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【短編小説】へんなともだち

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眠れない夜に想い出したい私が出会ったへんなともだちのへんな話。きっと、クスッと笑ってほっこりする。どこまでが実話なのかは、読んでくれているあなたの想像次第のショートショート。
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【短編小説】へんなともだち 〜キンモクセイとひなのちゃん〜

【短編小説】へんなともだち 〜キンモクセイとひなのちゃん〜

もうすぐ私は30歳になる。
というより、私の20代が終わる。

そんな風に最近、自分の20代を振り返ることがある。

29歳の私のSNSはずいぶんと変化したように思う。朝起きて開けば、毎日のように誰かが結婚し、毎日のように新しい命が誕生している。

その不思議な現象に最初の頃は右往左往して、一喜一憂していたけれど、もうそろそろ別に、うらやましいと妬む気持ちも、自分の状況と照らし合わせて焦る気持ちも

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【短編小説】へんなともだち ~ピンチのやまざき~

【短編小説】へんなともだち ~ピンチのやまざき~

「もしもし?」

「うわん、出てくれてよかった、、、。ごめん。めっちゃ急に連絡してしまって、、、。私さ、今、家の鍵なくしちゃった、、、。もうどうしたらいいかわからなくて。家に帰れないの。助けて。」

人生ではじめて、私は家の鍵をなくした。会社での華金の飲み会が終わり、時刻は午後23時。どうしようもなくて、涙目になりながら、無意識のうちに私は、やまざきに電話をしていた。

「あら、そうだったんだ。大

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【短編小説】へんなともだち ~鉄の女ふみえさん〜

【短編小説】へんなともだち ~鉄の女ふみえさん〜

「鉄の女」

そう言われて私の頭に思い浮かぶのは

かつてのイギリスの政治家「マーガレットサッチャー」
それを映画で演じた「メリルストリープ」

そして
私のともだち、「ふみえさん」である。

彼女に出会ってからというもの、私の鉄の女史は塗り替えられた。
彼女は鉄のようだった。
身も心も鋼のようなともだちだった。

*******

季節は師走の終わりに近づき、私とふみえさんが働いている会社は繁忙

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【短編小説】へんなともだち 〜みかちゃんと私の恋の行方〜

【短編小説】へんなともだち 〜みかちゃんと私の恋の行方〜

人は恋をする生き物だ。

「人はなぜ、恋をするのか?」
そんな問いについて考え、答えを出す暇もなく、人はせっせと目の前の恋に精を出す。
多くの人が毎日のように恋に落ち、人生の長い時間を恋に費やす。

そんな人々の恋の形は多種多様だ。

片思いの恋や両想いの恋
初恋や最後の恋
年下への恋や年上への恋
短い恋や長い恋

さまざまな恋の形があり、それぞれにその恋たちの行く末がある。

恋の行方

叶う恋

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【短編小説】へんなともだち 〜なみちゃんの選択〜

【短編小説】へんなともだち 〜なみちゃんの選択〜

私は今、猛烈に迷っている。

数年ぶりに会う友人と夜の食事を終えて、楽しさの余韻に浸りながら無意識に足を踏み入れてしまった帰り道のコンビニで

猛烈に迷っている。

アイスクリームコーナーの片隅で、ひときわ目立つ、シックで大人びた色気を醸し出しているハーゲンダッツを目の前にして

猛烈に迷っている。

先ほど食べた食事でお腹も心もばっちりと膨らんでいるので、締めにするならやはり、口になじみやすい王

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【短編小説】へんなともだち 〜単位がない亮さん〜

【短編小説】へんなともだち 〜単位がない亮さん〜

「今日1日ずっとバイト入っててさ、ごめん、会えないわ。」

梨花からそう返信がきた。

「明日レポート提出でさ、これ落としたらまじで単位やばいから、また今度連絡する。」

加奈からもそう返信がきた。

「そっか。急に連絡してごめんね。ありがとう。またね。」

そんなLINEの文面をコピペして貼り付けて返信する。あぁ、何人目だろう。みんな今日という今日に限って忙しい。新着通知をお知らせしてくれないL

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【短編小説】へんなともだち 〜社会に出たくなかった藤井さん〜

【短編小説】へんなともだち 〜社会に出たくなかった藤井さん〜

大学3年生の冬、私は例にも漏れず、周りのみんなと同じように就職活動をはじめた。

茶色だった髪の毛を真っ黒に染めて、真っ黒なリクルートスーツを着て、テンプレの同じような自己紹介を繰り返し、思ってもいないような嘘の志望動機をつらつらと並べる毎日。

すぐに嫌になった。逃げ出したくなった。社会に出たくなくなった。そして思い出した。

「まだ、僕社会に出たくないんだよね。だからできる限り遅らせてるの。2

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【短編小説】へんなともだち 〜チャラ男の渡辺くん〜

【短編小説】へんなともだち 〜チャラ男の渡辺くん〜

残業終わりの仕事の帰り道、今日はやけに明るい気がして空を見上げると、そこには煌々と暗闇を照らす満月が君臨していた。

満月をみて頭に浮かぶのは、お団子とススキと、それからマックの月見バーガーと、そして、チャラ男の渡辺くんだ。

渡辺くんは、新卒で入社した会社の同期で、私の斜め前の席に座っていた。
ある日彼は、煌々と蛍光灯が光るオフィスの中から窓の外に浮かんでいる満月を指さして私に言った。

「はる

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