HAKKOU/リレーエッセイ

暮らしに関するエッセイを世代も住むところも異なる5人がリレー形式で1日おきに更新します。HAKKOU(はっこう)は発光・発酵・発行にかけたプロジェクト名。

HAKKOU/リレーエッセイ

暮らしに関するエッセイを世代も住むところも異なる5人がリレー形式で1日おきに更新します。HAKKOU(はっこう)は発光・発酵・発行にかけたプロジェクト名。

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HAKKOU 5人のプロフィール

noteに来てくださり、ありがとうございます。 HAKKOUは5人のメンバーが1日おきに更新する、 リレーエッセイです。 (各エッセイのタイトル末尾に著者名を入れています) メンバー5人のプロフィールは以下です。 ◾️Kii(きぃ) 大阪府在住。珈琲焙煎業と施設職員。山羊座。 雑木林と海を眺められる家に家族と暮らす。 親戚と食器は多いが、口数と運動量は少ない。 ◾️莉琴(りこと) 東京都在住。美食・美容が好きな牡牛座。 趣味は文章を書くこと、本を読むこと、 あまり歩か

    • 白えび煎餅大将の教え|茉記

      「明日仕事で金沢に行くんですけど、どこかおすすめありますか?」 先日お仕事でご一緒した方からたずねられ、何度か訪れたことがある金沢を振り返ってみた。美味しい鰤のお寿司が食べられるお店や、おでんのお出汁が抜群の居酒屋さん…思い出すのに名前がでてこない。中でもとびきり印象深いのに名前が出てこない店がある。 金沢の旬の美味しいお料理と美味しいお酒が楽しめるお店で、カウンター席、テーブル席、個室もある店内は、紅葉の時期もあってかあっという間に満席になった。次々に運ばれるお料理とお酒で

      • 掛けられた言葉、隠れていた意図 | Kii

        先週の週末もまた、私は催しの中にいた。このたびは暮らしている地域でのものだ。 新興住宅地にかつて2つあった幼稚園は、片方が廃園となり、今では住民が活用するセンターへと様変わりしている。 催しとはそこのおまつりのことで、夏と秋に盛大に行われる。「わがまちをふるさとに」の想いのもと、私の父母がそうであったように、若かりし頃に故郷を出てここへ家を持つと決め、今も暮らし続けている人たちの力が結集して実現している。 運営はリタイアされた方たちばかりの中、皆、驚くほどパワフルだ。組

        • 自分の人生を奏でる|saki

          人情溢れる愛着ある下町から新興住宅地に引っ越したことを境に私は思春期が重なったこともあり、"どんなに大切にしても、離れてしまう"と、家族をはじめあらゆる人やものごとに、自らかかわることを一切諦めたことがあった。 学生時代は勉学や部活など何かに打ち込むことや明け暮れることもなく、アイドルやロックバンドを追っかけしかけたこともあったが(こんなことをしても、何の意味もない。)と自ら火を消し、自分が何が好きで嫌いなのかもわからぬまま、趣味にハマることや没頭することさえ遮断した。 自

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        HAKKOU 5人のプロフィール

          引力の正体は楽しいということ|ひかり

          職場のグループLINEの中におられる男性のアイコンがずっと気になっていた。 あの小さな丸の中からも目を引く魅力が色濃く漂っていて、失礼しますという気持ちと共にアイコンをクリックしてみると、からだを寄せ合う馬が2頭描かれた、とても美しい絵だった。 アートを鑑賞することがとても好きで、家族の共通の趣味でもあり、観たい展覧会に合わせて旅行を組むことが多いなど、私たちの暮らしの中で大きな存在である。 だから、そのアイコンを見て気になっていながらも、LINEのアイコンをまじまじ見られ

          引力の正体は楽しいということ|ひかり

          将来、役に立たないから | 莉琴

          小学校へ入学すると同級生の女子の多くはピアノを習い始めた。 わたしも母から「ピアノ習う?」と尋ねられたが「将来、役に立たないからいい」と即答したそうだ。幼な子にしては現実主義すぎると語り草になり、母から度々聞いたからよく覚えている。 「将来、役に立たないから」 たしかに今のわたしが聞いてもぎょっとしてしまう。6歳の少女の目にはどんな未来の姿が映っていたのだろう。 恐らく「ピアニストにはならないから不要」という意味だろうが、役に立つか立たないか、そんなゼロヒャク思考ではなく、

          将来、役に立たないから | 莉琴

          響きをともに|茉記

          わたしが通うライアレッスンのクラスでは、年に一度、公開練習会が開かれる。今年の会場は、海が見えるとてもすてきな場所だった。 当日、リハーサルをしているととても繊細な音が空間に美しく響いて、緊張したわたしをすこしずつほぐしてくれた。そとではリスも鳴き始めて参加し、レッスン中、お庭に鳥や蝶が次々にやってくるあの感じを思い出させた。 公開練習会に参加するのは3回目。 これまでは、レッスンを受けている方々の家族や近しい友人が演奏を聴きにきてくださっていたけれど、今年からは一般の方々

          響きをともに|茉記

          満天の星空のように | Kii

          先週末のこと。勤めている施設で祭典があった。 1年を通じて活動している数々の団体が、日頃の成果を演技や展示などで披露し合う催しだ。地域交流も兼ねて関連団体による模擬店も行われるなど、大いに賑わう2日間になる。 各団体に所属しているのは小学生から80代まで。そのほとんどは60代以上の人たちで占める。 祭典の半年前から運営委員会が発足し、団体の連合会の役員の方々を中心に各団体からの委員さんも主体となって、話し合いごとに少しずつ整えられてきた。 迎えた本番。私は施設を運営し

