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播磨陰陽師の独り言・第百十一話「気力が湧かない時もある」〈前編〉
最近、寒いような寒くないような、妙な季節の変わり目に入りました。季節がハッキリしないためか、体調は良いにも関わらず、気力の方が今ひとつ湧きません。思うに、自然が欠乏しているためなのか、さもなくば、美味しいご飯にありつけない事情のためなのかも知れません。
病院ばかりへ行っていると、その両方が欠乏します。昼ご飯は病院で出て、時々、決められた夕食も配達されます。栄養学的には十分なのですが、人の心は学問通りにはゆかないこともあります。
先日、リハビリの先生に会った時、
「最近、どうですか?」
と言うので、
「体調は良いですが、気力が湧いてきません」
と答えると、笑いながら、
「仕方がないですねぇ」
と言っていました。
また、
「病院で働いていて言うのも何ですが……」
と前置きをして、
「こんなに病人ばっかり見ていて、気力が湧く方が、どうかしていると思います」
と、小声で言ってくれました。
病院の人たちと話していると、患者さんの中には、早く治る人と、なかなか治らない人がいるそうです。
その違いは、
「生きる気力があるかどうかね」
と、看護師さんか言ってました。その通りだと思います。病院にばかりいると刺激と言うものがありません。
時々、かなり痛い、医学的な刺激はありますが、心を刺激するような感動はないのです。
気力が湧かなくなって来ると、にわかに妙な夢を見るようになります。ほとんどの人は夢のことについて覚えていませんが、どこか知らない街を歩き続ける夢です。この類の夢は記憶を整理する時に見る夢に似ています。しかし、そちらとの違いはイベントに出くわすことです。
たとえば、記憶の整理の夢は、ただ淡々と多くの景色や物体を見るだけです。しかし、気力がなくなって来る時に見る夢の世界には……このお話は後編に続く。
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