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フィンランド高校生活記

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高3の7ヶ月間の記録
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フィンランドから早期帰国

何もかも異なる生活に音速で移動すると、身体が慣れるのに1週間はかかるもので、加えて自宅待機の疲れで文章を書く気にもならなかった。 10ヶ月の留学プログラムも、残り3ヶ月というところで、新型コロナウィルスの感染拡大に伴い、フィンランドから早期帰国した。自分の意志ではなく強制帰国というかんじだったが、さすがは交換留学のパイオニアAFS、良い判断だったと思う。 帰国便は、ただでさえ便数が少なくなっているのに、機内はガラガラだったので、窓側に移動して人生3回目の飛行機を満喫した。

留学中に読む『武士道』に感動

もうすぐ桜の季節がやってくる。フィンランドにも桜はあるのでこじんまりと花見でもしたい。というのも、新渡戸稲造の『武士道』を読んでどうにも日本の桜をもう一度見直したいという思いに駆られているのである。 最近、日本文化に異様に魅かれる。自分の精通した文化を客観的に見ることで、その魅力を再発見することは、祖国を長い間離れる経験をした人に共通してあるだろう。異文化理解の中でも最も難しいのが宗教だが、無宗教と言われる日本人の道徳観、人生観を「武士道」という我が国固有の価値観としてまと

スポーツの可能性

ラップランド旅行記を完結させるのをすっかり忘れていた。結局何が言いたかったというと、ラップランド旅行で得られたインターナショナルな体験がかなり印象的だったということだ。 国籍10以上、総勢100人以上で過ごした5泊6日は、ラップランドの自然や文化を体験するという期待を大きく超える刺激を与えた。一生ものの出会いもそこで生まれた。 ところで、4ヶ月ほど前から地元のサッカーチームに所属して、週2回のトレーニン に参加しているのだが、冬のトレーニング期間を終え、最近練習試合が増え

ABBA "Mamma Mia"

留学生は時間割を組むにあたって、学校のガイダンスカウンセラー(通称オポ)と相談しながら進める。オポが音楽の授業を勧めてきたので、フィンランド語の勉強にもなると思い、今学期は「歌」のコース、「フィンランドの多声部音楽」のコースの2つを取った。歌のコースには9人生徒がいて、発声技術を学んでとにかく沢山歌う。フィンランドの多声部音楽(polyphony)のコースには20人程いて、フィンランドの伝統音楽やサーミの音楽を聴いて演奏して話し合う。 どの教科に於いても言えることは、そこで

フィンランドの教育力

今年ももう2ヶ月が過ぎ、初心に帰って早寝早起きを心がけるこの頃は、寝る前はスマホから離れ源氏物語を読み、朝は30分かけてラジオを聴きながら学校まで森の中を歩く理想的な生活をしている。そのせいもあってか読書が捗りフィンランド語の勉強と並行して何冊か読んでいるのだが、今日の物理の授業があまりにつまらなくて買ってしまった本が今読み終わったのでフィードバックする。 この本は、フィンランド人教師のリッカ・パフカラへのインタビューを書籍化したものだ。馬のトレーナーになりたかったリッカだ

世界の果てで暮らすこと

ラップランド旅行初日は、アメジストの採掘をしてきた。国立公園なので管理は厳重にされており、観光客向け対応も整っている。鉱物と人間の信仰というのは非常に興味深いが、比較的安価で身近なアメジストは、お守りとして使われてきた歴史があるそうだ。ラップランドでもそこらじゅうから取れるので、そこに住む人々には文化的に重要な意味があるのだろう。 翌日はスノーシューハイキングとトナカイ。雪に沈まないようスノーシュー(かんじき)を履いて道なき森の中を歩いたのだが、軽い最新のプラスチックのスノ

世界の果てで縄文に出会う

ロシア人の歌うカチューシャに手拍子を合わせ、四拍ごとに熱々の石に水をかける。バケツの水がなくなれば、凍った湖の穴に飛び込みに行くやつもいれば、雪の中を泳ぐやつもいる。僕は外に置いておいたミカンを取りに。ちょうどいい感じに凍っているだろうと期待していたら、ミカンがない!雪の積もった、ミカンがちょうど乗る幅の手すりの上にミカンが乗っていたら確かに取りたくなるものか。サウナに戻って聞いてみた。Does anyone know where my orange is? 誰か持ってるだろ

