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詩たち

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2024年8月の記事一覧

詩「グラントウエストハット号にのって」

詩「グラントウエストハット号にのって」

20240829

テンガロンハット くり抜いた穴
窓から見える星は幾千
宇宙船 コックピットの中
身体を捻って整える居心地

レーザーのピストル 転がる足元
こぼし過ぎてなくなったコーヒー
素晴らしい音楽 火をつけた葉巻
海賊なんかになったつもりの昼寝

テンガロンハット 鉄で出来た船
外には砕けた星の残骸
宇宙人 コックピットの中
宇宙に居れば誰だってそうなる事実

残り少ない燃料 はみ出した

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詩📓「ヘーキンチ」

詩📓「ヘーキンチ」

20240830

身長や体重など どれをとってもおそらく平均値だ それが前からちょっとだけ嫌な気もする 身長は高い方が良いと思うし 体重は少し痩せてるくらいが良い 平均値は何の面白みもない 俺の性格も割と平均値だ 良さも悪さも大したことがない 自分のことを悪いと感じても もっと悪い奴は居る 逆もそう 一層のこと頭がおかしくなれれば注目を集められるだろうが まぁそれはあまりよろしくないとも感じる 

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詩📓「オシツブサレソウナヨル」

詩📓「オシツブサレソウナヨル」

20240829

幸せになってはいけないとは思わないが 幸せの種類を選べないことは知っている 恋愛 結婚 友情 家族 そして仕事 そこには俺の幸せが転がっていない それが誰かから見れば憐れに見え 誰かから見れば羨ましく見えるだろう 自業自得の末路だ 羨ましいなんてことはないが 俺は良く「羨ましい」と言われる気がする おそらく怖いものが少ないからだろう 失うものが少ないからだろう そんな自分を お

