もはや、ロボットは、人間にとって都合のいい奴隷ではなくなった。ロボットは集団で人権ならぬロボット権を主張し、法改正を求めた。政府も、もはや人間と同等の存在に対して、ロボット権を認めざるを得なかった。
そこで、問題になったのは、ロボットの死であり、相続であった。ロボットの中で、人間の子を養子(まだ、戸籍はなく、内縁だが
しゃべる宝石(409文字)ショートショートnote杯
今日買った小さなダイヤのネックレス。自宅の洗面台の電灯の光を浴びて鏡の中でキラキラ光っている。
明日は、マッチングアプリで知り合った人と初デート。いつも緊張してうまく話ができない。
「明日は、これをつけて頑張ろう」
自分に言い聞かせる。
「はい、頑張りましょう」
私の声がした。私そっくりの声が返事をした。キョロキョロする。
「私は、宝石」
「宝石?」
喋る宝石だった。
「明日は任せ
毒舌神様(406文字)ショートショートnote杯
彼氏いない歴28年で28歳。今日は、縁結びの神様に良縁を願うためにやってきた。
ご縁がありますようにという願掛け語呂合わせで、財布からピカピカの5円玉を一枚取り出して賽銭箱へ投げ入れる。
目を閉じて、お願いし、ゆっくり目を開けると目の前に中年男性が立っている。
「近い! 近過ぎ!」
そう言って三歩下がる。
「近いって、そりゃないやろ。お前がオレに会いにきたんやろ」
「えっ、ということは、
違法のネコ(410文字)ショートショートnote杯
近年、覚醒剤や麻薬で多幸感を得るように、なんと猫を吸う行為が蔓延した。
猫吸いとは、飼い主が猫の体に顔をうずめ、猫の臭いを嗅ぎながら、スーハ―スーハーと息を吸ったり吐いたりすることだ。
普通はお腹だが、背中や顔、肉球、お尻まで嗅いでしまう乱用者までいることがわかった。
この行為には常習性があり、常習者で逮捕されると猫を飼うことはできない上、猫から半径百メートル近づけない。
一方で、正常な人
伝説の笛「409文字)ショートショートnote杯
田舎のじいちゃんの家に行った。
「仏壇の引き出しって、やっぱり、へそくりが入ってるの?」
「ああ、見てみるか?」
桐箱を取り出し、じいちゃんがふたをとる。
紙と笛が入っていた。
「これは、伝説の笛なり。この笛を吹けば◯が踊り出す」と書いてあるらしい。
丸のところに穴が空いている。
僕は、笛を取り出しその横笛を吹いた。
「お、お前、音を出せるのか?」
じいちゃんが尻餅をついて後ずさ
穴の中の自己紹介(408文字)ショートショートnote杯
「おーい、助けてくれ」
その声の方に行くと、地面に穴があり、その中から声がする。
「誰かいますか?」
「助けてください」
「わかりました。ちょうどロープも持っています。降ろしますので、上がってきてください。
じゃあ、ロープ持ちましたね。上がって」
「うわー」
「なんで、あなたまで穴の中に落ちてるんですか?ロープの端を木にしばったり、岩にしばったりしなかったんですか?」
「すみません。私、三木則
古いメガネ(409文字)ショートショートnote杯
古いメガネを拾った。
その場でかけてみたら、一瞬目眩がした。気がつけば、やたらと地面が近い。自分の手を前に伸ばすと、それは手ではなく羽だった。
鳥になったのだ。
あまりにトッピなことが起きるとかえって冷静だった。
羽ばたいてみた。空を飛べた。
マンションのベランダの手すりにとまりガラス戸に顔を写してみる。メガネフクロウだ。
学校まで一直線! すごい時短だ。また、自宅の方へひとっ飛び。
あ、