いざラップランドへ

学期が変わるごとに新しい友達ができるものだったのだが、今学期の生物のコースでは友達ができなかった。初回の授業でたまたま遅れて最後列の席しか空いてなかったのだが、右隣は結局最後までひとりでスマホゲームをやり通した。全ての授業の全ての時間を費やすその情熱を邪魔する勇気はなかった。左隣はカップルだったのだが、割と早い段階で授業に来なくなったのでほぼ空席。前列は女子のグループで不要に話しかけようとも思わなかった。さらに、細胞生物学のコースはフィンランド語で全ての課題をこなすのは難しい

フィンランドで始まる2020年

明けましておめでとうございます。フィンランドでは正月は大した行事ではないのですが、やはり日本人にとってはひとつ区切りになるものです。僕の2020年は1人フィンランドの電車の中で始まりました。 フィンランドの年末年始フィンランド人にとって一年で1番大切な時期であるクリスマスは、衝撃の連続でした。1ヶ月以上前からクリスマスを待ち望む町の雰囲気や、伝統的なクリスマス料理まで、フィンランドのクリスマスを存分に味わったところで、地元の新聞社が、留学生がそれをどう感じたかインタビューし

火星へ行きたい

僕は友達の紹介をとても大切にする。友達の影響を自ら受ける。世界で100万部売れた本よりも、ビルゲイツが絶賛する本よりも、友達に勧められた1冊の本の方が僕にとって価値がある。 本に限ったことではない。昨日、留学生の友達で集まってヘルシンキを訪れたのだが、カフェでたむろして話しているとあるドイツ人の留学生が日記を見せてくれた。彼女はきっとかなりマメなのだろう、白紙のかっこいいノートにびっしりと文字が書かれていた。 「日記つけてるんだ〜。俺もつけよ〜。」のノリで、その後一緒に訪

フィンランド留学3.6ヶ月目

今日はかなり衝撃的な日だった。 今、サウナンヤルキネン(サウナ後の何もしたくない気持ちを表す形容詞)の状態で電車に乗っているので、このまま寝過ごさないように、今日あったことをここにメモしておく。 さあ今日の予定は2つ。ホストの親戚の赤ちゃんの洗礼に立ち会うために教会へ行くこと、そして友人の船のサウナへ行くこと。 まず、ホストファミリーと正装で教会を訪れた。キリスト教には詳しくないので表記が正しいのか確かではないが、ホストファミリーの親戚に最近赤ちゃんが生まれ、フィ

ヘルシンキの現代美術館がすごかった

フィンランドに来てずっと美術のコースをとっているのだが、音楽の授業を含め、フィンランドの芸術教育には本当に驚かされる。ホストスクールがとくにそういった専門系の教科に力を入れており、生徒のステージパフォーマンスの機会が多く、美術作品もみんなの目の届くところにある。 ここに掲示されている美術のコースだけで17あり、それぞれが1学期(2ヶ月弱)で完結する。僕はコース3でPhotoshopなどメディアアートを、コース4で人間の体の表現を学んだ。他にも、映画、写真、建築デザイン、古典

フィンランド人は保守的か

最近やっと、フィンランド人の距離感がわかってきた。彼らの価値観に強く根を張っている個人主義は日本人には理解するのが難しいものの、僕個人的には心地良い距離感を保つことができる。無理な人付き合いをせず、めんどくさいときはキッパリめんどくさいと言うことは普通であり、各自のやりたいことは尊重し合うことができる。 昨日、ポルヴォーというフィンランドで最も古い都市の一つを訪れ、教会でクリスマスソングを歌うイベントに家族で参加したのだが、その大合唱になんとも感動してしまったのだ。あのまと

留学3ヶ月目

最近ブログが滞っているのも、少し語学に腰を入れてみてるからだ。フィンランドに来てだいたい3ヶ月という数え方が正しいのかは分からないが、フィンランドへの渡航は間違いなく一つの大きな区切りであった。あと7ヶ月で帰国するということは決まっているがそこをまた区切りと見るのではなく、もう少し目の前のことに集中しようと思う。 フィンランド語というのはプログラミング言語のようにロジカルで美しい言語である。文法は頭に入っていても、瞬時に脳内で検索してルール通りの文をつくるのはいまだに容易で