ヘルシンキの現代美術館がすごかった
フィンランドに来てずっと美術のコースをとっているのだが、音楽の授業を含め、フィンランドの芸術教育には本当に驚かされる。ホストスクールがとくにそういった専門系の教科に力を入れており、生徒のステージパフォーマンスの機会が多く、美術作品もみんなの目の届くところにある。
ここに掲示されている美術のコースだけで17あり、それぞれが1学期(2ヶ月弱)で完結する。僕はコース3でPhotoshopなどメディアアートを、コース4で人間の体の表現を学んだ。他にも、映画、写真、建築デザイン、古典技法、デジタルアート、陶芸など、アートを総合的に学ぶことができる。
今日は数学の試験が20分で終わったので、そんな勤勉な美術教師のオススメ美術館を巡ってきた。
ヘルシンキにあるキアスマ現代美術館がなんとも変態で衝撃が強く、久しぶりに美術館で身震いするような体験をした。ほとんどの作品を順路通り思い出せるくらい全てが鮮明に記憶に刻まれているのはなぜだろうか。僕はそんなに現代美術館を観ることがなくむしろ古典を楽しむのだが、今回の衝撃は僕をモダンアートへと向けさせた。
作品を順路通り眺めていると、日本人らしき写真が4枚ほど並んでいた。どんな意味があるのか正直わからなかったが、最後に解説を読んでぞっとした。全てアンドロイドだったのだ。いや、4枚のうち1枚が本物であろうとも書いてあった。結局どれが人間かも作者は明かにしないそうだ。
調べてみれば、ロボット研究の第一人者大阪大学教授の石黒浩氏のロボットだそうで、彼自身も自分そっくりなアンドロイドを作ってしまう変態だった。星新一賞の最終選考委員にもってこいの人物だ。
もう一つ興味深かったのがこの動画だ。
じつはこの動画、学校の音楽の授業でサーミの音楽文化を学ぶ時に観て印象深かったのですぐに思い出した。サーミの父をもつ写真家のマルヤ・ヘランダーのこの作品は、スカンディナビアの北方先住民サーミの伝統的な自然と共存した暮らしと、現代社会との間の葛藤を描いている。
人の紹介で行く美術館がこんなにも面白かったのはきっと、アートを学校で学んだからこそであろう。岡本太郎は芸術は大衆のものでなければならないと言ったが、全くその通りである。アートを学びアートと共に生きることがどれだけ多くの人にとって幸せなことか。STEM教育が茎ならば、芸術教育は根っこだろうか、葉だろうか、花だろうか。茎(Stem)だけでは植物は成り立たないことは確かだ。
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