マガジンのカバー画像

小説、エッセイなど

24
書いた小説、ちょっと長いエッセイをまとめています。感想いただけると飛び跳ねて喜びます。
運営しているクリエイター

#ポエム

麗しき楔

麗しき楔

この一世に、なるべく多くの重たい楔を打ち込みたいと願う。
できる限り深く。できる限り強く。

楔(くさび)とは、過去と今、そして未来の自分が同じ人間であることを克明にこの身体に教え込むための贈り物だ。

この地球という広い舞台にねじ込まれた楔に、前触れもなくもう一度出会う度、人はきっと何かの記憶を思い起こすはずだ。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

現世のあ

もっとみる
音にはしないけれど、届いて欲しいこと

音にはしないけれど、届いて欲しいこと

失うことを恐れながら、失いたくないと震えながら
何かを、誰かを所有しているよりも、
いっそ固執せずに、自分のもとから手放して、
カゴには、鍵をかけないで、
失った痛みとともに、過去を慈しんで、懐かしんで、
思い出を呼び戻して、思い出と歩いていきたいような夜。

独りの自分を抱きしめて
遠くのあなたを思い遣りながら生きることの方が、
もしかしたら、もしかしたら
ずっと、ずっと
愛なのかもしれないと思

もっとみる
Photograph in my life

Photograph in my life

写真を撮る。
写真を撮られる。
写真を撮ってもらう。
写真を撮ってあげる。
写真に映る。
照れるあなたの袖を引く。
写真に映す。
あなたとの時間を。
シャッターを切る音が鳴るたびに、
その瞬間は明瞭な過去になっていく。

ー---------ーーーーーーー-----

カメラを向けられたときに何を思うか。
早く撮ってくれと思うのか。
何でこのタイミングでと不平を言うか。
もしくは思考停止した頭で、

もっとみる
できないフリをするのが巧くなる大人たちへ

できないフリをするのが巧くなる大人たちへ

 こんにちは、おひさしぶりです。
ずいぶんと長いこと、noteを書くことから離れてしまったことに理由づけをするとしたら、あれこれといくつも浮かんできます。
課題は多すぎたし、アルバイトもあったし。それに、あれもあったし、これもあったし。大変でした、ほんとに。(冗談はこのくらいにします。)
 さて、そうやって、できない言い訳を重ねる「自分」が、いつから私の一部となってしまったのだろうか、今そんなこと

もっとみる

月見パイ

知らなかったわけじゃない。

駅を出て、階段を下る。

とにかく、あの階段を早く駆け下りるのが習慣だった。

急いでるときはもちろん、さして急いでないときも。

のんびりマイペースな私は、そんなところばかり生き急いでいた。

予備校までの道のりのなかに、そのチェーン店はあった。

店の前に掲げた大きなフライヤーは、その時期限定の商品を宣伝している。

「月見」

紺地に映える鮮やかな黄色を横目で盗

もっとみる
One scene of my youth 恋とか愛とかまだ分からないけど

One scene of my youth 恋とか愛とかまだ分からないけど

思えば、彼はよく気がつく人だった。

また、彼は大雑把に見えて、実は真に細やかな人でもあった。

そして、そばにいる人に安心感を与え、欲しいときに欲しい言葉をくれる人でもあった。

そのくせ、私のためにならない優しさは、決して与えなかった。

溶けるほどの愛情を注ぎながらも時には、苦しい表情で突き放す。

時折見せるそんな大人びた表情が嫌いで、そして何よりも尊く感じた。

馴れ合いに走らない彼の心

もっとみる