世界の果てで暮らすこと
ラップランド旅行初日は、アメジストの採掘をしてきた。国立公園なので管理は厳重にされており、観光客向け対応も整っている。鉱物と人間の信仰というのは非常に興味深いが、比較的安価で身近なアメジストは、お守りとして使われてきた歴史があるそうだ。ラップランドでもそこらじゅうから取れるので、そこに住む人々には文化的に重要な意味があるのだろう。
翌日はスノーシューハイキングとトナカイ。雪に沈まないようスノーシュー(かんじき)を履いて道なき森の中を歩いたのだが、軽い最新のプラスチックのスノーシューを履いてでもこれだけ疲れるのかと思うと、この地に定住したフィン人やサーミの人々の暮らしはなおさら興味深くなる。
特別に作られた地図をもとに、森の中を駆け回ってチェックポイントを巡りながら可能な限り短時間でゴールする、オリエンテーリングというスポーツがある。高校の近くに競技会場があり、体育の授業で一度やったのを思い出した。(教育とヘルスケア)どうやら競技の趣旨を勘違いしていたようで、その時は歩いて友達と喋りながらゴールを目指していたが時間内に終わらなかった。話を戻すと、一緒にスノーシューで森を歩いたイタリア人の友達がそのオリエンテーリングで世界的に実績を残している選手で、森を走り回ることに関してはプロフェッショナルであり、いくらスノーシューハイキングだからといっても彼は速かった。これを競技ではなく生活の一部としていた人々は彼よりも速く走破するだろうかと考えながら雪に埋もれた友達を救出する。
また、オリエンテーリングでは決して平ではない森の地図を読めることが大事である。それに関しては地球科学を学んできた者の得意なところだ。ついでに世界で最も古い岩石の破片を回収してきた。
続いて午後はトナカイ。こっちは観光客向けのトナカイファーム。トナカイに餌をあげたりソリを引きずってもらったりできるのだが、トナカイの飼育員の話とそれに勢いよく質問責めをする留学生たちの方が面白かった。例えば、トナカイの角は毎年同じ形で生えてくるとか、ファームにいるトナカイたちに特に名前はついてないとか、具体的な話はそういうのしか覚えてないが、トナカイがサーミの伝統的な暮らしの中心にあることは伝わった。
小国フィンランドといえど地域によって暮らしは全く違う。南部の比較的人口の密集した地域に派遣された僕に取って、ラップランドを見ることは念願であった。フィンランドの新たな一面から見えてきたもの、それは初心に帰って縄文なのかもしれない。
続く
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