ポール・ハーディング『ティンカーズ 』を読む。病膏肓の時計職人が死の8日前から思い出すのは、自分を捨てた癲癇もちの父、心を病んだ牧師の祖父。幻覚の中で三人それぞれの人生が交差する。古き良きニューイングランドが味わい深い。一人の人生に絞り、じっくり描いてあればもっと良かったのに。
白水社さんのシリーズ〈エクス・リブリス〉が7月のクラウス・メルツ=著/松下たえ子=訳『至福の烙印』刊行をもって創刊50タイトル達成か。このシリーズは良書の宝庫で純粋に面白い小説を読みたいという人におすすめ。2016年刊行書籍のお気に入りは甘耀明=著/白水紀子=訳『鬼殺し』かな。
白水社さんの近刊予定情報が熱すぎて目がまわる。エクス・リブリスの甘耀明/白水紀子=訳『鬼殺し』上下巻、ボラーニョ・コレクションのロベルト・ボラーニョ/松本健二=訳『ムッシュー・パン』、白水Uブックスのマヌエル・プイグ/安藤哲行=訳『天使の恥部』あたりは購入が運命付けられている。
台湾文学ではおなじく白水社刊『歩道橋の魔術師』の著者である呉明益氏の他作品、2007年刊『睡眠的航線』2011年刊『複眼人』2015年刊『單車失竊記』などの長編小説も読みたい。写真やイラストを手がけたエッセイとか写真評論とか活動の幅が広い人で、摩訶不思議な魅力を感じるのだよね。
白水社さんの近刊情報欄に『鬼殺し』を発見。甘耀明氏の作品は短編集『神秘列車』で感銘を受けたし、莫言氏が絶賛した長編小説として同書(原題『殺鬼』)をとりあげた白水紀子氏の解説を読んで好奇心が疼いていた。しかし台湾文学の巨篇と謳われるこの小説、約750頁もある大長編とは思わなかった。