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詩「十日」

詩「十日」

20240821

病院と間違えて美容院に行った
髪は整えるくらいでシャンプーはなかった

電車と間違えて戦車に乗った
特にすることもないので読んでない本をめくった

学校と間違えて雑踏に向かった
クラスメイトは見て見ぬ振りをして歩いた

飛行機と間違えて貴公子を奪った
あとは幸せなロマンスが出来上がるだけだった

鉄砲と間違えて説教を並べた
金は受け取れずに鉛の玉で支払われた

麻薬と間違えて座

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詩「少年とモデルガンと彼」

詩「少年とモデルガンと彼」

20240821

地下駐車場に暮らす彼のことを
住人たちは毛嫌いしている
少年は毎日のように彼に会いに行き
モデルガンを見せてもらう

本当に撃てたら アイツら懲らしめて
彼を嫌う全ても 撃ちまくれたのに
彼の話は何処を取っても面白い
少年は夢中で 体育座りをして聞いている

ある日 いつものようにスルメイカを持って
駐車場に向かうと 彼が倒れているのが見えた
少年は無事を確認するためにつついた

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詩「彼のとりとめもない作業」

詩「彼のとりとめもない作業」

20240817

他者との関係に過敏になり過ぎる夜
彼は雨音の一つ一つに耳を傾けてみる
鳴き声にも聞こえるそれらは
彼に追い打ちをかけたがっているようだ

さらに集中して降り注ぐ音と
地面や屋根に当たって跳ね返った後の
幾重にも重なった糸のような音と
風に吹かれて方向が変わる音に分ける

「ちゃんと前を向いているか?」「後ろも?」
「端から数えていくのか?」「いつも?」
「待っているのか?」「待

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詩「「」」

詩「「」」

20240816

「」 彼は何も言わなかった
合鍵を忘れて家に入れなくなった
どうしたものかと考えていると
隣に老婆が立っていた

「」 彼は頷いて着いて行った
家の近くにある中華料理店に行った
キクラゲばかりがテーブルに並んだ
コリコリと食べ終えて店を出た

「」 彼は駅前の喫煙所に向かった
煙草に火を付けて吸い込むと咳が出た
ケロンと一つのキクラゲが飛んだ
スーツの男の背中にくっ付いた

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詩「死に沈む」

詩「死に沈む」

20240815

何をしたって無駄だってことを
考え始めると損をするのは一部の人間だ
彼はそんな人間に餌を与えないために
何もしなかった 気怠い腕を垂らすだけ

固まった思考がさらに強度を増して
反発していた心がついに離れ離れになる頃
(やっぱり無駄だったんじゃないか)と
大切なもののリストにチェックを付けた

そんな彼が死んでから数ヶ月経った
アパートの一室で溶けていたんだとさ
それから毎晩の

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詩「無駄骨」

詩「無駄骨」

20240815

誰かを思って何かをしてみても
いつの間にやら一人相撲になる
そんなことばかり 何かをする気が
起きなくなってもおかしくない

疲れた身体を引きずりながら
地上絵を描くように部屋を徘徊し
半目を開いて家具を避ければ
上から見たら万華鏡の中身の死骸

心を殺すことに慣れたなら
奴らみたいにクールになれるだろうか
羨ましくて何もしたくない
何も思いたくない 何も感じたくない

抱いた

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詩「甲虫の粉」

詩「甲虫の粉」

20240815

突然変異で巨大化した甲虫の粉末で出来た
砂漠に打ち捨てられた男が居た
喉が渇いて仕方がないのは分かっていたが
咳き込みながら食べる粉末は悪くなかった

陽の光は黒い粉末を熱した
溶けてマグマのようにはならなかった
しかしその手前までは熱がどうにかした
ネバネバまとわりついてくるようになった

彼のスーツにはネバネバが纏わりついた
元から黒かったがもっと黒くなった
夜になると固ま

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詩「追憶埋葬」

詩「追憶埋葬」

20240814

ハナビシが炸裂させたユーモアが
西の空を彩る時 エシは死にたくなる
腐った両手で描いた人物画がテジナシで
消えたサギシを探している

紫炎 烽火連天 灰 廃墟 幽愁暗恨
油彩 画竜点睛 夜 炸裂 魑魅魍魎
花札 百花繚乱 指 奇術 傲岸不遜
盗品 泡沫夢幻 盗 下賤 因果応報

タカシくんはいいました
「AからDまであるくよ」
ヒロシくんはなきました
「AもDもわからないよ」

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詩「『スワイプ3』」

詩「『スワイプ3』」

20240814

クリンチしたままスリンキー状のペニスでのたうち回る
スワイプがとうとう此処まで辿り着いてしまった
「もう何も教えることはない そうだ 旅に出よ」
「師匠! 僕はまだ何も! ……いえ 何でもありません」

千人斬りという言葉があった気がするが
スワイプはもうそんなものじゃなかった
彼に抱かれた女たちがだらしなく横たわる道場を出て
希望に満ち溢れた目とペニスで 都会に向かった

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詩「『スワイプ2』」

詩「『スワイプ2』」

20240814

ねえ スワイプ ホントに あっ ホントに ああっ
もう 喋らせてよ ホントに 2ミリだったの?
スゴい 何これ 見たことない 人間なの?
あっ ダメ スワイプ! スワイプ! ああ!

「おい 聞いてるのか?」
「ん? ああ うん いや え?」
「ダメだこりゃ スワイプの夢遊病生活だ」
「何だよそれ なんか格好良いな」

ダメ! それ以上は無理! 壊れる!
2ミリだった頃のあなた

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詩「『スワイプ』」

詩「『スワイプ』」

20240814

ペニスが大きければどうにでもなるような気がした
深くにまで潜り込めるし大きくて損はないだろう
2ミリ程の後悔と反省とペニスをぶら下げた男は
今日もトイレ清掃のおばさんをチラチラ見ている

自己嫌悪の塊 負け犬どもの遠吠え スワイプすれば良い
スワイプする手が腱鞘炎になっても
吐き散らかした白い魂の存在証明が部屋を満たして
溺れるまで彼はスワイプをやめない

またスワイプしようと

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