針間仙吉

★自己紹介 針間仙吉(はりませんきち)です。福祉の仕事に就いて30年になります。また、趣味として合気道・古武術・中国武術を稽古しています。名前はペンネームですが、祖父が私につけようとした3つの名前候補の一つが”仙吉”でした。私の中の別の私です。

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★自己紹介 針間仙吉(はりませんきち)です。福祉の仕事に就いて30年になります。また、趣味として合気道・古武術・中国武術を稽古しています。名前はペンネームですが、祖父が私につけようとした3つの名前候補の一つが”仙吉”でした。私の中の別の私です。

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【連載小説〜うお座がみた福祉】 第四話 節分(後編)

第四話 節分(後編)  1月24日採用面接の日、午後1時20分に久之助は特別養護老人ホーム光栄園に到着した。恐る恐る玄関に近づくと自動ドアが勢いよく開いた。事務所の小さな受付窓を通して女性と目が合った。事務職員だったその女性は笑顔で会釈した後、事務所奥の部屋にいた施設長を呼んだ。 「いらっしゃい。施設長の上角です。どうぞ。」ぬっと現れた身長180cm以上あると思われる男性が施設長の上角高行だった。久之助が勝手に想像していた老人ホーム施設長のイメージからは大分ズレていた。小柄

    • 【連載小説〜うお座がみた福祉】 第三話 節分(中編)

      第三話 節分(中編)  久之助が「ちょっと変わってる」と言われたのは、出勤時の服装だけが理由でなかった。  経済学科卒の久之助に何とか福祉業界のご縁ができたのには経緯がある。福祉の勉強を全くしていなかったため、気合だけで就職先を探そうとするのを見かねた同じ大学の先輩が保健室の教員を紹介してくれた。福祉関係の進路について相談に乗ってくれるだろうということだった。1991年4月に同級生は皆、名だたる企業に勤め始めたが、久之助はようやく就職に向けて福祉の勉強を始めたというのだか

      • 【連載小説〜うお座がみた福祉】 第二話 節分(前編)

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        • 【連載小説〜うお座がみた福祉】 第一話 初出勤

           どんな格好をして出勤したらいいのか、仕事が始まればどう動くのか、わからないまま久之助は初出勤の身支度をしていた。  白のTシャツの上に当たり障りのない白系のトレーナー、明るい青色のジャージという出立ち。青色が好きだった。  その年の2月1日は冷え込み、その格好ではさすがに寒く、高校卒業時に友達の真似をして買った古めかしいロングコートを羽織った。結果、前を開くと変質者のようでもあった。  「ま、いいか。」小声で呟くと、偶然自宅近くにあった初めての就職先の特別養護老人ホームに

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        • 播磨陰陽道
          581本
        • 刀のこと
          1本

        記事

          その身の美しさ

           娘は野村萬斎先生に狂言を習ったことがあった。  実際は決まった演目をお弟子さん方々に節目節目でご指導いただき、年に1回萬斎先生に見ていただく形ではあったが、とても貴重な機会だった。  小学生で一応狂言塾は卒業となるため、最後の一年は特に大切な時間だった。ありがたいことに娘は主要な役柄をいただき、熱心に稽古に励んでいた。そして、いざ萬斎先生に見ていただいた時のことであった。  娘が一人舞う場面で、一通り舞った後、先生が「ん?あなた武道か何かやってる?」と一言。「柔道?」

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          刀のこと・第一話

           今年6月から刀の勉強を始めた。とある刀剣会に入り、まずは初級講座で、いちから学んでいる。  物事は思い通りにいかないものだ。今年3月末で前職を退職し、4月は転職活動に苦心した後、何とか再就職できたものの、年収は半分になった。お金のある時は、時間と心に余裕がなく、時間と余裕ができれば今度はお金がない。当たり前なのかもしれないが、しみじみと身に染みる。そんな中、家計に無理のない範囲で学び始めたのだが、とても興味深い。  刀といえば、これまでも何度か展示されているものを見に行

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          我が家のお茶の作り方

          我が家では、先祖代々のお茶の作り方がある。 といっても、そう大したものでもないのだが、昔からこの季節には一年分のお茶を作り置きしないといけなかった。その時代のやり方を今も受け継いでいる。 ここ数日、不安定な気候で雨や風が強いが、今朝はなんとか日が射した。朝8時から実家の敷地に生えたお茶の新芽を摘んでいく。 若い頃は面倒臭かったが、歳をとったせいか、地道なこの作業も苦にならない。逆に、静かに集中できるこの時間がとても幸せだ。 しかし、鹿が里におりて来るようになった昨今、

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          はじめに~自己紹介

           はじめまして、針間仙吉(はりませんきち)といいます。  ペンネームですが、実は私が生まれた時に祖父が私につけようとした三つの名前候補の一つが”仙吉“でした。10数年前に親からその話を聞いて、この名前にならなくてよかったと苦笑していましたが、今回初めてnoteに記事を書いてみようと思った時に、少し愛嬌のあるこの名前を名乗ってみたいという気持ちになりました。  ということで、よろしくお願いいたします。  私は基本的に目に見えないものを信じています。とはいえ、記事はスピ系…

          はじめに~自己紹介