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詩「甲虫の粉」

20240815

突然変異で巨大化した甲虫の粉末で出来た
砂漠に打ち捨てられた男が居た
喉が渇いて仕方がないのは分かっていたが
咳き込みながら食べる粉末は悪くなかった

陽の光は黒い粉末を熱した
溶けてマグマのようにはならなかった
しかしその手前までは熱がどうにかした
ネバネバまとわりついてくるようになった

彼のスーツにはネバネバが纏わりついた
元から黒かったがもっと黒くなった
夜になると固まってこびり付き
昼頃に溶けて纏わりつく その繰り返しだった

動く気力がなかった 固まっていた
どこに行っても甲虫の粉末だらけで
黒く染め上げられた大地のみ広がり
オアシスなどどこにもないようだった

ある日 彼は甲虫になった
背中が割れて翅が生えてきた
自由に空を飛べるようになったが
一度も使わずにそのまま過ごして死んだ

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