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詩「少年とモデルガンと彼」

20240821

地下駐車場に暮らす彼のことを
住人たちは毛嫌いしている
少年は毎日のように彼に会いに行き
モデルガンを見せてもらう

本当に撃てたら アイツら懲らしめて
彼を嫌う全ても 撃ちまくれたのに
彼の話は何処を取っても面白い
少年は夢中で 体育座りをして聞いている

ある日 いつものようにスルメイカを持って
駐車場に向かうと 彼が倒れているのが見えた
少年は無事を確認するためにつついたが
全く反応がないのでどうしようかと思った

(誰かに言おうかな?)多分その方が良い
(誰に言うべきかな?)誰だって良い
(誰か来ないかな?)もうそろそろ来るだろう
(誰にも気付かれないのかな?)それは寂しい

彼の懐にはモデルガンがあった
少年は動かない彼を確認しながら
そっと右手を伸ばしてそれを盗んだ
ずっしりと重くて格好良かった

それから鏡やぬいぐるみに構えてみたり
楽しく遊ぶことにした
近所迷惑になるほど喚き散らして
誰よりも強くなった気がしていた

そんなことをしていると夜になった
それでも叫びながら遊んでいると
帰って来た酒臭い母親にぶたれて
泣きながら自室に篭った

ふとモデルガンをこめかみに当てた
ひんやりとして気持ち良かった
引き金を初めて引いてみたくなった
激しい熱を感じてそのまま倒れた

彼は何事もなかったように目を覚ました
少年にいつも見せびらかすモデルガンが
奥に仕舞った箱の中で寝息を立てていた
同時に 懐の銃がなくなったことに気が付いた

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