          満天の星空のように | Kii

          今、自分に、全集中!|saki

          身につけるという言葉はファッションだけでなく知識、習慣、技術にも使われ、前者は外側や目に見えるもの、後者は精神的な目に見えないところを鍛錬、研磨する内面的なもの。 将棋の対局時間は棋戦によって異なるが一人の持ち時間4〜9時間。一日では終わらないため二日かけて一局を指し「ひとつのことを集中して考えられるようになった。」とプロ棋士にとったアンケート結果が出たそうだ。 生活サイクルを対局時間と当てると睡眠時間、エッセイの文章構成・作成・推敲の時間に匹敵する。とはいえ家事や仕事の

          今、自分に、全集中!|saki

          隠居せず、着るを楽しむ | 莉琴

          サザエさんの母、磯野フネさんは52歳だそうだ。 以前フネさんくらいの女性が、 「年を重ねると顔も体型もぼんやりしてくるから、まずTシャツが似合わなくなる。ぼんやりに合わせてふんわりした服を着て、ぼんやりを消すためにコミカルなメガネや大ぶりなアクセサリーを身につけるようになる」と仰っていた。 それが予言のようにも呪いのようにも残っていたけれど、よく考えてみたらその女性よりも年上のわたしの母は今でも自身に合う品のよいTシャツを着るし、ふんわりした服は一切着ない。 メガネもやわら

          隠居せず、着るを楽しむ | 莉琴

          馴染む |saki

          親の仕事の都合で転園・転校が多かった。引っ越しの度に机の引き出しやおもちゃ箱の中身を「この先も必要か、不要か。」と、子どもながら自分なりにつぶさに精査した。 小学校高学年頃越した学校はかつて籍を置いていた学校とは一転し、学習水準が高く習得スピードも速く、正直全くついていけなかった。 わからないところを両親に尋ねるにも、きょうだいのことで家の中がごった返して、わからないことを「わからない」と言う余白や合間が一ミリもなかった。人に頼るという概念がないまま大きくなり、当時は自分と

          つくるもの纏うもの|茉記

          背の順で並ぶと前から3番め以内に居続けたわたしのファッションは、トライアンドエラーの連続。 それはいまでも進行中だ。 幼い頃からほとんどのものが、9歳上の姉のお下がりだった。両親の好みのせいか、流行を感じさせないトラディショナルなものが多かったけれど、ひと昔前の雰囲気が漂うプリントやシルエットの服を着せられそうになると、いやだとごねた覚えがある。 小学生の頃、姉が読んでいたファッション誌のページをめくるたびに「どっちがいい?」と言った後、誌面に並ぶ好きなコーディネイトをふた

          つくるもの纏うもの|茉記

          旧知の友のように | Kii

          以前、長年変わらないインテリアの嗜好について書いたけれど、衣服の好みもほとんど変わりがない。 体つきの変化で選べる範囲は狭まりつつも、選びたい素材や色合いは同じままだ。ワードローブはリネン、コットン、ウールで占められている。 現役で着ている服は学生時代からのものもあって、おそらく一番の古株はZuccaのコットンニット。ごくシンプルながら、首の詰まり具合や袖口のリブの長さが絶妙で、これを上回るものに未だ出会えず、手入れをしながら大切に着続けている。 確か1万円くらいして、

          旧知の友のように | Kii

          吹く風に服が膨らむ心地よさ|ひかり

          両親が服好きで、実家の暮らしの中で着るものは、重要な立ち回りにあった。 両親と言っても、とくに父が無類の服好きで、ちょっと面倒なほどこだわり屋だ。 私たち姉弟が使っていた実家の子供部屋は、今では新しい洋服ダンスが置かれ、半分は両親の洋服部屋になった。 子供の頃などは、友達と遊ぶのに、サテン生地のパーティーみたいな服を着せられ、場と私の気持ちとのミスマッチ具合が恥ずかしくて、せっかくの一日が台無しになり、子供ながらに、ほどほどにしてくれと思ったことがある。 しかし、そんな中で

          吹く風に服が膨らむ心地よさ|ひかり

          長女の鎧、しっかり者 | 莉琴

          わたしには2歳年下の妹がいる。 似ていないところが多く、「しっかり者の姉」と「マイペースな妹」という周囲からの見られ方が幼稚園の頃には出来上がっていた。 最も古い記憶はわたしが5歳、妹が3歳だった夏の夜のことだ。 公園で盆踊り大会が開催されていて、両親は係の仕事で離れたところにいた。 すると突然、見知らぬ大人の男が妹を抱き抱えて連れ去ろうとした。何が起こったのかわからないまま抱えられ離れていく妹を見て、わたしは大声で泣き叫んだ。 只事ではない様子に周囲の大人たちが気付くと、

          長女の鎧、しっかり者 | 莉琴

          日々に育まれる | saki

          親の仕事の関係で引っ越しが多かったのもあり、家で動物を家族のように迎えるという経験はなかった。 近所に住む友人から「家の犬が赤ちゃんを産んだから見に来ない?」と動物に馴染みはそれほどないけれど、誘われるがまま行ってみることにした。 子犬は手のひらに乗るほど小さく母親から離れて寒いのか心細いのか、小刻みにプルプル震えている。一方でわたしの手は子犬の体温がつたって、あたたかい。 この地上に生まれたばかり。わたしの手がそばにあると目を瞑ったまま鼻をクンクンさせて指に辿り着き、おっ

          日々に育まれる | saki