記事一覧
数学ギョウザ(408文字)ショートショートnote杯
小坊主が、和尚さんに聞いた。
「和尚さん、帰る途中に中華料理店があって、数学ぎょうざ始めましたって書いてあったのですが、どんなぎょうざなのでしょうか?」
「店主がおっちょこちょいで、漢字を間違えたのだろう。
素・有学・ぎょうざと書きたかったのだろう。
素とは、ただの取るに足らないという意味だ。素うどんのすだ。
仏教の「無学」は「学び尽くして、もはや学ぶことがない」という意味。
学ぶべき
コロコロ変わる名探偵(409文字)ショートショートnote杯
「ついに完成したぞ。名探偵ロボットだ」
「博士、おめでとうございます。私も弟子としてうれしいです」
博士と弟子は手を取り合って喜んだ。
「ところで、博士、これはどんなロボットなのですか?」
「今まで出版された推理小説や実際に起きた知能犯による事件などのデータをインプットしてあるのじゃ。また、その時の状況に応じて形や大きさを自由に変化できるのじゃ。ネズミになったり、蝶々になったりクマになったり
空飛ぶストレート(ラブストーリー410文字)ショートショートnote杯
純一は、自宅の庭にテーブルと椅子を置き、お洒落なオープンテラス席をつくった。
恋人の凛を誘って紅茶を飲んでいる。
テラスで優雅にお茶なんて、まるで海外セレブのようだと凛の声が弾む。
「トランプをしよう」
純一は、ポーカーで、もし自分が勝ったら、今日こそ告白しようと思っていた。
純一の手札は、ストレートだった。純一は、ごくりと唾を飲んだ。
凛の手札は、なんと、ロイヤルストレートフラッシュだった。こ
アナログバイリンガル(409文字)ショートショートnote杯
「デジタルバイリンガルよりアナログバイリンガルだよね」
私がそういうと、夫が反論する。
「いやデジタルだろ。要するに自動翻訳機がデジタルバイリンガルで、昔ながらの通訳がアナログバイリンガルってことだろ」
「そうよ。人間だとこちらの表情まで読んで訳してくれるから間違いが少ないと思うの」
「じゃあ、そうしろよ」
「冷たいのね。そうするわよ」
日曜日、ロシア人との商談に通訳紹介センターからなぜ
違法の冷蔵庫(409文字)ショートショートnote杯
冷蔵庫は、どんどん改良され進化した。
そして、ついにできた。魔法の冷凍冷蔵庫。
皆、買い物に行く時間がないので大量に冷蔵庫に買い溜めしたい。なのに、いつもいっぱいで困る。
もう一台といっても置き場所がない。
魔法の冷蔵庫とは、圧縮復元機能のついた冷凍冷蔵庫だ。
冷蔵庫に物を入れたければ、冷蔵か冷凍かと名前を入力する。
冷蔵庫についているヘアドライヤーのようなものを向けると一瞬のうちに冷蔵
株式会社リストラ(410文字)ショートショートnote杯
「御社のリストラ、わが株式会社リストラが完全サポートさせていただきます。よろしくお願いします」
私は丁重に受話器を置いた。振り返り、課長に報告する。
「今回は、3000人規模のリストラです」
「そうか、いつものようにやってくれ。うちのグループ会社でぼろ儲けだ」
「そうですね。株式会社人材育成がリストラされた人の良いところを秘密兵器・才能ファインダーで見つけて、それを伸ばす」
「そうさ、ど
1億円の低カロリー(318文字)ショートショートnote杯
日本のトップ女優を自負する女がいた。
歳をとるにつれ、太りやすい体質に変わってきたことが目下の悩みだった。
「3年間で1億円のご契約で、当社が開発した低カロリー弁当を朝昼晩の3食お届けします。健康を保ち、体型を保つのに必要なだけのカロリーなのに、お腹はいっぱいになります。
いかがでしょうか」
「じゃあ、お願いするわ」
効果は絶大だった。太ることはなく、無理なダイエットのような健康被害もない
しゃべるピアノ(401文字)ショートショートnote杯
「んー、もう無茶苦茶。スローテンポのところは、まだ、なんとか音楽っぽいけどアップテンポのところは、もうただの雑音。
いったい、どこが天才なの?」
「うるさい! お前は黙って、音を出せ!」
半袖半ズボンの10歳くらいの男の子。
全く困ったものだ。そう、私は、ピアノ。世にも珍しいしゃべるピアノ。
ご主人様は、プロのピアニスト。天才だと言って、身寄りのないこの子を引き取った。天邪鬼な子だか
最後の結婚式(181文字)ショートショートnote杯
もう何回目の結婚式だろう。回数を数えるのもおっくうになってきた。
これを最後にしようと思っている。
好きなのに、やはり倦怠期が来る。倦怠期のたびに離婚をする。
短気なのだろうか、今度は、もう少し我慢しようと思う。
キモチも新たに過去のことは忘れる約束。
これは最後の結婚式。
そして今日も、もう何回目かで、最初の甘い言葉をいつもの彼女にささやく。
離婚と再婚を繰り返す僕たち。
助手席ののおと(391文字)ショートショートnote杯
助手席には、僕の未来が浮き出るのおとがある。お爺ちゃんの遺品の中にあった魔法のようなノート。
表紙に自分の名前を書き込むと、毎年元旦にその年、自分に起きる出来事が日記のように浮き出るのだ。
ただし、わずか一日だけ表示され次の日には白紙になる。
僕は車で急ぐ。彼女のアパートに。だって、書いてあったんだ。1月2日、彼女から恋人という関係はやめようのメッセージがスマホに届いたって。
もう間に合わ