マガジンのカバー画像

播磨陰陽道

581
運営しているクリエイター

2021年11月の記事一覧

祈りのカタログ・第十七話「難しくはありませんよ」

祈りのカタログ・第十七話「難しくはありませんよ」

 最近は〈場〉のことをフィールドと呼ぶようです。〈場〉について辞書で引くと、

——ゲシュタルト心理学における基本的な概念のひとつ。各部分が相互につながりを持った全体構造として動物や人間に作用し、その知覚や行動の仕方・様式などを規定している力として考えられた状況。

 と書いてあります。
 ゲシュタルト心理学……うわぁっ聞いているだけで難しそうですねぇ。
 こちらの言葉をやはり辞書で引くと、

もっとみる
近世百物語・第九十夜「シガラミ」

近世百物語・第九十夜「シガラミ」

 人は、土地のシガラミに縛られて生きているような気がします。しかし、その土地の風習だとか風俗には無関係に、私には霊的なシガラミがついてまわります。
 私は人工的な土地へ行くのが好きです。それは開発された埋め立て地のような場所です。人工的な土地で安心するのは、霊的なシガラミそのものがないからかも知れません。
 大阪南港のコスモスクエア駅周辺に行った時、
——寺も墓場もなく、しかも、神社も祠さえない土

もっとみる
播磨陰陽師の独り言・第百十二話「気力が湧かない時もある」〈後編〉

播磨陰陽師の独り言・第百十二話「気力が湧かない時もある」〈後編〉

 気力がなくなって来る時に見る夢の世界は、これからお祭りがあるような準備の風景を眺めたり、何かのイベントに関する期待感を夢に見ます。そうやって何度かそんな類の夢を見ると、やがて、ワクワクするような現実の出来事に出くわします。もし、出くわさなかったとしても、こんな夢を見続けてゆくと、やがて気力も回復し、現実の世界が楽しくなってゆくのです。しかし、楽しいかどうかは感じる人の性格によるところが大きいです

もっとみる
近世百物語・第八十九夜「コックリさん」

近世百物語・第八十九夜「コックリさん」

 コックリさんは正式な霊術には含まれていません。正式な伝承も何もありません。ただ整理されていない、しかも、それほど古くないやり方が、子供たちの間で流行っていただけです。何の修行もしない子供にでも出来る程度の技法ですので、〈霊術〉と呼ぶより〈子供騙し〉と呼んだ方が正しいのかも知れません。
 私がまだ小学生の頃はコックリさんが大流行していました。当時はコミックの『恐怖新聞』や『うしろの百太郎』なんかが

もっとみる
播磨陰陽師の独り言・第百十一話「気力が湧かない時もある」〈前編〉

播磨陰陽師の独り言・第百十一話「気力が湧かない時もある」〈前編〉

 最近、寒いような寒くないような、妙な季節の変わり目に入りました。季節がハッキリしないためか、体調は良いにも関わらず、気力の方が今ひとつ湧きません。思うに、自然が欠乏しているためなのか、さもなくば、美味しいご飯にありつけない事情のためなのかも知れません。
 病院ばかりへ行っていると、その両方が欠乏します。昼ご飯は病院で出て、時々、決められた夕食も配達されます。栄養学的には十分なのですが、人の心は学

もっとみる
近世百物語・第八十八夜「祝詞」

近世百物語・第八十八夜「祝詞」

 子供の頃から〈祝詞〉をあげて育ちました。それは播磨陰陽道の伝承者として当然のことでした。だから、少しも不思議には思っていませんでした。と言うより、
——他の人も、みんな祝詞を知っているものだ。
 と、勝手に思い込んでいました。
 子供の頃の思い込みは誰にでもあります。それが奇妙であろうとなかろうと、自分の中ではごく自然なことでした。

 さて、時と場合によって、祝詞をあげると雨が降ることがありま

もっとみる
御伽怪談第二集・第九話「落ちた涙の先」

御伽怪談第二集・第九話「落ちた涙の先」

  一

 さぁ、いらはい、いらはい。皆さま方、可愛そうなのはこの子にござる。親の因果が子に報い、夜な夜な首がスルリと伸びて、行燈の油を舐めるでござるよ。さぁさぁ、ろくろ首の花子さんだよ。花ちゃんや。
「……はい」
 三味線を抱えた花子さんが、草津良いとこなどを爪弾きながら首を伸ばして……と、昭和の見せ物小屋は明らかに作り物だ。だが昔はこれで木戸銭を稼ぐことが出来た。今なら詐欺だとクレームを言われ

