短歌連作「すべての音がほろびた電車」　15首

テレサの愛すらも単なる１と化し叫び木霊すきょうのリプ欄

放課後の上履きワルツは全滅しダイヤ厳守の軍靴を鳴らす

またひとつ目の輝きが消えていくすべての音がほろびた電車

アルバムの永遠の夏すら武器転用　仮面のパイプ椅子上の鯉

くずれてく暮らしにもぐるデジタルの海の流儀にまたくずれてく

ごく一部だけを救ってその他を「お前が悪い」と見做した制度

困窮の腕がお里を一周し結果としての暴かれた墓

白昼の間隙をぬい空になる事務所にのぼるコーヒーのゆげ

人の為と書いては偽とした部室　おもい描けばセピアの写真

おんな泣く「男子うたって」全員の前できっちり五滴をおとす

ただ単に力を乗せたことば舞い刺しあうような薔薇のママ会

スマホへの銀行名乗るメッセージやたらハイフンあるリンク付き

無用なる力をかざす者どもの夜のまくらに立つ復讐

くるくるとバトンに興ず男女あり　この公園にいるのか我も

あなたとの接点のない平日に肩の曲線描いた虚空

頭蓋骨のなかの蔦（つた）這う尖塔のちいさなひめに水をあげたい

歴史から突如と消えた確かな灯　樹のごとねむる娘のなかに