話『癒しもどかし、先輩』

僕に仕事を教えてくれている先輩は
とてもクールで凪のような人

ヒールのある靴を履くと背の差は5センチくらいだから女性にしては背が高い方のかも知れない

綺麗なボブヘアーがサラリと風に靡くと
とても良い香りがした

一見サバサバしているように感じるが、
とても穏やかであたたかい

先輩が
「コンビニに寄ってもらってもいいかな」
と言った

いつも持ってきているタンブラーを忘れてしまったらしい

一番近くのコンビニに車を止め、
僕は降りずに車で待っていた

先輩は基本なんでも決断がが早いのに
今日は珍しくゆっくりだった

自動ドアを眺めている内に先輩がコンビニから出てきたので、慌てて手元の資料に視線を戻した

助手席に乗り込んだ先輩が
「ねぇ、これ食べよ」と言って
GODIVAと書いてあるお洒落な白い缶を僕に見せた

4粒入りでそれぞれ、とてもシンプル且つ美しい見た目だった

先輩が甘いものを食べているところは殆ど見た事がなかったけれど、食べたくなる時もあるのかな、と思うとなんだか嬉しかった

「え〜GODIVAですよ??
 先輩が食べてください!」

「あれごめん、嫌いだっけ?」

「あっいや!チョコレート大好きです
 やっぱいただきます」

それぞれ2粒ずつ食べた
今まで食べたチョコレートとは比べ物にならない美味しさだった

「ん!美味し〜」
そう言った先輩の表情は視界の端でキラキラと輝いていたように思う

僕はミルクチョコレートとストロベリーで、
先輩はダークチョコレートとピスタチオだった

「僕が食べた方もめっちゃ美味しかったです」

先輩はニコッと微笑んだ

しばらくの間、先輩は買った飲み物に手をつけなかったので、チョコレートが本当に美味しかったのだろうと思い、安心した

一通りの事を済ませて会社に戻ると、
ギャルの同僚が
「義理〜」
と言ってチョコレート味のパウンドケーキをくれた

「そっか、今日バレンタインでしたね
 義理〜ありがとうございます!」

そう言いながら僕は
先輩と食べたチョコの事を考えていた

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