もっとみる
播磨陰陽師の独り言・第百十話「続・懐かしのBASIC言語」

播磨陰陽師の独り言・第百十話「続・懐かしのBASIC言語」

 ラズベリーパイ用のBASIC言語が発売されています。ラズベリーパイと言うのは、何と5000円のパソコンです。値段や大きさ割に、かなり性能が良く、世界中のパソコン好きな人達の間で流行っています。
 最近、にわかに注目されている人工知能の開発にも、このラズベリーパイが活躍しています。
 基本的にはLinuxと言うOSで動くパソコンですので、少し知識と慣れが必要です。しかし、慣れてしまえば快適に使えま

もっとみる
近世百物語・第八十七夜「霊道」

近世百物語・第八十七夜「霊道」

 死んだ人々の霊の通り道を〈霊道〉と呼びます。霊道が、人家のない森や山奥にあった頃は良かったですが、最近はそのような自然な地域が開発され、山奥ですら人家が出来つつあります。住めば、当然、家の中を霊道が通ることになります。
 マンションなどの賃貸に霊道がある場合は引っ越せば済みます。しかし、購入した時は難しくなります。住む人は一生懸命頑張ってお金を貯めて夢のマイホームに住むのです。しかし、霊道の通っ

もっとみる
播磨陰陽師の独り言・第百九話「アイスホッケーの靴」

播磨陰陽師の独り言・第百九話「アイスホッケーの靴」

 子供の頃はアイスホッケーをしていました。十勝平野に生まれた人なら誰でもアイスホッケーはしている筈です。と言うのは、中学校の体育の冬場の授業はアイスホッケーだったからです。
 小学生の頃はスピードスケートをさせられます。人によっては幼稚園からスケートをすることもあります。
 中学生になると、女子はフィギュアスケートを、男子はアイスホッケーのスケート靴を買わされて体育の授業に出るのです。もちろん、ヘ

もっとみる
近世百物語・第八十六夜「死語」

近世百物語・第八十六夜「死語」

 私は古語が好きです。かなりの量の古文を読んでいます。しかしそれは勉強したいからではありません。どちらかと言うと、必要にせまられて読むようになったのです。もちろん、子供の頃から、祖母は『古事記』や『日本書紀』を読んでくれていました。実際は読んだと言うより暗唱したと言う方が正しいかも知れません。祖母はそれらの古文のほとんどを丸暗記していました。
 近世百物語・第五夜に曽祖父が古語で話していたことを書

もっとみる
祈りのカタログ・第十六話「言葉穢れで祈ってもなぁ」

祈りのカタログ・第十六話「言葉穢れで祈ってもなぁ」

 神は非礼を受けません。言葉が穢れている人は、祈っても無駄になるだけです。〈言葉穢れ〉の人にはある種の傾向があります。あたかも自分が神にでもなったような気分で、他人にあれこれ暴言を吐くのです。しかも上から目線でです。神は暴言を吐きません。暴言自体が神から遠い言葉なのです。
 言葉穢れと言うのは、穢れた言葉を好むことです。これは非礼に属します。ですので、そのような言葉を使っていて、いくらお祈りしても

もっとみる
播磨陰陽師の独り言・第百八話「ゲーム業界の野球大会」

播磨陰陽師の独り言・第百八話「ゲーム業界の野球大会」

 ゲームの開発をしていた頃、大阪の服部緑地の野球場で、ゲーム業界の野球大会がありました。京都チームと大阪チームに別れて戦いました。
 よく京都チームの人たちに、
「イカリ、売れ過ぎて、疲れてるんと、ちゃうのん。せいぜい、おきばり」
 と野次られたものです。
 当時は、怒IKARIと言うゲームが絶好調で売れに売れていた時期でした。
——やっぱり京都の人はキツイなぁ。
 とか思いながら、空振りしては苦

もっとみる
近世百物語・第八十五夜「奇妙な音の正体は?」

近世百物語・第八十五夜「奇妙な音の正体は?」

 トントンと壁を叩く音が深夜の室内に響いたのは、墓場の近くに住んでいた頃のことです。お盆が近くなると、時々、壁を叩くような音が深夜に響くことがありました。壁に耳をつけて聞いてみると、壁を叩くと言うより引っかいているように聞こえました。そして、時々、引っかく音にまじって、押し殺したような啜り泣く声が、微かに聞こえていたのです。私の住んでいた部屋の隣はずっと空室になっていました。
 ある時、両親が田舎

もっとみる