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2020年に詠んだ短歌まとめ

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(二年目)
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#短歌連作

短歌連作「蝋燭は等しく壕を照らすのに」 10首

短歌連作「蝋燭は等しく壕を照らすのに」 10首

孤児たちは幾度も噴かすエンジンを叫びのような夜の疾走

テーブルに強く下ろした中ジョッキ彼はじぶんを見つけて欲しい

シナプスの先まで満ちた絶望が目を曇らせる 霧を吐かせる

フレディの夢に錯乱するひとがメトロで叫ぶ自傷みたいに

断崖の羊らの見る白昼夢もくもくもくと角は伸びゆく

蝋燭は等しく壕を照らすのに影を見つめて描く肖像

恥部というレンズを通す高僧の眼の下町に紫煙がくゆる

たてごとの音

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短歌連作「西暦も終盤となり」 7首

短歌連作「西暦も終盤となり」 7首

入口と出口は自分で決めなけりゃ囚われていく騒がしい街

西暦も終盤となり世界地図を描く夢をみることは出来ない

説明をする気はないよ八百屋まで銀行強盗しに行く奴に

実によく似ている孤独と疲労とは 路上の灯のすべてが遠い

国王も夜が来たれば独房に戻る 囁く影と向き合う

俯瞰する眼などは持たぬ一角獣は突進のみを規範と信ず

東京駅の出口をさがすまだ聞いていない言葉がトビラをひらく

短歌連作「ミンナデキメタ」 9首

短歌連作「ミンナデキメタ」 9首

「読書です」そう答えたらつぎの句に東野圭吾が出てくる遠さ

言葉につまるのでなく貴方との世界の裂け目につまずいてます

「ふつう」との距離の分だけ翻訳が必要である日→日

教室という回転がはやくなる木曜はやくなるはやくなる

(賛成じゃなく)反対の人は手を挙げろとクラス委員は言った

パーティがマイノリティを射るための正義の呪文「ミンナデキメタ」

協調性なければ罪になるけれど独創性はなくても無罪

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短歌連作「ハサミの魔法」 7首

短歌連作「ハサミの魔法」 7首

駅前に床屋と美容院ならぶ選べるという不自由もある

まりにゃんと呼ばれるひとを呼びにくい文学部棟、浮かびかき消す

早口でいそがしそうだ受話口に吹き込んでくる戦場の風

前置きの「キレイなタオルですので」に光るやさしさちいさく拾う

清新なひかりが満ちる九つの椅子と鏡とハサミの魔法

隣席の女子高生は母親の更年期など笑ってはなす

少しだけ目を閉じますが目覚めたら輪郭を描くように感謝を

短歌連作「激しく死ぬけもの」 10首

詩ではない信号である繰り返すもう詩ではない心臓である

遠い夏 綾波レイにふれたいと駆け巡る夏 ほんとうはまだ

QUITの脱けたループの反復で倫理は音へ解体されて

もう彼が「拒絶の矢を」と歌っても聞き飽きていてよく聞こえない

飴色のフィルムに在らぬ畑には論理回路でCALLできない

ペンギンという語の像と目の前に直立しているペンギンの差異

本当に失格である人間は記述されないただただ闇の

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短歌連作「加速する都市」 10首

短歌連作「加速する都市」 10首

かんたんで期間限定すぐ勝ててみんなやってる本格ソシャゲ

ランドセルカバーにFORTNITE(フォトナ)をえらぶ子が普通に笑うような時代 でも

渋谷交差点の信号青に変わるたび靴音のなか埋もれてくもの

今日からは90キロで走ります無理はうそつきの言葉なんです

耳栓の108円のレジ 会員カードをなぜかつくってしまう

1%のポイント付与と引き換えに失ったもの背負いこんだもの

映画館のチケット売

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短歌×写真「太古の白を滲ます海月」 7首

短歌×写真「太古の白を滲ます海月」 7首

集めよう小さな幸せ不幸せサメをおどかす小魚の群

ハギの尾ひれがついた話を聞かされるエイのしっぽのような一日

進むため目は前にあるとの動議 元老院をマンボウは泳ぐ

水槽のきみのきもちはわからんけど竜宮城へつれていってよ

ペンギンの哲人たちが思索する天に揺らめくオーロラの示唆

無人深海探査艇の邂逅 古第三紀の赤蟹の甲

人は空ばかり見ている海溝に太古の白を滲ます海月

短歌連作『剥き出しの傷だけに咲く青い花』30首 ―2020年上半期の自選も兼ねて

歩を止めた走者の頬の一滴が為した川へと流す灯籠

剥き出しの傷だけに咲く青い花だけに安らぐ手負いの小鳥

サーモグラフィーが君の温度を35.9℃(ごどくぶ)と告げてはじまる僕たちの夏

一本の口紅くらいではじけ飛ぶ一貫校のきれいな廊下

おんな泣く「男子うたって」全員の前できっちり五滴をおとす

人の為と書いては偽とした部室 おもい描けばセピアの写真

放課後の上履きワルツは全滅しダイヤ厳守の軍靴

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短歌連作「映画館へ」 7首

短歌連作「映画館へ」 7首

サーモグラフィーが君の温度を35.9℃(ごどくぶ)と告げてはじまる僕たちの夏

自粛明けの観覧席はチェスボード我も座りてビショップとなる

閑散な大スクリーンに燃え滾る映画をわれら四、五人で浴ぶ

ながき夢から醒めてくように劇場を出る足どりは未だあの呼吸

ショッピングモールのまえの信号をまつ右肩に髪のさざなみ

「一度目の『AKIRA』を家で観たときは色々あってさ休学してた」

暮れなずむコメダ

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短歌連作「すべての音がほろびた電車」 15首

短歌連作「すべての音がほろびた電車」 15首

テレサの愛すらも単なる1と化し叫び木霊すきょうのリプ欄

放課後の上履きワルツは全滅しダイヤ厳守の軍靴を鳴らす

またひとつ目の輝きが消えていくすべての音がほろびた電車

アルバムの永遠の夏すら武器転用 仮面のパイプ椅子上の鯉

くずれてく暮らしにもぐるデジタルの海の流儀にまたくずれてく

ごく一部だけを救ってその他を「お前が悪い」と見做した制度

困窮の腕がお里を一周し結果としての暴かれた墓

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