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留学3ヶ月目

最近ブログが滞っているのも、少し語学に腰を入れてみてるからだ。フィンランドに来てだいたい3ヶ月という数え方が正しいのかは分からないが、フィンランドへの渡航は間違いなく一つの大きな区切りであった。あと7ヶ月で帰国するということは決まっているがそこをまた区切りと見るのではなく、もう少し目の前のことに集中しようと思う。

フィンランド語というのはプログラミング言語のようにロジカルで美しい言語である。文法は頭に入っていても、瞬時に脳内で検索してルール通りの文をつくるのはいまだに容易ではない。さらには、書き言葉と話し言葉の乖離や方言までくると、もはや1年間英語だけで過ごしてしまう留学生が多いのも納得である。しかしどうもフィンランド人と英語で話すのは違和感があるのだ。

地域のサッカークラブに加入することになり、23歳以下のチームでプレーを始めたのだが、このクラブがまたとても面白いのだ。チームスポーツであるサッカーにおいても大切なのは個人であり、サッカーを通して見えてくるフィンランド人の価値観というのはまた別の記事にしっかり書きたいと思う。

ところでフィンランド人の悪いところは英語が得意すぎるところだ。地元のスーパーにサンタクロースの故郷ロヴァニエミから本物のサンタが来ていたのだが、握手をかわしフィンランド語で日本にも来るかと聞いたところ Of course と言われてしまった。

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しかしサッカーチームでは最初から英語は使わないように頑張ったら、見事英語を使わせないことに成功している。さすがにスポーツ中は英語で話す余裕がない。フィンランド語だとまだなかなか積極的なコミュニケーションはとれないが、日本のように新加入の選手がチームに溶け込む努力をする必要がないのがフィンランドである。練習開始の5分前になっても誰も会場に来ないわりに、練習終了後はみな靴だけ履き替えて服を着替えている僕を残してミーティングもアフターケアもなくさっさと帰ってしまう。チームは25人ほどだが全員の名前を覚えている人はおそらくいないだろう。

チームメイトのほとんどは大学生なのですでに兵役を終えていたり友達が軍にいるという人も多い。彼らの話をもう少し聞きたいのだが、どうも自分のフィンランド語だと満足にコミュニケーションが取れないので今はフィンランド人らしくサッカーをあくまで個人で楽しもう。

ところで上の写真は先日訪れた地元の美術館なのだが、エストニアの美術についての企画展であった。この美術館の良いところは小さい割りに企画展示しかなく比較的面白いテーマの展示をやってることと、小さいからこそ学芸員との距離が近くフレンドリーに話せることだ。ただもちろん学芸員も英語がうまいので気付いたら英語で喋っている。

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絵画が多かったがこういうよく分からない模様の容器や小物が気に入った。

先日ホストブラザーの”星の会”という未知のクラブについて行ったのだが、10数人で、市から借りている小さな小屋でコーヒー片手に天文の話を聞くというものだった。その雰囲気がなんといっても良かったのだ。宇宙関係の書籍からSF小説、ポスターや天体の模型に囲まれた部屋でスクリーンに写真を映しながら専門家が解説し、質問したり感想を言ったりして2時間程過ごすのだが、その聞いているだけで参加しなくてもいいしぽろっと隣の人と感想を言い合うのもいいし簡単に質問もできる「距離感」が最高に心地よかったのだ。ほとんどが天文好きなおじさんたちだったが、家族単位でお金を払うので少し子供もいた。その日は5歳の子がずっと質問していて終始暖かい空気であるとともに、子供の質問に真摯に回答する天文学者の穏やかな話し方が印象的だった。コーヒーを注いでいると、いかにも宇宙が好きそうなおじいさんが笑顔で彼の母親の戦争時の話を始めた。よく分からなかったので後からブラザーに通訳してもらったが、是非フィンランド語で理解したかったし、聞きたいこともたくさんあった。

フィンランド人は英語が得意とはいえど、やはり日本人のように”フィンランド語的発想”の英語という意味での訛りがあり、何より彼らの母国語での話を聞きたいものだ。これらの体験がここ最近の語学学習への高いモチベーションになっている。それと同時に、フィンランド語の先生が最初の3ヶ月は英語に頼るだろうと言っていた通り、最近フィンランド語で話してくれることがぐんと多くなったのはまた嬉しいことだ。

サッカーのフィンランド男子代表が欧州選手権という主要国際大会に初めて出場を決めたのは先週の金曜だったが、なんだか自国のように嬉しかったのが嬉しかった。嬉しいことが続いている留学3ヶ月目である。

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