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世界の果てで縄文に出会う

ロシア人の歌うカチューシャに手拍子を合わせ、四拍ごとに熱々の石に水をかける。バケツの水がなくなれば、凍った湖の穴に飛び込みに行くやつもいれば、雪の中を泳ぐやつもいる。僕は外に置いておいたミカンを取りに。ちょうどいい感じに凍っているだろうと期待していたら、ミカンがない!雪の積もった、ミカンがちょうど乗る幅の手すりの上にミカンが乗っていたら確かに取りたくなるものか。サウナに戻って聞いてみた。Does anyone know where my orange is? 誰か持ってるだろうと思ってたので、まさかそんな顔されるとは思ってなかった。仕方なく外で外気浴していると、イタリア人の友達が寒中水泳か雪中水泳かから戻ってきたのでミカンを見たか聞いてみた。「あれお前のか〜埋めといたわ」「は!」場所は確かに変わっていなかったが、まさか上に雪を被せたくなるとは想像もつかなかった。その半分凍ったミカンを食べている写真。

凍った湖に穴を開けサウナで温まった体で水に入る、その世界の果てでやる寒中水泳をアヴァントという。雪の中を転がったり泳いだりするのはlumikylpy(雪風呂)というらしい。もちろん僕も両方やったが、やはりアヴァントが最高だ。あのロシア人が静かにアヴァントに入り、無言のまま出てきて何事もなかったかのようにサンダルを履いてサウナへ戻るのを見届け自分の番。桟橋から水の中へ続く階段は凍っているので思い切って入った方が良い。足はつかないので少しふわふわして、氷の手すりを使って水から上がる。サウナまでの50メートル程の道を、無限に続くラップランドの自然を全身で文字通り感じながら歩く。アヴァントは世界の果てまで行ってやる罰ゲームでも、悲鳴を上げながらサウナへ戻るものでもない。マインドフルネスの時なのだ。ここに満天の星空とオーロラがあれば完璧だったろう。

そうこのラップランドの大自然こそ、この旅行に1番期待していたことだ。オーロラはフィンランド語で「狐の炎」といい、狐の尻尾が雪原に擦れて飛んだ火花がオーロラになるという伝説があるそうだが、その炎で縄文を思い出した。雪と森に囲まれた6日間。なんだか土器が作れそうな気がした。

続く

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