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螺旋蝶

「らせん階段にはちょうちょが住んでいるんだ」
遊んでいる時に幼馴染が言ったその言葉をどうしてか忘れず、たまに思い出す

優しい風の吹く春の日
部屋を抜けて
非常口のマークへ向かう

僕は長い螺旋(らせん)階段を降りていく

ここにエレベーターはなく
皆は普通の階段を使う

少し降りると目が回って来て
立ち止まり
深呼吸をする

僕は上から下までスーッと格子が伸びた
鳥カゴのようなこのアパートの螺旋階段だ好きだった

いつも開放されているので
わざとこっちを降りている

最近よく見かけていたあの蝶を
今日はまだ見かけない

少しゆっくり降りてみる

真っ白に塗られた螺旋階段に
紺色の蝶が死んでいた

この蝶は螺旋階段を飛んでも
目は回さなかったはずだ

蝶を拾い上げると鱗粉がキラキラと舞った

やっと降りた地面はとても不安定に感じた

蝶の殆どは
飛べるようになってから
2週間ほどしか生きられないらしい

花壇のそばを歩くと
いつもよりたくさんの虫たちが見えた

蝶は生涯を合わせても数ヶ月の命だそうだ

螺旋階段で死んだ蝶を
一番綺麗な花の隣にそっと埋めた

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