マガジンのカバー画像

創作と夢

29
思い付いたストーリーや夢の話です
運営しているクリエイター

#エッセイ

螺旋蝶

螺旋蝶

「らせん階段にはちょうちょが住んでいるんだ」
遊んでいる時に幼馴染が言ったその言葉をどうしてか忘れず、たまに思い出す

優しい風の吹く春の日
部屋を抜けて
非常口のマークへ向かう

僕は長い螺旋(らせん)階段を降りていく

ここにエレベーターはなく
皆は普通の階段を使う

少し降りると目が回って来て
立ち止まり
深呼吸をする

僕は上から下までスーッと格子が伸びた
鳥カゴのようなこのアパートの螺旋

もっとみる

話『癒しもどかし、先輩』

僕に仕事を教えてくれている先輩は
とてもクールで凪のような人

ヒールのある靴を履くと背の差は5センチくらいだから女性にしては背が高い方のかも知れない

綺麗なボブヘアーがサラリと風に靡くと
とても良い香りがした

一見サバサバしているように感じるが、
とても穏やかであたたかい

先輩が
「コンビニに寄ってもらってもいいかな」
と言った

いつも持ってきているタンブラーを忘れてしまったらしい

もっとみる

夢日記『拳銃』

拳銃で頭を打って死のうとしたのは
これで2回目だった

一発撃ち込んで死ねなかったので
二発目を撃ったらしい
記憶があるのはその二発目を撃った直後からだった

頭に二発も撃ち込んだのに
わたしは死んでいなかった

ただ、砕かれた頭蓋骨の中は
温かいもので満ちていていつもとは違う感覚だった

少し経って
穴の空いた所から真っ赤な血液がツーっと垂れた

拳銃なんて実際にはメディアでしか見たことがないか

もっとみる
物語『猫とネズミと僕』

物語『猫とネズミと僕』

とうとうあの野良猫は
頭がおかしくなってしまったらしい
ザーザーと雨が降っている

その野良猫とは
向かいの家の軒下に住み着いている
灰色の猫だ

これからご飯をくれるおばあさんの所へでも
行くのだろう
軒下からスルリと出てきて、北へと向かった
雨なのに珍しい

猫は雨の中、逆立ちをして歩いていった
初めは少しヨタついたものの、それからは何とも器用に進んでいった

僕は気になって、家から頭を出し頭

もっとみる
穏やかで健やかで永遠

穏やかで健やかで永遠

かなり久しぶりに
ぐっすりと寝た気がする

部屋の中に穏やかな風が流れる

ゆっくりと目を開けた
優しい陽の光を感じたからだ

とても長い間
深い眠りについていたとは思えないくらいに
すっと身体を起こすことが出来た
どこもつらいところはなく
健やかだった

家の天井には大きな穴が空いていた
屋根が崩れ落ちたようだ

不思議と僕には被害がなく
崩れた屋根もどこへ行ったのか見当たらなかった

その抜け

もっとみる
短編『オリバさんの庭』

短編『オリバさんの庭』

ショッピングモールの角にある小さなレストランは祖母の友人であるオリバさんのお店で
3人しか並べないほどの小さなキッチンがある

他の店の外観はショッピングモールにふさわしいものばかりだったのにそのレストランだけは、そこに似合わず森の奥にひっそりとありそうなもので、何度行っても心が躍った

小さな頃からよく祖母に連れられて来ていて、
足を運ぶたびに壁にはった蔦や植木が成長した姿をみれる事も楽しみにし

もっとみる